神様のヒトミ

さとう

95・領主のお仕事①



 ミコトの了解が得られた事で、次の目的地は、【伊舎那天イシャーナ】の領土に決まった。
 話が終わるとミコトは秘密基地へ、アイトも領主執務室へ向かった。


 「おはようございまーす」
 「アイト様、おはようございます」
 「おはようございます、アイト様」


 出迎えたのはアイトの副官であるウルフィーナとギャング。
 2人はすでに仕事をしており、どう見ても忙しそうだ。


 「早速ですが、ご報告を」
 「はい、お願いします。っと、あの……俺も報告が」
 「は、何でしょうか?」


 アイトは、苦い物をかみ砕いたような表情になる。
 だが、報告しないわけにはいかない気がした。


 「じ、実は……その、【火天アグニ】のことなんだけど……」




 アイトは、ボルカニカでの出来事を全て話した。




 ***********




 ウルフィーナとギャングは、青ざめていた。


 「ま、まさか、【魔帝十二神将】を下し、あまつさえ脅すとは……」
 「し、信じられません。【火天アグニ】は12人の中でも生粋の武闘派、ラクシャーサ様ですら勝てるかわからないと言われた御方なのに……」
 「えっと、ラクシャーサさんには手を出さないはず。出したら殺すって脅してあるし……うん」


 ウルフィーナとギャングは青ざめたまま言う。


 「と、とにかく、ラクシャーサ様には報告いたします」
 「不敗の火天アグニを……さすがアイト殿」
 「あ、あはは。さ、さーて仕事だ仕事!! 報告ってなんですか?」


 アイトは無理やり話題を変えた。
 ウルフィーナは報告書を書き始めたので、ギャングがアイトの執務机の前に立ち、羊皮紙を捲りながら言う。


 「コホン。報告ですが、まずは建設中だった教会と診療所が完成。教会は開放し週一でお祈りを始め、診療所はエル殿が魔術医として勤務することになりました」
 「そっか。でもエル1人か……」
 「はい。ですが命に関わるケガや病気でもない限りは、クナイ殿の薬の方が格安ですので、それほど問題ではないかと。一度エル殿の医療魔術を見ましたが……、あれは恐ろしく高度な魔術、いやアビリティですね。はっきり言って彼女に治せない病気はありません」
 「そ、そこまでなの?」
 「はい。あのアビリティは神の領域です。あんな楽しそうに世間話をしながら、片手間で使うモノじゃありません」


 アイトにはその光景が目に浮かんだ。
 住人のおばちゃんと世間話でもしながら、本当に片手間で病気を治したのだろう。


 「建築住宅ですが700を越えました。入居希望も落ち着き始めたので、問題はありません」
 「う~ん。もう村って規模じゃないな」
 「はい。ですので、近日中にラクシャーサ様がお越しになられ、そのまま町として認可してよいか視察を行います。まぁほぼ決定事項ですので、儀礼的なモノでしょう」
 「おお、じゃあここは〔リアンの町〕になるのか」
 「はい。アイト様」


 その後もいくつか報告を受け、いくつかの提案があった。


 「実は、認可して頂きたい店がいくつかあります」
 「はぁ、なんでしょう?」
 「娼館です」
 「………」


 アイトの顔が赤くなった。


 「しょ、娼館って……」
 「はい。実は建築作業員からの要望で、ストレス発散のための娯楽が欲しいと。酒場や飲食店は増えつつあるのですが、娼館は領主の許可がないと営業出来ないのです。違法営業は傭兵団が見逃しませんし」
 「あ、いや……」
 「現在、許可申請は4軒です。人間向け娼館が2軒、魔帝族向け娼館が2軒です。いかがなさいますか?」


 ギャングは、あくまで仕事として聞いている。
 アイトは性経験があるとはいえ、この手の話題は恥ずかしかった。


 「あーその、どうぞ、営業許可します。はい次」
 「わかりました。許可が出ましたので営業をさせます。では」


 ギャングはそのまま出て行った。
 するとウルフィーナが立ち上がり、アイトの前に。


 「申し訳ありません、全くギャングったら……」
 「い、いえ。あ、そうだ!! 資金の余裕はまだありますか?」
 「はい。金庫には20億コインほどありますが、何か?」
 「えっと、住人も増えてきたし、学校を作りませんか? 文字や計算とか出来れば便利だし、将来の役に立つかも」
 「………アイト様は本当に素晴らしいですね。このウルフィーナ、感服しました」


 ウルフィーナは一礼する。


 「では、さっそく手配を致しましょう。建築に合わせて住人に入校希望を出します」
 「その辺は任せます。あとは……錬金ギルドか」
 「それでしたら、心当たりが」
 「え、マジで」
 「はい。お聞きされてると思いますが、錬金術師は【伊舎那天イシャーナ】の領土に腕利きがおります。中でも〔大蛇都市ヘッジヴァイパ〕なら、クロウリー様とラピス様の共通のお知り合いがいるはずです」
 「冒険者ギルド長と、ラピスさんの?」
 「はい。あそこは【獣王種族】である青蛇人あおへびじんが住む国で、ラピス様の故郷であり、クロウリー様のかつてのお仲間が住んでいる国でもあります」
 「なるほど。じゃあ2人に話を聞いてみよっか」
 「はい。では後はお任せを」




 アイトは立ち上がり、領主執務室を後にした。



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