神様のヒトミ

さとう

94・錬金術師



 アイヒたちが買い物に行くのを見送り、アイトはミレイと話しをして過ごしていた。


 「アイヒ、元気になった」
 「分かるのか?」
 「うん。アイトが愛してくれたからだよね?」
 「まぁ、うん」


 恥ずかしかったが、アイトは誤魔化さなかった。
 しかし、話題を変えることはした。


 「あ、その、今日は休みなのか?」
 「うん、お店は営業してるけどね。それに従業員も増えたし、ルエラのお手伝いの料理人も増えた。さらに村に酒場や飲食店も増えたし、余裕も出来た」
 「そりゃよかったな。何か変わったことは?」
 「変わったこと·········。あ、エルの教会と診療所が完成したよ」
 「······いや、早すぎ。······もういいや」
 「それで、教会は週一でお祈りをするみたい。診療所は毎日やってるけどね」
 「お祈りって、まぁ『慈愛ミストラル』だろうな」


 村の出来事や変わったことを話してると、アイトはようやく理解する。


 「······帰って来たんだなぁ」
 「うん。おかえりなさい」




 ミレイは優しく微笑んだ。




 **********




 「ふふん、どうアイト? 似合う?」
 「あぅ?」


 買い物に出かけて3時間。時刻は夕方。
 疲れ果てたミコトたちと、何故か上機嫌のアイヒ。
 そして、新しい服を着たルカがいた。


 「にゃうぅ、疲れた〜」
 「くぅん、オナカ減ったよぉ」
 「がぅぅ、もう着替えたくない〜」
 「お、おい?」


 ぐったりしてるミコトが、恨めしそうにアイヒを見た。


 「い、いや。実は服屋の前でルシェラさんと会って、それでミコちゃんたちを着せ替えて遊んでたのよ。途中でメリノさんも加わって、気付いたらこんな時間に······。ゴメンナサイ」


 反省するアイヒ。
 ミレイとアイトがジト目で見ていると、アイトの足にルカがくっついた。


 「おっと、どうした?」
 「あぅ、あぅあ」


 ルカはその場でクルクル回り、嬉しそうに微笑む。
 どうやら新しい服が嬉しいらしい。


 「おぉ、可愛いぞ」
 「うん。似合ってる」
 「うぁ〜♪」


 言葉は通じないが、笑顔は通じる。
 以外なことに、スカートやワンピースではなく、オーバーオールを着ている。
 赤いシマシマのシャツに、藍色のオーバーオール。ミコトたちとは雰囲気が違うが、よく似合っていた。


 「さーて、クナイやエルも帰って来るだろうし、メシの支度でもするか」
 「うん。今日はルカのお祝いだね」
 「いいわね、豪勢に行きましょ‼」




 この日の食卓は、かつてないほど豪華だった。




 **********




 食後、アイトとクナイは食器の片づけ、それ以外は全員でお風呂へ。
 はしゃぐ幼女たちを抑えるのには1人では足りない。クナイのみアイトと入るので、それ以外は子守を兼ねて風呂へ入る。


 「ふぅ……」
 「疲れてんのか?」
 「あ、申し訳ありません」


 クナイは、見るからに疲れていた。


 「仕事、忙しいのか?」
 「……はい。実は、ポーションの数が足りず、私1人では……」


 クナイは、自身の力不足を嘆いているようだった。
 もちろんそれはクナイのせいではないと、アイトはわかってる。


 「やっぱ錬金術師がいないと大変だよな。本来ならポーション類はギルドで買えるのに、錬金ギルドが稼働してない今は、全部クナイの店に行くからな」
 「……力及ばず、申し訳ありません」
 「そりゃ違う。悪いのは俺だ」


 この時点で、アイトは決めていた。




 「次の目的は、錬金術師を探すことだな」




 **********




 アイトの目的は、複数ある。


 1・モーラにガロンの遺言を告げる。 クリア
 2・ミコトの母親である【水天ヴァルナ】の元へ向かう。
 3・ライラの故郷である【風天ヴァーユ】の領土へ向かう。
 4・錬金術師を探すため、【伊舎那天いざなてんイシャーナ】の領土でスカウトをする。


 これからも増えていくだろうが、優先すべきことはやはりミコトだろう。
 しかしアイトは、錬金術師を優先することにした。


 翌朝。朝食が終わり、ミコト達は遊びに出かけようとする。
 その前にアイトがミコトを呼び止めた。


 「ミコト、ちょっといいか?」
 「にゃ? どーしたの?」
 「ちょっと大事な話だ。時間をもらえるか?」
 「わかった。ちょっと待って」


 ミコトは家の入口で待つ3人の元へ向かい、すぐにアイトの所へ戻ってきた。


 「みんな先に「ひみつきち」で待ってるって」
 「悪い、すぐに終わる」


 全員が仕事に出かけたので、居間にはアイトとミコトのみ。
 暖炉の前に座ると、ミコトがじゃれついてきた。


 「にゃあう。なんか久し振りだね」
 「そーだな。そんなに時間が経ってないのに、ずいぶん昔に感じるよ」
 「うん……」


 アイトはミコトの頭をなでながら、ネコ耳を揉む。


 「にゃふぅ……きもちいい」
 「ははは、ミコトは耳を揉まれるのが好きだもんな」
 「ふにゃあ……」


 しばらく耳を弄ったところで、アイトは切り出した。


 「ミコト、お前の母親のことだけど……」
 「ははおや……」
 「ああ、可能性があるのが【水天ヴァルナ】っていう銀猫人の人らしい。それで、そこの国に行くとき、お前を連れて行こうと思うんだけど……平気か?」
 「………うん、おかーさんに会うんだよね」


 ミコトはアイトに向き合い、しっぽをアイトの腕に絡める。


 「まだ決まったワケじゃないけど、銀猫人の最後の出産記録が7年前、そしてその人物が【水天ヴァルナ】らしい。可能性としては間違いない」
 「にゃう……」
 「それで、頼みがある」
 「ふにゃ?」


 アイトは正面からミコトを見る。
 そして、錬金術師の必要性を話す。クナイが1人でポーション類を作っていること、毎日遅くまでポーション類の精製をして疲れてること、だから早く錬金術師をスカウトし、クナイに楽をさせてあげたいこと。


 「頼む。このままだとクナイが」
 「いいよ」


 ミコトは、実にあっさりと答えた。


 「え、その、いいのか?」
 「にゃう。あたしは会ったことのないおかーさんより、クナイが大事!!」


 ミコトはにっこり笑う。
 アイトはたまらずにミコトを抱きしめた。


 「ありがとな、ミコト」
 「にゃふぅぅ……アイト、あったかい」




 ミコトは、日なたぼっこしたネコみたいな匂いがした。
 

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