神様のヒトミ

さとう

閑話・基礎と知恵、そして王国



 「がぁぁ~……。ぐがぁぁぁ~………」


 デューク王国地下独房。
 正確にはデューク王城裁判所地下独房。
 そこの一室に、1人の男がイビキを掻いて眠っていた。


 独房は6畳ほどの石造りで窓はない。
 頑丈な鉄格子に、古びた横長のイスだけがある簡素な部屋。
 そのイスの上にはボロ布が敷かれ、成人男性1人が寝るには狭すぎる長さだ。現に眠る男の腰から下はイスに支えられず、そのまま地面に向かって垂れていた。


 「あ、あの~、……シャダイさん?」
 「ぐがぁぁぁ~………、ぐぉぉぉ~………」
 「あの、シャダイさ~ん。起きてくださ~い」


 鉄格子の向こう側から、1人の中年男性が声を掛ける。


 「………ふが、あぁぁぁ……ンン? な~んだよ、人がキモチ良く寝てんのに?」
 「も、申し訳ありません……。その、お仕事です。はい」


 中年男性は、どこにでもいそうな男だった。
 年齢は30代後半ほど、メタボリックな体型に後退した頭部、ベッコウぶちメガネを掛けた、冴えないおじさんだ。
 地下独房は石造りで涼しいのに、男性は頭皮にジワリと汗を掻いていた。


 「ふ、んんん……。あふ、んで? な~んかよう?」
 「いえその、お仕事で……、【火天領域】の、〔灼熱王国ボルカニカ〕へ向かって頂きたいのです。はい」
 「ふぅ~ん? なんで?」
 「じじ、実は……、その」
 「ああ、ダレかを始末すんのね? ターゲットは?」
 「ははは、はい。かか、【火天アグニ】です。はい」
 「おっほほ!! 【魔帝十二神将】かよ!?」
 「ええその、なにやら不穏な動きがあると、アドナイ裁判長が《予言》したそうで。それで先手を打ち、暗殺をと。はい」
 「ふぅ~ん? エヘイエちゃんは?」
 「エヘイエ騎士統括団長殿は、失踪したエル殿の捜索指揮を執ってます。ですが既にデューク王国には居ないようで、『慈愛』の席からエル殿を抹消すると仰ってました」
 「あっちゃ~……。やっぱ逃げちゃったかぁ。ざ~んねん」


 シャダイは舌を出し左右に振る。
 その顔は愉悦に染まり、見る者を不快にさせる。


 「そ、それで。シャダイ殿、【火天領域】の近くまでシェキナ転移術士が送ります。し、支度を終え、出発は明日になりますのでご準備を」
 「はいは~い。じゃ、お仕事ガンバリますかね~♪」


 男は震える手で鉄格子のカギを開け、シャダイを解放する。
 するとシャダイは立ち上がり、フラフラと去って行った。


 「はぁぁ~……。みんな忙しいのは分かるけど、私にこんな役目を押しつけないでほしいよ……」




 【無限光の11人アインソフオウル・イレブン知恵コクマー】のヨッドは、肩をガックリ落とした。




 ***********




 「ほらシャダイ、準備はいいのかい?」
 「ああ、チャッチャと送ってくれや、おかーさんよぉ」


 翌日。シャダイは城の地下にいた。
 地下は独房とは打って変わり、ランプがいくつも灯り明るく、部屋も石造りではなく木造の部屋だった。
 部屋にいるのは、50代ほどの女性だ。


 「アンタを【火天領域】に送るけど、正確な位置には送れない。悪いけどあとは自分でなんとかしな」
 「はいはい、おおざっぱなオカーサンだねぇ」
 「ゴチャゴチャ言わない!! ホラ行くよ!!」


 顔にはシワが刻まれているが、見た目に反して女性の声は若々しい。
 彼女のアビリティの1つである《転移》で、シャダイを【火天領域】まで送るのだ。


 「終わったらアタシを呼びな、今度はこっちに送ってやるから」
 「はぁ~い。まぁいつも通りってことね」




 【無限光の11人アインソフオウル・イレブン王国マルクト】のシェキナは、シャダイを転移させた。




 ***********




 シャダイが転移した先は、ボルカニカからかなり離れた森。
 しかしシャダイは、ボルカニカの正確な位置をキャッチ。ニヤリと笑い歩き出した。


 「くひひ、歩いて2日ってトコかね。の~んびり行きますか」


 シャダイは急がず進む。
 シャダイにとって暗殺は、ターゲットが決まった時点ですでに死んだ者と同じ。
 決定した死であるからこそ、急がない。


 シャダイのアビリティの1つ、《痺れて麻痺せよパラライズビー
 能力は単純明快、触れたモノの動きを止めマヒさせる。
 生物なら、このアビリティに抗えるモノは存在しないとシャダイは自負してる。


 動きさえ止めれば、あとは楽しむだけ。
 男でも女でも犯し、いたぶる。
 エヘイエに捕らわれるまで、シャダイは負けたことがない。


 「お仕事が終わったら~……、傷心中のハニエルちゃんでも慰めてあげようかねぇ」


 すでに次の予定を立て、シャダイは進む。


 そして、それ・・は唐突に来た。






 「……………は?」






 シャダイが見たモノは………



「神様のヒトミ」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く