神様のヒトミ

さとう

89・灼熱王国ボルカニカ②



 ボルカニカの入国審査時にて。


 「………人間か」
 「そうだけど、問題ある?」
 「………」


 魔導車の窓から顔を出し、ラクシャーサの紹介状を見せる。
 入国寸前に気が付いたが、周囲で順番待ちをするのは全員が魔帝族だった。


 「ふん、通れ」
 「どうも」


 ラクシャーサの紹介状だというのに、通るだけ。
 アイトは案内でもされるのかと思ったが、特になかった。


 「取りあえず、宿を探しましょ」
 「ああ、こんだけ大きいと、けっこうありそうだ」


 アイトは目を使い、タウンステータスを確認する。




 **********


 【灼熱王国ボルカニカ】 LEVEL99


 ○〔住人〕 58048人
 ○〔家屋〕 8012軒
 ○〔商店〕 道具屋43
       八百屋18
       パン屋20
       肉屋32
       金物屋120
       宿屋40
       酒場85
       武器屋135
       防具屋129
       装飾品屋58
       鍛冶屋210
       薬屋25


          etc 以下省略・項目閲覧


 ○〔ギルド〕冒険者ギルド
       傭兵ギルド
       諜報ギルド
       魔術ギルド
       錬金ギルド   
       商人ギルド


 ●移住希望 反応あり


 以下項目・未開放 


 **********




 「うーん、ハンパないな、ヒノの町の5倍の住人だ」
 「やっぱ王国は違うわね。ほら……」


 アイヒが指さしたのは、城下町の先にある城。
 煉瓦を積み重ねた要塞のような、大きな城が見えた。


 「城のイメージと違うな。あれじゃ要塞だぜ」
 「ま、いいんじゃない? どうでも」
 「だな。取りあえず宿を押さえて買い物しようぜ」


 魔導車を走らせながら城下町を眺めるアイト。
 シェスタ王国と同じ。住人は全員が魔帝族で、人間はいない。
 人間の奴隷は工場や商店や飲食店で働いているのだろう。アイトは安心しつつ宿を探す。
 もし、魔帝族が人間の子供を引きずっていたら……、アイトは、ライラと子供を重ねてしまうかも知れない。


 「アイト、何を考えてる?」
 「………いや」
 「お願い、宿を探すの手伝って」
 「………ああ、悪い」




 アイトは首を振り、町の中央へ向かって車を進めた。




 ***********




 町の中央で、やや大きな宿へ入る。
 すると、ロビーを掃除してる人間にアイトたちは出会った。


 「………」
 「アイト、受付しよ」
 「ああ、悪い」


 人間は男性で、年は30前後。無表情でモップ掛けをして、何を考えてるのかは分からない。
 着ている服も通常のつなぎで、特に辛そうには見えなかった。


 アイトは受付に向かう。
 受付は、人の良さそうな熊人の女性だった。


 「あの、宿泊2名で」
 「はいよ、人間のお客は久し振りだね。冒険者かい?」
 「はい」
 「やれやれ、この国を知らないようだけど気をつけな。ここにいる人間はみんな犯罪者くずれで奴隷になったヤツらばかりだからね」
 「……犯罪者?」
 「そうさ、別の地方で犯罪を侵して捕まったり、盗賊団の更生の一環で奉仕活動をしたり、そんな連中が【服従の首輪】をはめられて奴隷として送られてくるのさ」


 アイトの視線は掃除中の男性に向く。
 熊人の女性の言う通りなら、男性は犯罪者ということになる。


 「ま、悪さなんかすりゃ一発であの世行きだからね。イヤでも働くしかないのさ。こっちとしては無給で使えるから助かるけどね」
 「なるほど……」


 受付を済ませて3階の部屋へ行く。
 中は12畳ほどで、大きなダブルベットにシャワールーム付きの部屋だった。
 アイヒは備え付けのカップにお茶を煎れる


 「話を聞く限りはフツーだな。むしろ自業自得じゃね?」
 「まぁ確かにね。旅のアタシたちにウソを付く理由なんてないし、信じていいんじゃない?」
 「だな」


 アイトは立ち上がり窓を開け、要塞のような城を見る。
 胸のポケットから、1枚のガラス板を取り出し眺める。
 それはガロンから託された、かつての家族写真だった。


 「ガロンさん……、約束の1つめ、果たすから」


 小さな子供を抱くガロンと、そこに寄り添う熊人の女性。
 アイトのもう1人の父親である、ガロンのかつての家族。


 「……今日は早く寝ましょう、ね」
 「ああ」


 その後。部屋に夕食が運ばれ食事を済ませる。
 食後は2人でシャワーを浴び、そのままベッドで1つになる。




 2人は求め合い、深夜まで交わっていた。
 

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