神様のヒトミ

さとう

86・村でのんびり⑤



 「·········やっちまった」


 アイトは、隣で眠るエルを見て呟いた。
 昨夜はどうかしていたと、自分を責めていた。
 そして、何故かミレイは居なかった。


 アイトは、抗えなかった。
 ミレイやクナイとは違う、豊満な肉体に。
 何故かほぼ無抵抗のエルを、アイトは本能と欲望のままに貪った。


 エルの話では、デューク王国で襲われ掛けたとアイトは聞いていた。
 シャダイと今のアイトは、何が違うのか。


 「······俺は」


 アイトは気付いていた。
 言葉にすることを、恐れていた。
 ミレイやクナイを抱いた時とは違う感触に、激しく高揚した。
 アイトは女の味を知り、更に先まで進んで見たくなったのだ。


 ここは異世界。法律はないようなもの。
 もしかしたら、という思いがアイトの中にあった。


 ミレイはアイトを純愛タイプと言ったが、アイトは違うと叫びたかった。
 ミレイがみんなで幸せに、と言った時、アイトは高揚していたのだから。


 ミレイやクナイ、そしてエル。アイトに好意を寄せてくれる少女たち。
 全てを手に入れ、この村の領主として生きていく。アイトの中にそんな理想が浮かび上がる。


 「······ん」
 「お」


 寝返りを打ったエルを見て、アイトは再び欲情する。
 抗えぬ欲求に身を任せ、エルに覆いかぶさる。


 「エル······」
 「······はい」


 エルが起きたが、アイトは気にしない。
 本能に任せて腰を振る。そして






 「あぁもう‼ ご飯だからさっさと起きなさ······」






 アイヒがドアを開け、アイトたちを目撃する。




 **********




 「ねぇクナイ、今日はお店休みなの?」
 「はい。今日は森に薬草を摘みに行くので」 
 「にゃあ、あたしも行きたい‼」
 「わたしもー」
 「あたいも行くー」


 ミレイとクナイは今日の予定を話しだ。 
 クナイは、ミコトたちを連れてミモバの森へ薬草摘みへ向かい、ミレイも同行する。
 アイヒは洋服屋の手伝いで、エルは臨時教会で診療を行う。
 ちなみに、新しく建設中の教会には、医療施設も併設される。


 「アイトくん。明日には出発するんだよね?」
 「あ、うん······」 


 エルはにっこり笑うが、アイトは固い。
 今朝の出来事をエルはなんとも思っていないようだ。


 「あ、アイヒ」
 「·········」


 アイトはアイヒを見るが、露骨に目を逸らされる。
 軽くため息をつき、アイトは立ち上がる。


 「じゃあ俺はウルフィーナさんたちと仕事をするから、何かあったら呼んでくれ」
 「分かりました、主殿」
 「頑張ってね、アイト」




 みんなに見送られ、アイトは執務室へ向かった。




 **********




 「アイト様、おはようございます」
 「おはようございます、ウルフィーナさん、ギャングさん」


 部屋にはすでに2人の副官が仕事をしていた。
 すると2人は立ち上がり、アイトに頭を下げる。


 「アイト様。ラクシャーサ様の命令により、本日から正式にアイト様の副官となりましたことをご報告させて頂きます」
 「今まではラクシャーサ様より派遣という形でしたが、これからはアイト様の部下となります。宜しくお願い致します」
 「そうなんですか⁉ じゃあずっと村に居てくれるってことですか?」
 「はい。そうなります」


 アイトは知らないが、ウルフィーナとギャングはラクシャーサに直訴し、アイトの直属になることを志願。ラクシャーサも快く送り出してくれた。


 「ミコトたちも2人に懐いてたし、これからも遊んであげて下さい。特にギャングさんは父親みたいなモンですしね」
 「······はい」


 ミコトはギャングにガロンの面影を重ねてるのをアイトは知っていた。ライラもウルフィーナによく髪を梳いてもらってるのをアイトは見ていた。


 「ではアイト様、まずはこちらをご覧下さい」
 「はい」


 ウルフィーナから貰ったのは、これからの改善点と、住人からの要望書だった。


 「武器・防具・装飾品屋の問題はクリアです。商人も行き来し始め、物資の流通も始まりましたし、ラウル殿の畑の野菜も収穫が始まりました。どうやらクナイ殿の作った魔術肥料を使い、成長を促進させたようですね」
 「味も見ましたが問題ありません。すでに村の食堂と八百屋に卸してますが、売上も好調です」
 「よかった。あの〜、ホウテンさんとベッコウさんは問題を起こしてないですか?」
 「·········まぁ、たまにケンカをしますが、アスルル殿が仲裁すると、肩を組んで仲良しアピールをしますね」


 武器防具屋の争いは、アスルルの仲裁に掛かっていた。
 アイトは苦笑しつつ、流すことにする。


 「ギルドのほうは?」
 「冒険者ギルドは依頼も増え始めました。民家が増えたことにより、細かな初心者向けの依頼が主ですが、ダンジョンに関する依頼と、ミモバの森のゴブリン退治など、戦闘に関する依頼も増えてます。順調に回っていますね」
 「傭兵ギルドの依頼も増えつつありますね。商人の護衛依頼や、近隣に出没する集団魔獣の退治など、団員の数はやや足りないらしく、団長と副団長自らが前線に出てるようです」
 「なるほど、団員の募集は?」
 「は、傭兵団の活動資金から、まだ募集は困難かと」
 「そっか。じゃあ村で資金提供出来るかな?」
 「······可能ですが、宜しいので?」
 「もちろん。コインに余裕はあるよね?」
 「は、民家や教会、その他設備の建築費用を省いても、まだまだ余裕はありますが」
 「じゃあお願いします。募集と団員の育成を重点的に」
 「かしこまりました」


 ウルフィーナは一礼し、領主執務室を出て行った。
 アイトは、残ったギャングに聞く。


 「温泉の方はどうですか?」
 「はい、全て順調です。新たに増築した泡風呂と薬草風呂、そしてマッサージが人気ですね。それと、簡易食堂の〔おにぎり〕が冒険者の軽食に人気で、外に専用の販売店を設けました。それに伴い厨房の改築と、調理スタッフを増員しました」
 「おにぎりか······。どんな味?」
 「味、ですか?」
 「ええ、中身は? 梅とかサケとか」
 「確か、酢漬けと干した魚と昆布でしたね」
 「なるほど。じゃあ新メニューとかはどう? 例えば、混ぜご飯とか、焼きおにぎりとか」
 「······それは一体?」
 「えーっと」


 アイトはザックリと説明する。
 ご飯に肉や野菜を混ぜて炊く炊き込みご飯や、タレを塗って焼く焼きおにぎりなどを。


 「なるほど······。では報告書を作成し、食堂担当のロムニーへ報告します」


 ギャングは立ち上がり部屋を出て行くと、入れ違いでウルフィーナが戻って来た。


 「アイト様。団の増員を団長のブルホーンへ伝えて参りました所、すぐに募集を掛けるそうです」
 「よかった。取り敢えず安心かな」
 「は。ところでギルドなのですが······」
 「えっと、何か?」


 ウルフィーナは困ったように言う。


 「実は、ポーションが足りないのです。なので錬金ギルドを稼働させるため、腕利きの錬金術師を探して頂きたいのです」
 「ポーションって、クナイが作ってるんじゃ?」
 「そうなのですが、クナイ様お一人では、冒険者や傭兵団たちの使用するポーション全てを賄いきれません。ラウルも薬品生成のアビリティがありますが、成功率が低いので、安定した供給が欲しいのです」
 「錬金ギルドか······」


 ポーションは、この世界における外傷薬品として最もポピュラーなもので、純度が高いほど効果を発揮する。
 ポーション精製はアビリティを使い精製する物と、薬品の知識に長ける錬金術師が精製し、町のギルドや道具屋、薬屋などにあるポーションはほとんどが錬金ギルド産の物である。


 怪我にはポーション、魔力回復にはエーテル、状態異常には万能薬があり、その全てを兼ね備えたエリクサーもある。
 効果が高いのは精製が難しく、それこそ錬金術師の腕前の見せ所でもあった。


 現在、リアン村のポーションは全てクナイの手作りであり、毎日精製してはいるが、午前中には品切れになる。
 危険指定ダンジョンがあるため、回復薬品は必需品。安定した供給が必要になっていた。


 「確かに、村に戻れば診療所があるから問題ないけど、ダンジョンの中だとそうはいかないからなぁ」
 「はい。腕のいい錬金術師ですと、【伊舎那天いざなてんイシャーナ】の領地ですね。あそこは錬金術師の聖地と呼ばれていますから」
 「う〜ん、また目的地が増えたな」
 「はい。至急ではありませんので、時間が空いた時にでも」
 「分かりました。じゃあ次は······」




 領主らしく、アイトは仕事をこなしていた。




 **********




 「よーし、今日こそボルカニカへ向けて行くぞ‼」
 「そうね」
 「じゃあヒノの町へ行くぜ‼」
 「ええ」


 そっけないアイヒを誘い、領主邸の入口にアイトはいた。
 朝早いので、見送りはいない。早起きのクナイは軽く挨拶をしたら、すぐにポーション作成へ取り掛かっていた。


 「なぁアイヒ」
 「なによ」
 「あー······その、えっと」
 「······行くわよ。ヒノの町からボルカニカは遠いわ」
 「お、おう」




 こうしてアイトたちは、ヒノの町へ転移した



「神様のヒトミ」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く