神様のヒトミ

さとう

84・村でのんびり③



 「アイヒやミレイたちと再会したらさ、アイヒが泣いちゃって……、ホンットにもう」
 「はは、アイヒが言ってましたよ。お姉ちゃんみたいな人だって」
 「そ、そっか……。それで、今日はミレイの働く〔ロゼオ〕に顔出しして、アイヒの働く〔ブロッサム洋服店〕に行ってたの。2人とも嬉しそうで……」


 ルシェラと話ながら、アイトは2階へ上る。
 少し進むと大きなドアがあり、ルシェラとの会話は終わった。


 「ここよ、ちょっと待って」


 ルシェラが無造作にドアをノックする。


 「ブルホーン、領主様が……、アイトが来たわよ」


 堅苦しいのはイヤなのだろう、ルシェラは言い直す。
 アイトも正直なところ、様付けは勘弁して欲しかった。


 「おぉ、入れ入れ」


 ドア越しから野太い声が聞こえ、ルシェラがドアを開けた。
 大きな特注のデスクとイスに座るブルホーンと、彼の秘書である豹人のチータ、更に副団長のアシュロンもいた。


 「なんだ、アシュロンもいたの?」
 「……領主様、お久しぶりです」
 「あ、いや、フツーに呼んでくれると助かります。はい」
 「ちょ、アシュロン!! ウチを無視すんなっての!!」
 「がっはっはっ!! おいチータ、茶の準備だ」
 「はい、畏まりました」


 チータに案内され、大きなソファに座る。
 ブルホーンとアシュロン、さらにルシェラが座ると、チータが紅茶を煎れてくれた。


 「さて領主様。……あー、アイトでいいか? 改めて、ウチら〔牛鬼バイソンオーガ〕を受け入れてくれて感謝する。この村の警備はバッチリこなすから、安心してくれや」
 「いや、お礼はこっちのほうです。わざわざ来て頂いて」
 「ははは、そりゃ違うぜ。傭兵団ってのは、駐留する町や村がないとダメなんだよ。足腰のない、流れの傭兵団より、村や町に委託されて守護をする傭兵団は信用されるからな。ああ見えてガトナ村にも専属傭兵団が駐留してたからよ、行く場所がなくて困ってたんだ」
 「……さらに、傭兵ギルドのギルド長も兼任だしな」
 「バカたれ!! そりゃオメーのせいだろうが、アシュロン!!」
 「仕方ないだろう、オレには人望がないし、お前ほどのカリスマもない」
 「ウチはアシュロンでもいいけどなー」


 チータがお茶のおかわりを注ぎながら、話をする。
 アイトはソファで丸くなってるミコトの頭をなでていた。


 「アシュロンもウチも、こうして帰る場所が出来たしね。ここは温泉もあるし食べ物は美味しいし、もうサイコーよっ!!」
 「だな。実は傭兵団本部にも温泉を引いて貰ってるんだ。団員たちには大好評だぜ!!」


 牛そのもののブルホーンだが、アイトは全く怖くなかった。
 むしろ温かさや面白さが溢れ、近所のおじさんみたいな印象を感じていた。


 「なにか困ったことがあったら、いつでも言って下さい。力になります」
 「がっはっはっ!! こりゃ頼りになる領主様だぜ!!」




 アイトたちは、お茶を飲みながら楽しく会話した。




 ***********




 「アイトー」
 「アーイートー」
 「あれ、ライラとシアだ」


 頭上のミコトが指さした先は、さらに高い頭上に居たライラとシアだった。


 「ぎゃ、ギャングさん?」
 「……お疲れさまです、アイト様」


 ギャングにしがみつくライラと、頭に登るシア。
 流石にアイトも噴き出しそうになり、なんとか笑いを堪えた。


 「とうっ」
 「えいっ」


 シアとライラがギャングから飛び降り、アイトに抱きつく。
 アイトは2人を交互になでると、ギャングに向き直った。


 「アイト様。村の改善点や問題点を纏めた資料がありますので、後ほど目を通しておいて頂けますか。それに対する対応策もいくつかありますので、明日にでも話を」
 「分かりました。わざわざすみません」
 「いえ。それにしても、土作人ドウェルグ緑深人アールヴの職人をスカウトしてくるとは。このギャング、脱帽しました」
 「い、いや。あはは、たまたまですよ、たまたま」
 「おっちゃん!! アイトを基地に連れてっていい?」


 ミコトがギャングに言うと、ギャングは微笑んだ。


 「構わない、ケガするなよ?」
 「にゃーい」
 「わん」
 「がうー」
 「基地?」


 アイトが首をかしげると、シアとライラに引っ張られた。


 「いいから行くぞアイト!! あたいたちの基地に」
 「わふ、行けばわかるよ」
 「れっつごー、アイト!!」
 「いでで!? 髪を引っ張るなっての!?」


 3人にせかされてアイトは村を走る。




 その姿を見て、ギャングは優しく微笑んだ。




 ***********




 領主邸近くの大木に、その秘密基地はあった。
 高さは10メートルほどで、マンションの3階から4階ほどの高さ。太い木の枝の間に堅い板を敷き、その上に簡素な小屋が建っている。


 「えへへ、おっちゃんが作ってくれたの」
 「わふ。すごかった、ぱぱっと作ったの」
 「がうがう、高くて気持ちいいよ。アイトも入って」
 「お、おお……。すげぇな」


 アイトの視線は頭上に固定されていた。
 秘密基地の計画は前から聞いていたが、ここまで本格的とは思っていなかった。
 梯子を登ると、6畳一間ほどの空間がある。


 「アイト、お菓子たべよ」
 「お、それってクナイの和菓子か」
 「わふ。取っておいた」


 ミコトはお気に入りのクッションに寝転がり、アイトはライラからどら焼きを貰う。
 シアはアイトにじゃれついていた。


 「がぅぅ、アイト」
 「ほら、よしよし」


 あぐらをかくアイトの足にシアはじゃれつき、アイトは耳と頭をなでる。
 反対側にはライラもじゃれつき、ミコトは気が付いたら寝ていた。


 「ふぁ……、なんか俺も眠いな」
 「わたしも……」
 「あたいもだ……」


 欠伸をしてミコトの傍にアイトは寝転がると、ライラもシアもアイトの胸に頭を寄せてきた。
 アイトは微笑み、2人を受け入れる。


 「晩メシまで一眠り……」




 アイトたちは、そのまま眠りについた



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