神様のヒトミ

さとう

83・村でのんびり②



 食事を終えたアイトは、村の冒険者ギルドへやって来た。
 新しくギルドが出来て、ラクシャーサの派遣したギルド長が来たということは聞いていたが、アイトは会うのは初めてだった。


 「留守のたびにいろいろ変わるなぁ……」
 「にゃ?」


 ミコトはアイトが肩車をしている。
 背中に引っ付く事もあれば、隣を歩く事もある。
 どうやら今日は肩車の気分らしかった。


 「お、ギルドだ。……いやはや、ロアの町より立派だな」


 出来て間もないが、大きさはかなりの物だ。
 入口には〔リアン・冒険者ギルド〕と大きな看板が掲げられ、何人もの冒険者が出入りをしている。
 アイトはミコトを肩車したまま中へ入った。


 「う~ん、やっぱ広いわ」
 「うん。あたしも初めて入った」


 ギルド内はかなりの広さだった。
 学校の体育館のような広さで、受付カウンターには若い女性職員がいる。
 そして依頼掲示板には、アイトも見たことがあるA4サイズの羊皮紙が貼ってある。
 周囲には、ダンジョン帰りらしき冒険者が酒を飲んでいた。


 「ぎゃっはっは!! 今日はオレの奢りだぜ!!」
 「いよっ、太っ腹ぁっ!! 見た目通りのエールっ腹ぁ!!」
 「おいおい、気前がいいじゃねぇか。だいぶ稼いだようだな」
 「まぁな。〔毒迷宮エスコロペンドラ〕の宝箱に、コインの山が入っててな、ラッキーだったぜ」
 「ほほぅ、流石は〔危険指定迷宮〕だな。入ってるブツも相当なモンだ」
 「ああ。しかもかなり深い階層までありそうだ。こりゃ踏破するのに何百年かかるかわかんねぇぞ」
 「1番最深部まで進んだのはどのグループだ?」
 「ああ、ステラのグループだ。今も潜ってるよ」
 「ステラって……、【超新星スーパーノヴァ】かよ!?」
 「ああ。あの女集団冒険者だ、ったく……」


 中堅らしき冒険者の話を耳に入れながら、アイトは受付に向かった。
 受付には、若い女性の受付嬢がいた。


 「あの、ギルド長はいらっしゃいますか?」
 「はい。どういったご用件でしょうか?」
 「えーと、俺はこの村の守護者で、ギルド長に挨拶をしておこうと思って……」
 「しゅ、守護者様ですか!? 少々お待ち下さい!!」


 受付嬢が立ち上がると同時に、アイトの背後から声が聞こえてきた。


 「ええよ、もう来とるでの」
 「え?……ああ、クロウリー様!!」
 「だからワシはギルド長じゃ!! ったく、どいつもこいつも」


 アイトはポカンとしながら老人を見た。
 よほどのことや、敵意がない限り、《森羅万象・大開眼》は使わないようにしている。


 「初めましてかの。ワシはクロウリー、このギルドの長をやっとる。はぁぁ……、やっとこさ会えたわい」
 「初めまして。俺は守護者のアイトです」
 「よろしくな。さーて、まずは仕事を済ませようかの」
 「仕事?」
 「ああ。ラクシャーサに頼まれての、ほれ」


 アイトはクロウリーから、金色のタグを受け取った。
 しげしげと見つめ、それが冒険者の証であることに気が付く。




 「S級冒険者の証じゃ。すでに手続きは済ませてあるから、古いのを渡せ」




 アイトはずっこけそうになった。




 ***********




 「え、S級って、はぁぁ!?」
 「落ち着かんかアホたれ。おぬし、〔危険指定大型魔獣〕を討伐しておいて、コインを貰ったらトンズラしたらしいじゃないか」
 「え。……あ、あのドラゴンか」


 資金稼ぎのために戦ったドラゴンを思い出すアイト。
 あの時は換金時にラクシャーサと遭遇したため、そのまま村に跳んだ。


 「全く。後になってラクシャーサの坊も思い出しての、それでワシがついでにライセンスを届けに来たんじゃ」
 「あ、はぁ……」


 アイトは胸元から赤いタグを取り出し、クロウリーに渡す。


 「さて、これでおぬしもS級冒険者じゃ。まだ大した依頼はないが、見ていくか?」
 「いえ、まだ挨拶したいところがあるし、今日は失礼します」


 アイトはお辞儀しようとしたが、ミコトがいたので頭だけ下げる。
 やけに大人しいと思ったら、ミコトはアイトの上で熟睡していた。


 「ほっほっほ、ではまた来るといい。ヒマなときはワシの茶にでも付き合ってくれ」
 「はい。失礼します」


 アイトはギルドから出て、傭兵ギルドに向かった。
 クロウリーは、あごひげを撫でながら呟く。




 「くくく……。あの小僧、面白い「ヒトミ」をしておる」




 ***********




 傭兵ギルドはリアン村の中央に建物を構えているが、本部は村の外れに建てられている。
 まだ発足したばかりの傭兵団であり、まだまだ育成が足りないということで、修練場も合わせて作ったからであり、敷地がかなり広くなっているからである。
 建物は突貫工事だが、建築や加工技術に秀でたアビリティを持つ魔帝族が、昼夜を問わず交代で作業しているため直ぐに完成した。


 リアン村を守護する専属傭兵団〔牛鬼バイソンオーガ
 団長は牛の魔帝族ブルホーン。副団長は元S級冒険者にして現A級傭兵である人間族のアシュロン。
 構成員は魔帝族が大半を占め、それぞれ村の守護と傭兵の依頼を受けて活動をしている。


 そして、アイトとミコトは傭兵ギルドに足を踏み入れた。


 「……こ、こんにちわ~」
 「こんちわー」


 傭兵。
 アイトの中では荒くれ者のイメージが強く、少し恐怖を感じながらドアを開ける。
 ギルド自体は冒険者ギルドと変わらないが、中に居る人達が違う。


 「あ、あの……」
 「うにゃ?」


 魔帝族8割、人間2割といった感じだろうか。
 傭兵団の共通装備である、牛の頭部を模した肩当てを付けている。
 魔帝族は魔獣寄りの者が多く、威圧感もあった。
 とても発足して間もない傭兵団とは思えない重圧を、アイトは感じていた。


 「………」
 「アイト、ブルホーンにあいさつするんでしょ?」
 「そうだけど……、知ってるのか?」
 「うん。おかし貰ったり、ジュース貰ったりした」


 アイトの頭の上でミコトが言う。
 取りあえずアイトは、冒険者ギルドと同じく受付へ。
 すると、またもや背後から声が聞こえてきた。


 「あ、キミ……。あの時の!!」
 「え……」


 アイトが振り返ると、1人の少女がいた。
 アイトより少し年上だろうか、革のワンピースに双剣を差し、金色のセミロングヘア。活発そうな笑顔を見せていた。


 「………あ!? シェスタ王国の時の、ミレイたちが雇ってた護衛さん!?」
 「正解!! また会えたね。ウチはルシェラ、よろしくね領主さん」
 「あ、アイトです。よろしく」


 ルシェラはにっこり笑い、アイトに詰め寄る。


 「ブルホーンに挨拶かな?」
 「はい、その、遅くなって申し訳ない」
 「いーのいーの、ブルホーンは2階にいるから、案内してあげる」
 「す、すみません」
 「にゃ、ありがと」
 「ふふ、どーいたしまして」




 アイトは、ルシェラに着いてギルド内へ入っていった。



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