神様のヒトミ

さとう

82・村でのんびり①



 アスルルたちの引っ越しが終わり、アイトは久しぶりに我が家へ帰って来た。
 ドアを開けると、部屋にはミコトがいた。


 「にゃ、アイト‼ おかえりー‼」
 「おっと、ただいま」


 暖炉の前で転がっていたミコトが、アイトを見るなり起き上がり、跳びついて来た。
 アイトはミコトを抱きしめ、頭をなでる。


 「ふにゃあ」  
 「よしよし、ライラやシアは?」
 「お昼寝してる。ねぇアイト、遊ぼ‼」
 「そうだな、久しぶりに遊ぶか」


 アイトはミコトを連れて、再度屋敷を出た。
 クナイやミレイ、エルの様子を見たかったし、他にも色々な店が出来ていたので見たい気持ちがあった。


 「あのね、最近できたのが、「りんじきょーかい」っていう白い建物だよ、アイトが連れてきたエルって人が、怪我やビョーキを治してるの」
 「りんじきょーかい······。臨時教会か?」
 「うん。いずれはおっきな建物を造るんだって。ウルフィーナが言ってた」
 「そうか、じゃあ挨拶がてら行くか」




 アイトはミコトを肩車して、歩き出した




 **********




 村の外れに、教会があった。


 エルの教会は、教会というより小屋に近かった。
 しかし小屋の一番上には十字架が掲げられ、小屋の中には礼拝堂がある。というか礼拝堂しかない。
 どこから持ってきたのか、『慈愛聖母じあいせいぼミストラル』の石像が安置され、窓から差し込む光で神々しく輝いていた。


 建築予定に組み込んであるので、立派な教会は建つ。
 現に、基礎工事はすでに始まっていた。


 「あ、アイトくん、ミコトちゃん」
 「よう、様子を見に来たぜ」
 「にゃう」


 羊人家族の次女メリノの服屋で作ってもらった修道服を着たエルが、礼拝堂入口の掃除をしていた。


 「魔力は平気か?」
 「うん。みんな軽い風邪とか作業員さんの切り傷擦り傷くらいだから」


 エルはここで診療所を開いた。
 シスターであり、魔術医でもあるその姿は、村の住人から聖女と呼ばれている。
 最初は無料で治療すると言っていたが、ウルフィーナにキツく言われたので仕方なく料金を貰っている。


 とは言っても格安だ。
 王国内でも最高レベルの魔術治療が、ほんの1000コインで受けられるのだから。


 「ここはいい村だね。あったかくて、優しくて······」
 「だろ? デューク王国とは違うか。あっちはどんな感じだったんだ?」
 「勉強や体力作りはあったけど。······優しい先輩がいたんだ」
 「先輩?」
 「······うん。お別れ、言わなかったなぁ」


 ハニエルとの思い出を、エルは思い浮かべる。
 城下町で一緒に買い物したこと、ハニエル行きつけのお店でランチしたこと、魔力の使い方が分からないころ、親身に教えてくれたこと。
 そして、エルのために怒り、戦ってくれたこと。


 「会いたいな······。ハニエル先輩」
 「······ハニエル? どっかで、······あ」


 アイトの脳裏に、1人の女性が浮かぶ。
 アイトが叩きのめした3人の【救世主】を運んだ、癖っ毛のロングヘアの少女。


 「え、あいつってデューク王国の幹部クラスだろ?」
 「し、知ってるの?」
 「まぁ、顔見知りくらいだけどな」


 意外な繋がりがあり、少しだけ驚いた。


 「ところで、何時頃に帰ってくる?」 
 「えっと、日が沈む前には帰るね」
 「わかった。久しぶりだし、みんなでメシを食べようぜ」
 「わかった。楽しみにしてるね」
 「アイト、今日のごはんは?」
 「そうだな、贅沢に焼き肉とかどうだ?」
 「にゃおっ‼ 焼き肉焼き肉♪」




 エルと別れ、クナイの薬屋へ向かった




 **********




 クナイの薬屋は、かなり繁盛していた。
 ポーションを買いに来る冒険者や、腹痛の薬を買いに来る住人、転んですりむいた少年に、塗り薬を渡したりもしてるし、普通に和菓子を買いに来た子供も居る。
 アイトとミコトを見つけたクナイだが、お客を捌くのに忙しいので、申し訳なさそうに会釈をする。
 アイトは座敷に近づき、クナイの手伝いをする事にした。


 「主殿。申し訳……」
 「手伝うよ。会計は俺がするから、薬の調合を」
 「じゃああたしは袋詰めやるー」


 アイトは冒険者にポーションなどを渡し会計をする。ミコトはポーションなどを紙袋に入れて手渡す。
 作業を分担して仕事をこなし、ようやくお客が捌けた。
 クナイがお茶を煎れアイトに出し、ミコトにはジュースとお団子を出す


 「主殿。わざわざありがとうございます、お手数をおかけしました」
 「いいって。そういえば、エルと話したか?」
 「はい。彼女も私と同じ、追加の【救世主】のようですね。先にご挨拶は済ませました」
 「そっか。仲良くな」
 「はい。彼女は魔術医、私は薬師。お互いに協力出来そうです」


 ジュースを飲みお団子を頬張るミコトをなでながら、今日の夜の予定を話す。


 「クナイ。今日はみんなで焼きをしようぜ」
 「いいですね。……なら、庭でバーベキューをしましょう。食材はありますし、コンロも大型のがありますので」
 「おお!! そりゃいいな」
 「はい。今日は早めに店じまいをして、準備します」
 「助かる。俺はミレイとアイヒに声を掛けるから。よし、行くぞミコト」
 「はーい。クナイ、ごちそうさま」




 アイトはクナイの店を出ると、ミレイの働く飲食店へ向かう




 ***********




 宿屋〔サクラの森〕に併設する飲食店〔ロゼオ〕は、本日も賑わいを見せていた。
 アイトが居ない間も、飲食店を開業する申請はいくつかあり、既に受理されて営業を始めてる場所もある。
 しかし、この〔ロゼオ〕は変わることなく営業し、お客が途切れることはない。


 「ミレイちゃん、8番の〔こだわりフルーツパフェ〕上がりました~」
 「はーい」


 ウェイトレス服を着たミレイが、営業スマイルでパフェを運ぶ。
 最近16歳になったミレイは、この〔ロゼオ〕の看板娘として周囲の人気をさらっていた。


 そんな光景を眺めながら、ミコトを肩車したアイトが入口にいた。


 「う~ん、こりゃ忙しそうだな……。また後にするか」
 「うにゃあ、アイト、オナカへった」
 「あー、……そろそろお昼か。確かに腹へったな」


 アイトは店を見回すと、空席を発見する。


 「よし、食べていくか」
 「にゃお!! わーい!!」


 アイトは店に入るとミコトを降ろし、別のウェイトレスに席を案内される。
 椅子に座りメニューを眺めると、ウェイトレスが注文を取りに来た。


 「アイト、来てくれたんだ」
 「お、ミレイ。丁度良かった」
 「ミレイ、あたしは〔お子様ランチ〕!!」


 嬉しそうなミコトの注文を取りつつ、アイトもステーキを注文。
 そして今夜の予定を説明した。


 「バーベキュー……。うん、わかった」
 「材料はあるっていうし、久し振りにみんなでご飯にしよう」
 「うん。それにしてもアイトって、なかなか目的地に着かないね」
 「言うな、気にしてんだ」


 ボルカニカに出発すると言ってかなり経つが、村や町に寄るたびに移住者の案内で村に戻っている。
 しかし、必要な人材なので仕方ない。


 「まぁ、少し休んだらまた出発するよ。ヒノの町から寄り道しないでボルカニカに向かうから」
 「うん。でもアイトは旅を楽しんで、ガロンさんもそれを望んでると思う」
 「………うん」


 ミレイは注文を通すために厨房へ戻ろうとするが、思い出したようにアイトに言った。


 「あ、アイト。冒険者ギルドと傭兵ギルドのギルド長が、アイトに挨拶したいって」
 「ギルド長?」
 「うん。きっと驚くよ?」


 ミレイはそう言って厨房へ戻った。


 「アイト、次はギルド?」
 「そうだな。まぁ俺も冒険者だし、挨拶はしないとな」




 アイトはのんびりと運ばれてくる料理を待っていた。
 

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