神様のヒトミ

さとう

80・アスルル



 アイトたちは、緑深人アールヴのアスルルを探しながら、町の人から色々な話を聞いた。


 なんでも、ベッコウとホウテンの争いは、もう数百年前から続いているという。
 きっかけはもう分からないが、どうも原因はアスルルを巡っての争い。昔なじみの魔帝族たちはもう仲裁するのも諦め、ケンカが起きても放っておくのが日常らしい。


 だが、鍛冶の腕前は素晴らしく、ヒノの町で1・2を争う職人で、普段は温厚で優しいため、弟子からの人望は厚い。
 人が変わるのは、やはりお互いとアスルルが絡んだ時らしい。


 アスルルは、いつの間にか町にいたらしい。
 ふらりと現れたアールヴの女性は、職人としても超一流。
 アスルルが作ったアクセサリーは、女性に人気、しかも魔力が込められているので、魔術的な効果もある。




 店の場所は、すんなり見つかった




 **********




 ヒノの町は職人気質な熱い町だが、アスルルの店は森の中の小屋をイメージした丸太小屋だった。


 「なんかリアン村を思い出すわね」
 「ああ。周りはレンガの家ばっかなのに、ここだけロッジだからな」
 「なんだか落ち着きます」


 店は定休日。中からフワリと香るのは、フルーツパイを焼く香りで間違いない。


 「う〜ん、いいニオイね〜」
 「だなぁ、ハラ減ってきた······」
 「アイトくん。今度私もお菓子作ってあげるね」
 「あ、うん。頼む」
 「······ほら、行くわよ」


 何故か不機嫌なアイヒが、店のドアを開ける。
 ベルの音が鳴り、店内へ。
 すると、店のカウンターでパイを焼くアスルルがいた。


 「あら、可愛いお客様ね。でもごめんなさい、今日は定休日なの」
 「あ、え〜と、その」


 年上の女性に微笑み掛けられて、アイトは困惑した。
 しかもアスルルはとびきりの美女。何故か鼓動が上り、まともに直視できない。


 店は意外と広く、学校の教室ほどの広さ。
 オシャレな棚の上に、様々なアクセサリーが並んでいた。
 そして、窓際には小さな円卓テーブルがあり、お茶の支度がされている。


 「あの、実はアタシたち、アナタにお話が」
 「お話?······へぇ」


 アスルルの視線はアイトへ向き、面白い物を見つけた子供のような笑みを浮かべる。




 「そこのボウヤ、面白い「ヒトミ」をしてるわね」




 **********




 アイトたちは硬直したが、アイトだけは警戒して戦闘態勢を取ろうとした。


 「お、落ち着いて。争う気はないわ。私たち緑深人アールヴは、目に見えないモノの力を感じることが出来るのよ。それでボウヤの周りだけ普通と違うオーラを感じたから、特に右目辺りね」


 慌てて手を振るアスルル。
 敵意を感じないことを理解したアイトは、手を降ろした。


 「す、すみません」
 「いえ、こちらこそ。ゴメンね」
 「あ······。いや」


 子供っぽく舌を出し謝るアスルル。
 大人の女性がする仕草ではないが、アスルルがやるとものすごく可愛いかった。


 「お詫びにお話を聞いてあげる。ちょうどフルーツパイが焼けたのよ」
 「え、でもそれ、ドヴェルグのお二人のためじゃ?」
 「大丈夫、すぐに焼けるし、今はボウヤに興味があるのよ」
 「ど、どうも。はい」


 お茶の支度がされたテーブルに座ると、フルーツパイが振る舞われる。さらにアイトたちが見たことのない茶葉の紅茶が振る舞われた。


 「これ、私特製の紅茶よ。本当なら自分で栽培した茶葉を使いたいんだけど、ここじゃ出来ないからね」
 「い、頂きます」


 アイトたちは紅茶を啜る。


 「······ああ、美味い」
 「ホント······。なんか、上品っていうか」
 「んん〜、フルーツパイも絶品です〜」


 アイトたちは暫しお茶とパイを堪能する。
 そして、本題へ。


 「なるほどね。貴方の村に来ないかってこと?」
 「はい。お店はもちろん、田畑もあるんで、薬草や茶葉の栽培も出来ると思います」
 「へぇ、面白そうね。場所は?」
 「国境近くのリアン村ってトコです。最近名前が付いたんで、知名度は全くないですが」
 「それに、温泉もあるんですよ‼」


 アイトたちの説得に、アスルルは揺れていた。


 「よかったら下見に行きますか?」
 「下見?」
 「はい。お時間があればですが」
 「時間はあるけど······」
 「よし、じゃあ失礼して」


 言葉で伝わらないなら、実際に見た方が早い。
 アスルルが迷っているうちに、アイトは追い打ちを掛けることにした。




 「じゃ、行きまーす。テレポーラ‼」



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