神様のヒトミ

さとう

76・ラピス

 
 アイトは目元を拭い首を振る。
 まるであり得ない光景を、自分の中でリセットするように。


 「さ、座って。ソフトドリンクでいいわね?」
 「……はい」


 アイトはカウンターに座るとラピスを見つめた。


 「……ふふ、似てるでしょ? 双子だからね」
 「あ……。いや、その……、はい」
 「アナタのことは妹から、……オピスから聞いてるわ。アイト」
 「え」
 「オピスとは手紙でやり取りしてたのよ」


 ラピスはグラスに氷を入れ、いくつかの瓶を取り出す。
 オレンジ色、黄色、赤色と、カラフルな液体は果実を搾った液体。
 アイトには理解出来ない割合でブレンドし、軽くステアする。


 「才能ある魔術師の【救世主】ってね。……あのコがあんなに長い手紙を書くなんて、初めてだったわ」


 グラスにストローを差し、アイトの前に出す。
 アイトはグラスを手に取ると、少しだけ啜る。


 「……オピス先生は」
 「いいの」


 ラピスはアイトの言葉を遮る。


 「あのコは幸せだった。それで十分よ」




 ポタリと、涙がジュースに落ちた。




 ***********




 「私がここに来たのはオピスのお墓参りと、……アイト、アナタに会いたかったからよ」
 「お、俺に?」
 「えぇ、オピスが一生懸命に育てた【救世主】がどんなコか、気になったの」


 ラピスはカウンターに頬杖を付き、アイトを見て微笑む。
 胸の谷間が強調され、アイトは視線を逸らした。


 「ふふ、カワイイわね」
 「う……。その、オピス先生にもやられましたよ」
 「双子だし、イタズラ好きなのよ。ゴメンね?」


 ぺろりと舌を出して微笑む姿は、オピスにそっくりだった。


 「そういうワケで、この村で酒場をやらせてもらうわ。よろしくね」
 「はい。その……、俺は酒、飲めないですけど」
 「ふふ、ジュースでもいいのよ? 私の話相手になってくれればいいわ」
 「そ、それなら行けます。はい」


 アイトは、残りのジュースを飲み干した。
 ラピスとの出会いが、アイトの何かを救ってくれたような気がした。




 涙混じりのジュースだが、アイトは不思議と甘く感じた




 ***********




 結局アイトはラピスと話し込んでから酒場を出た。
 時間は遅くなり、ガロンの家に着いたのは真っ暗になってからだった。


 「ただいま~……」
 「遅い!!」
 「ご、ゴメン……」


 怒り心頭のアイヒが、仁王立ちでアイトを迎えた。


 「あのね、遅くなるなら言いなさいよ。ミレイもクナイもずっとアンタを待ってたんだからね?」
 「え……」
 「夕食、あの子たち食べてないのよ? アンタが来るのを待つって」
 「あ……」


 アイトはキッチンを覗くと、後ろ姿のミレイとアイヒを見た。
 何かを作っているのか、美味しそうなニオイが充満してる。


 「ほら、手を洗って座りなさい。もう出来るから」
 「ああ、悪い……」


 アイトは手を洗うためキッチンへ。


 「主殿、お帰りなさいませ」
 「おかえり、アイト」
 「ただいま……。ゴメン、遅くなった」
 「いいよ」
 「はい。ラピス様とお話をしていらしたのですね」


 アイトの事情は2人も知っている
 この村で世話になった魔帝族のことは、アイトが話していた


 「うん。でも待たなくてよかったのに」
 「ダメ、ごはんとお風呂は一緒」
 「はい。ですが夜も遅いので、消化のいい簡単な物にしますね」
 「ああ。…………あれ、なにが一緒だって?」


 アイトが座ると料理が運ばれてきた


 「お、これは……」
 「雑炊です。お肉は少なめに、野菜とキノコを中心にしてみました」
 「野菜はベルテックスの八百屋で買ってきたの。この村じゃなくて、ガドナ村で仕入れた野菜みたい」
 「へぇ~、美味しそうじゃん」


 アイトは、隣に座るアイヒを見た。


 「お前、食べてないの?」
 「う、うるさいわね。……たまたまよ」
 「私とクナイが待つって言ったら、アイヒも待つって」
 「ちょーーっと待ったミレイ、口に野菜の切れっぱしがっ!!」
 「もがが」
 「さ、主殿、いただきましょう」
 「あ、ああ」


 全員でいただきますをし、木のレンゲで雑炊を掬い1口。


 「あひっ!? あふふ、……うんまっ」
 「おいひーっ」
 「ふむ、山の幸のダシがいいですね」
 「あふい。ほっほ」


 クナイを除く3人は口を尖らせ熱さに耐えていた。
 よく煮込まれたおかげか野菜はハラハラほぐれ、ほんのりと感じる塩味がいいアクセントになっている。
 そのまま食べると程よく冷め始め、最後は啜るように食べ終わった。


 「はぁ~……。鍋ってなんかホッコリするよな」
 「確かにね……」
 「オナカいっぱい……」
 「では、食後のお茶を煎れますね」


 クナイがティーポットを取り出し、人数分のカップを取り出す。
 陶器の水差しに水を入れ、魔力を流すとお湯になる。
 ティーポットに茶葉を入れお湯を注ぎ、少し蒸らしてカップに注ぐ。


 「どうぞ、ミモバの葉を毒抜きして煎じた特製茶です」
 「み、ミモバの葉って……」
 「大丈夫ですよアイヒ。乾燥させると毒が抜けますし、煎じて飲むと身体にもいいんです」


 アイトはクナイを疑うことなく飲む。


 「おぉ、なんか……、ほんのり甘い?」
 「ホントだ、おいしい」
 「……た、確かに。ゴメンねクナイ、ちょっと疑っちゃった」
 「いえ、お口に合って何よりです」


 4人はお茶を飲んでほっこり一息。


 「なぁ、ミコトたちは?」
 「あのね、とっくに寝たわよ」
 「ミコトとライラは一緒、シアはラクシャーサと一緒」
 「だからミレイ、呼び捨てはマズいって」
 「しかし、ラクシャーサ様は何も仰られませんでしたが」




 同い年4人は、時間も忘れて談笑した。




 ***********




 「あ、そういえば温泉あるんだよな?」
 「はい。実は最優先でこの屋敷と温泉を作らせました」
 「あ、そうなの?」


 2時間は経っただろうか。
 時刻は午後の11時を過ぎ、眠気も襲ってくる頃だ。
 アイトは温泉での会話を思いだした。


 「どうする? 先に入るか?」
 「いえ、片付けがあるので、主殿がお先でどうぞ」
 「どうぞ」
 「アタシも後でいいや、先にいいわよ」


 アイトはウキウキしながら立ち上がり、部屋に着替えを取り温泉へ。
 ガロンの家は変わっていないが、増築した部分は豪華で新しい木材の香りがした。


 来客用の部屋に、ライラの部屋、ミレイやアイヒにクナイの部屋もある。
 しかしライラはミコトの部屋で眠り、シアはラクシャーサと寝てる。


 「しっかし広いよな……。お、ここか」


 温泉の入口にはのれんが掛けられ、日本語で「ゆ」の文字が刺繍されていた。
 丁寧に男女別で分かれている


 「しかし、10日で建築するとは……」


 アイトはのれんをくぐり、脱衣所へ。


 「ほぉ~」


 かなり広い脱衣所だ。
 洗面所は4面あり、鏡も付いている。
 脱衣カゴは30以上あり、団体客が来ても安心。
 さらに、座敷があり冷蔵庫も設置してある。


 「中身は……、やっぱフルーツ牛乳!! わかってるな!!」


 アイトはコーヒー牛乳よりフルーツ牛乳派。
 風呂上がりが楽しみになり、急いで服を脱ぎ捨てる。


 「そんじゃ失礼して……。おぉぉ~っ!!」


 浴室のドアを開け中へ。
 浴槽はなんと「ヒノキ」だった。
 正確には檜ではないが、アイトにはそう見えた。


 洗い場はシャワーが8門あり、せっけんも完備。
 シャンプーリンスは、なんとクナイのお手製だ。
 瓶に入れられ、ラベルまで貼られている。


 「じゃ失礼して……」


 アイトは身体を洗い浴槽へ。
 ゆっくりと、肩まで浸かる。


 「あ゛ぁぁ~……、日本人サイコ~……」


 意味不明な呻き声を上げ、半目で湯に浸かる。
 アイトは湯を掬い、顔を洗う。
 妖精たちが作り上げた湯は、身体も心も解れていく。


 「あぁ……、あとで【黄昏妖精トワイライト・ニンフ】たちにお礼を言わないと……。ん?」




 アイトは、「露天風呂」のプレートがあるドアを見つけた。




 ***********




 「ま、マジでかよ……!?」


 外は岩風呂だった
 洗い場は3門完備され、岩で囲われた掛け流しの温泉。
 しかも東屋あずまやが設置されているので雨が降っても温泉は温くならない。


 「くっそ、ここまでとは……、恐れ入ったぜ!!」


 アイトはさっそく岩風呂へダイブ。
 周囲は木の囲いで覆われていたので、のぞきなどの心配もない。


 「はぁ、温泉サイコ~……」


 アイトはのんびり温泉を堪能していた。
 その時だった。


 「アイト、おまたせ」
 「主殿、失礼します」
 「ちょちょちょ!? アンタら前くらい隠しなさいよッ!?」




 ミレイたちが、当然のように現れた。




 ***********




 ミレイとクナイは一糸纏わず、アイヒはガッチリとバスタオルでガードしていた。


 「………おぉ」


 アイトは、ミレイとクナイに釘付けだった。
 2人の裸は何度も見たが、明るい場所で見たことはない。
 柔らかそうな膨らみ、先端の色、下半身の茂み。
 全てが新鮮で、衝撃的だった。


 「このバカアイト!! ジロジロ見んなっ!!」
 「おぉぉ、す、スマン……」
 「別にいいよ? もう何回も見てるし」
 「はい。その通りです」
 「ダメったらダメ!!」
 「っていうかなんでアイヒが居るんだよ」
 「な、なによ、アタシが居たら迷惑なの!? ナニするつもりだったの!?」
 「お、落ち着けよ」
 「ふん、あっち向いてなさいよ、身体洗うから」


 アイトは指示通り明後日の方向へ向く。
 女の子たちの声を聞きながら湯に浸かるのは興奮し、下半身が膨張した。


 「ま、マズい……」
 「なにが?」
 「聞くまでもないでしょう」


 すると、アイトの左右にミレイとクナイが来た。
 裸体を隠そうとせずに、むしろ押しつけてきた。


 「ちょ、ヤバいって」
 「ここでする? 部屋に行く?」
 「今日は私も参加します。いいですか主殿?」
 「………」


 アイトはゴクリとツバを飲み込む。
 爆発寸前のアイトを止めたのは、やはりアイヒだ。


 「アンタ、ここで盛るんじゃないわよ」
 「……はい、すんません」
 「全く、アタシたちは16歳なのよ? 思春期で性に関心があるのは分かるけど、覚えたてでサルみたいに盛って子供が出来たらどうすんのよ。医者もいないのに」


 アイヒが説教すると、アイトの息子は少し落ち着いた。


 「魔術で避妊できるよ?」
 「というか必ずしています。問題ありません」
 「だ、だからってヤリまくっていいワケじゃないっての!!」


 アイヒは勢いよく立ち上がる。


 「……おぉ、ワンダホー」


 ブルンと揺れる乳房。
 すらりとしたボディライン。
 しっとりと濡れた身体に、水滴の滴る下半身。


 「アイヒ、やっぱりいい身体してる」
 「悔しいですが、同い年とは思えませんね」
 「いい、サイコーだわアイヒ」


 この日アイトは、初めてアイヒの全裸を見た。




 アイヒに全力で殴られたのも、初めてだった。





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