神様のヒトミ

さとう

73・レベルアップ



 「こ、これは······こんな、魔術が」


 ラクシャーサは驚いていた。
 ロアの町にいたはずなのに、気が付けばリアン村なのだ。
 転移魔術が浸透していない世界では仕方がない。


 「ら、ラクシャーサ様⁉」
 「何故ここへ······そうか、転移か‼」


 ウルフィーナとギャングが丁度通りかかる。
 工事現場のヘルメットを被り、手には図面らしき羊皮紙の束を抱えている。
 現実を受け入れ、ようやく落ち着いたラクシャーサが、ウルフィーナたちの前に出た。


 「お疲れ様、どうやら上手くやってるようだな」
 「は。作業は全て順調です」
 「宜しければ村をご案内します。新たな施設も増えましたので」
 「それはいい、宜しくたのむ」


 ラクシャーサはアイトに言う。


 「済まないが、仕事を終わらせよう。後は視察団の部下が来るまで待機しようか」
 「はい。ゆっくりして下さい」
 「ではご案内します。こちらへ」


 ウルフィーナとギャングに連れられ、ラクシャーサは村へ。
 するとアイヒが思い出したように後へ続いた。


 「あ‼ ウルフィーナさんにお金渡さなきゃ、ちょっと行ってくる‼」


 アイヒもラクシャーサたちの後を追って走り出す。
 取り残されたアイトは、背伸びをした。




 「村の様子を見るかな······」




 **********




 アイトは、村の活気が凄いことに気がつく。


 「······人が増えてる? 店も、それに冒険者もか?」


 建設中の建物や作業員の他に、明らかに普段着の魔帝族や人間が混ざり、しかもギルドには冒険者までいる。


 「おいおい、この10日で何が?······よし」




 アイトは右目を使い、現在のタウンステータスを覗いてみた。




 **********


 【リアン村】 LEVEL6


 ○〔住人〕 49人
 ○〔家屋〕 31軒
 ○〔商店〕 道具屋1
       八百屋1
       パン屋1
       服屋1
       宿屋1
       酒場1
       薬屋1
       飲食店1
       公衆浴場1
       領主用浴場1


       未入居建築・多数アリ


 ○〔ギルド〕 冒険者ギルド


 以下項目・未開放 


 **********




 「ふ、増えてるーっ⁉」


 アイトは道の真ん中で叫んでいた。
 作業員や冒険者が訝しむが、それどころではない。


 「何だコレ、知らない店まで入ってる······この10日で何があったんだよ」


 服屋・パン屋・八百屋・酒場・道具屋。そして公衆浴場。
 アイトにはワケが分からなかったが、考えつくのは1つ。


 「移住希望か。それになんだよ領主用浴場って」


 アイトは歩き、事情を説明出来そうなクナイの薬屋へ向かう。


 「着いた······にしても古風だな」


 建築されたばかりなのに、何故か昔からありそうな薬屋。
 アイトは中に入ると、長卓カウンターのお菓子売り場に、ゆらゆら揺れる3つの尻尾が見えた。


 「主殿‼ おかえりなさいませ」
 「にゃ、アイト?」
 「わふ、アイト?」
 「がう、アイト?」


 団子を頬張りながら、3人の獣少女が振り返る。


 「よ、ただいま」




 アイトは片手を上げて微笑んだ。




 **********




 「あのね、みんなでクナイのお菓子を食べてたの」
 「わうわう、お団子おいしいの」
 「がうっ、きな粉団子がすき」


 3人がアイトに殺到し、アイトは困惑する。
 しかし、順場に頭をなでると大人しくなる。


 「アイトにもあげる。はい」
 「お、サンキューミコト」
 「えへへ。ちゃんとお小遣いで買ったおやつだからね」


 アイトはミコトから串団子を受け取り食べる。
 きな粉がまぶしてあり、懐かしい味にアイトは顔を緩ませた。


 「主殿、お茶をどうぞ。皆さんにはジュースを」


 アイトは畳敷きの床の間に座ると、ミコトが膝の上、ライラとシアが隣に座ってきた。


 「あのねアイト、おやつが終わったら秘密基地に行くの」
 「みんなで作ったの、わふ」
 「アイトなら入っていいよ、あたいたちの基地に」


 アイトはみんなの話を聞きながらお茶を飲む。
 久しぶりに安らぎ、アイトはようやく帰って来たと実感した。


 「そうだ。シア、村にラクシャーサさんが来てるぞ」
 「ホントっ⁉ とーさまっ‼」


 シアの笑顔は輝くが、ライラとミコトを見て曇る。
 どうやら2人に気を使ったらしいが、ミコトもライラも楽しそうに笑う。


 「じゃあシアのおとーさんに遊んでもらおっ‼」
 「わんわんっ‼ 行こうシアっ」
 「あ······うんっ‼」


 ミコトはアイトの膝から降りると、シアの手を引っ張る。
 ライラも負けじとシアの手を引っ張り、楽しそうに出ていった。


 「いい子たちですね」
 「うん」




 アイトはお茶を飲み干した。




 **********




 「所でさ、だいぶ住人が増えてきたけど」
 「はい。引っ越しや、デズモンド地域から来た魔帝族や、旅の行商人などが腰を下ろしたりと、中々に賑わい始めました」


 宿屋や飲食店などが開店し、街道の整備が終わった途端、商人や冒険者などが来るようになったらしい。
 そこに、長年旅をしていた行商人一家が、定住の地を求めて村にやって来たそうだ。


 「道具屋、服屋、八百屋にパン屋などは行商人たちが開店したお店です」
 「へえ、じゃあ酒場は?」
 「酒場は······主殿が直接確認した方がよろしいかと」
 「え、何で?」


 クナイはそれ以上言わず、話題を変える。


 「主殿、家には戻られましたか?」
 「い、いや、まだだけど」
 「そうですか。場所が以前とは違いますのでご注意下さい」
 「え、ガロンさんの家だろ?」
 「そうですが、領主の館として相応しく、場所を移動しました」


 クナイが言うには、家をそのまま引っ越して増築したらしい。
 村の真ん中よりやや外れに建つ領主の家、というのは相応しくないからだ。


 「それと、家の裏には温泉を引いてあります。公衆浴場も大規模な物が完成しましたし、村はますます繁栄を続けてます」
 「そうか、じゃあ様子を見に行こうかな」
 「はい」
 「あとさ、ギルドなんだけど、何で冒険者がこんなにいるんだ?」


 アイトの疑問は、村に沢山いる冒険者だった。
 装備を固めた冒険者の数が、やたらに目立った。


 「はい。実はミモバの森の奥に、ダンジョンが見つかったからです」
 「だ、ダンジョン? マジで?」
 「はい。実は私が見つけまして」


 クナイ曰く、森に薬草と毒草を取りに入ったところ、巨大な遺跡を見つけたらしい。
 そしてウルフィーナに報告、数日の調査でダンジョンと判明。
 そして直ぐ全てのギルドに通達がされ、名のある冒険者が集まったということだ。


 「展開はやっ」
 「はい。しかも公衆浴場やルエラさんの料理、充実した商店が並ぶ、この村の評判も上がっています。ウルフィーナさんの予測では、まだまだ入居希望が現れるということです」
 「マジか······」
 「問題もあるようなので、一度ウルフィーナさんの話を聞いた方がいいですね」
 「わかった。サンキューな」
 「いえ、私もお供したいのですが······」


 すると、入口から数人の冒険者が現れた。
 店の内装に興味があるのか、見回してる。


 「あ、あの、ポーションはありますか?」
 「はい。お幾つですか?」
 「み、3つ下さい」


 クナイは棚からポーションを取り出し、コインと交換する。
 すると仲間の女性冒険者が、ケースに入ったお菓子を見ていた。


 「あの、これは?」
 「それはどら焼きですね、1個100コインです」
 「へぇ〜、1個下さい」


 女性冒険者はニオイを嗅ぎ、一口齧る。


 「甘っ、柔らかっ、うんまっ‼ なにコレ〜‼」
 「お、オレもくれっ」
 「私もっ」




 忙しくなってきたらしく、アイトは静かに店を出た。



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