神様のヒトミ

さとう

72・獣王種族



 再び5日掛けて、町へ戻ってきた。


 「………」
 「どうしたのアイト?」
 「いや、あのさ……今気が付いた」
 「何よ?」


 アイトは言い辛そうに言う


 「一度リアン村にテレポーラで戻って、ロアの町に戻れば、時間掛けずに戻れたな~って……」
 「………あ」


 2人は顔を見合わせ、なんとも言えない表情になる。


 「……ま、いいか」
 「そうね、ギルドに行きましょ……」




 2人は苦笑しつつ、のんびり歩き出した。




 ***********




 ギルドの中に入ると、ちょっとした騒ぎになった。
 何故なら、10日前に出て行ったアイトが、普通に帰ってきたからだ。


 アイトは受付に向かう。
 奇しくも、アイトに依頼の受諾をした受付嬢だった。


 「あの、依頼完了の報告を」
 「え、あの……ドラゴンの討伐、で」
 「はい。アイヒ、頼む」
 「おっけー」


 すると、ギルドの真ん中にドラゴンの生首が現れる。


 「わぁぁぁっ!?」
 「ど、どどドラゴンだァァァッ!!」
 「ひひ、ヒヒィィィィッ!?」


 阿鼻叫喚の大騒ぎ。
 屈強な冒険者たちが、ドラゴンの生首に驚き離れる。
 アイトは特に気にせず、受付嬢に言う。


 「あの、胴体もあるんで素材の買い取りを、あと報酬は?」
 「しょしょしょ、少々、おまち下さいぃぃ……」


 受付嬢はガタガタ震えながら奥へ走って行った。
 その間もギルドは大騒ぎ。しかしアイトたちはのんびりしていた。


 「むふふ、なんか気持ちいいわね」
 「だな」


 アイヒはドラゴンの頭に寄りかかり、余裕を見せている。
 アイトも堂々と立ち、受付嬢の帰りを待つ。


 「なぁ、報酬が手に入ったらお土産買いに行こうぜ」
 「いいわね。ミコちゃんたちにお菓子買っていきましょ」
 「だな。あー……でもさ、ルエラさんやクナイがお菓子作ってるかも」
 「確かに、ルエラさん何でも作れるし……」
 「ま、町を回ってみようぜ」


 そんな談笑をしていると、ギルド奥の部屋から1人の男性が現れた。


 「……驚いたな。まさか2人で討伐するとは」


 聞き覚えのある声に、アイトは振り向く。


 「やぁ、まさかキミがドラゴンを退治するとはね」
 「ら、ラクシャーサさん!?」




 出てきたのは、【羅刹天ラクシャーサ】だった。




 ***********




 「たまたまこの町の視察に来ててね。ちょうどドラゴンの討伐の話も上がっていたんだ」
 「え、俺たちが行ってたのに?」
 「ああ。ドラゴンを刺激して、町や村に被害が出る可能性もゼロじゃない。討伐団を編成する話もしていたんだが……杞憂だった」


 ギルド奥の特別室で、お茶を啜りながら話す。
 アイヒはギルドの解体所でドラゴンの胴体を卸し、素材の見積もりを貰うために解体所に残った。


 「このドラゴンの報酬は、村の資金に?」
 「はい。温泉が湧き出たんで、立派な公衆浴場を建てる資金と、あとは村の拡張に当てます」
 「むぅ、オレの予想では40~50億は貰えるぞ。この規模の資金で村の開発を進めれば、町として認可すべきかもしれん」
 「い、いや……そこまでは。まだ人も少ないし」


 村の話をしながら、シアの話題になった。


 「ところで、シアは元気かい?」
 「はい。ミコトやライラと一緒に遊んでいます。いい友達になったみたいで……」
 「……そうか」


 アイトは、シアの秘密を聞いてみた。


 「あの、シアの……《魔狼転身マルコシアス・コンバージョン》って、なんですか? 似たようなアビリティが、ミコトやライラにもあるんです」
 「な、何故その名前を!? シアが言ったのか!?」
 「……はい。あとは俺のアビリティで、覧ました」
 「覧た……?」


 アイトは、自身のアビリティの一部を話した。


 「……そうか、《鑑定》のアビリティを持っていたのか」
 「それで、どんなアビリティなんですか? シアはかなり怯えてましたけど……」




 「簡単だ。あの子は「変身」する。【災禍の魔獣オーバーロード・ビースト】と呼ばれ恐れられた、この【生物世界ラーミナス】最強の魔獣にね」




 ***********




 「【獣王種族】と呼ばれる12の種族には、この【生物世界】で最強と言われた12の魔獣の血が混ざっている。どう言う理屈かはさっぱりわからないが……ある時、全く同じ時間にその力を宿した子供が同時に生まれる。そしてその個体は必ずメスでね」
 「つまり、ミコトやシアみたいな女の子が、12人いるって事ですか?」
 「ああ。ガロンから銀猫人の女の子を拾ったとは聞いていたが……まさか、シアと同じだったとは」


 ラクシャーサは頭を抱えていた。


 「魔帝族は子供を宿しにくい種族で、シアが生まれたタイミングで、銀猫人の赤ちゃん……オレは何をしていたんだ、この可能性なんて子供でも思いつくのに……」
 「ラクシャーサさん……」
 「すまない。当時は国の情勢が不安定で、しかも魔王様に呼び出しも受けていたから、あまりそちらに関心を持てなかったんだ」
 「いえ、いいんです。あの、よかったら村に来ませんか? シアも会いたがってますし……」
 「う、む……実は視察でそちらに赴くが、この町からだと移動で4日はかかる。そのあと直ぐに別の町に向かわなくてはならないから、僅かな時間しか取れない……」
 「あぁ、それなら平気です。一瞬で到着しますし、逆に言えば今から向かえば4日は休めますよね?」
 「……? えと、どういう……?」


 首をかしげるラクシャーサだが、いきなりドアが開かれ注目はそちらへ向けた。


 「アイトっ!! すっっごく高く売れたわ!! ドラゴンの素材と財宝で41億コイン!! 報酬と合わせて53億コインよ!! 大金持ちーーっ!!」
 「お、落ち着けよ、ラクシャーサさんが驚いてるだろ」
 「い、いや構わない」


 アイヒはアイトの隣に座り、キリッとラクシャーサに向き合う。


 「ラクシャーサさん。資金は順調に集まりつつありますので、追加の資材と作業員をお願い出来ますか? もちろん直ぐにとはいいません」
 「そ、それは構わないよ」
 「よし!! お土産もギルドの売店で買ったし、このまま村に戻るわよアイト」
 「お、落ち着けよ。コインはどこだよ? 50億なんて大金、すぐに用意出来るワケないだろ?」
 「あー平気、前金で5億は貰ってきたから。あとはどこの町のギルドでも引き出せるように、専用のパスを貰ったから」


 アイヒはカードを見せてくれた。
 どうやらコインの変わりのクレジットカードのようだった。


 「じゃ、行くわよ」
 「えと、行きましょうかラクシャーサさん」
 「こ、このままかい? ちょっと待ってくれ」


 ラクシャーサは近くのギルド職員に何かを告げると戻って来た。


 「オレと一緒に来た護衛に、先に行くから後で来いと伝えてきた。よく分からないが本当に行けるのかい?」
 「はい。じゃあ行きます」




 こうしてアイトたちは、大金を持って村へと飛んだ。



「神様のヒトミ」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く