神様のヒトミ

さとう

70・危険指定大型魔獣(SS+~レート)



 ギルドの中は広く、冒険者で溢れていた。
 受付のカウンターが10個あり、武装した冒険者が依頼を受けている。
 それ以外にも、依頼掲示板にはA4サイズの紙が貼られ、男女の交じったグループが依頼を物色してる。


 イステーブルが備え付けてあるスペースでは、依頼を終えたばかりの冒険者が祝勝会を開き、大いに飲み食いして騒ぐ光景が見えた。


 「賑やかね~」
 「いかにも冒険者だな」


 アイトたちは依頼掲示板へ向かい、貼られている依頼をチェックする。


 「なになに……下水道清掃に花壇の手入れ、薬草摘みに畑の手伝い……」
 「なんか日雇いのバイトみたいだな……」
 「あとは……お、みっけ」
 「どれどれ」


 アイヒは掲示板の端に貼られていた、何年も放置してあったような紙を剥がす。
 その紙は羊皮紙のような薄い黄色ではなく、何故か赤い紙だった。




 ********************


 危険指定大型魔獣・討伐


 ○グランドレッド・ボルケーノドラゴン


 推定レート・SS+~
 状況に応じて変動、SSSの可能性アリ


 場所・イエロ鉱山
 最深部が根城との情報アリ


 報酬・12億5500万コイン
 素材、魔核は討伐者に譲渡
 心臓のみ返却せよ


 ********************




 「いいわね、コレにしましょ!!」
 「待てコラ」


 アイトはアイヒの持ってた依頼書をひったくる。


 「どう見てもヤベーだろ、流石にコイツは……」
 「あのね、報酬は12億よ、一気に資金難が解決じゃない。それに素材も売り払えば20億はくだらない……いい、温泉施設を作るために、ここはムチャしなさい」
 「………温泉施設………むむむ」
 「全く、ミコちゃんたちだって温泉を楽しみにしてるのよ? 親代わりのアンタが、あの子たちを笑顔にしなくちゃいけないのよ?」
 「ぐぅ……く、わかった。その代わり、危なかったら逃げるからな」
 「大丈夫、アタシが逃がさないから」
 「どっちをだ!? 俺か⁉ ドラゴンか⁉」


 喚くアイトを無視し、アイヒは受付へ依頼書を持って行く。


 「ほらアイト、アンタが受付しなさいよ」
 「この野郎、覚えてろよ」


 アイトは赤い冒険者の証と赤い紙を出す。


 「………あの、こちらは危険指定依頼となりますが?」
 「はい。お願いします」
 「ですが、あなた様はF級……」
 「問題ないです、強いんで」
 「………」


 受付嬢は訝しみ、アイトを見る。
 ため息を吐くと、面倒くさそうに説明した。


 「えー、こちらは【羅刹天ラクシャーサ】様が認めた、危険指定依頼となります。危険指定依頼とは、一般の冒険者や傭兵では相手の出来ない大型魔獣で、ギルドに依頼書が貼られるのは危険回避のためであるからです。それに関わらず報酬が設定されてるのは、この魔獣を倒した時に掛かる被害や損失を計算した場合のコインがこれほどと推定されるからです」
 「はい。わかりました」
 「………では、こちらの依頼をお受けしますか?」
 「お願いします」
 「………はぁ」


 受付嬢はため息を再度吐くと、淡々と処理を済ませる。


 「ではお気を付けて」
 「ども」


 アイトは赤い冒険者の証を返して貰うと、首に掛ける。
 ギルドから出てアイヒを探す。


 「あれ、アイヒ?」
 「ここよ、こーこ」
 「て、どこいたんだよ」
 「ギルドよ。なーんかムカつくこと言ってたわ」
 「は?」
 「あのドラゴンの討伐、年に何回か受ける冒険者がいて、みーんな帰ってこなかったんだって。それでまた無謀なバカが出たとかで、みんなで笑ってたわ」
 「なーんだそりゃ、ムカつくな……」
 「だよね……」


 流石にアイトも馬鹿にされれば面白くない。
 それはアイヒも同じで、お互いに顔を見合わせてニヤリと笑う。


 「じゃ、行くか」
 「ええ、度肝抜いてやるわ」




 こうして2人はイエロ鉱山へ向かった。




 ***********




 ロアの町を出発して5日。イエロ鉱山に到着した。


 「ここは廃棄された鉱山ね。その原因がここの最下層にいるドラゴンだけど……」
 「そもそもドコから来たんだ? 最下層に別の入口でもあんのか?」
 「そうじゃなきゃそこまで行けないでしょ? 恐らく、鉱山の反対側にあるんじゃない?」
 「ま、どうでもいい。行くか」


 アイトとアイヒは鉱山へ入っていく。
 中は薄暗く、アイヒが杖を一振りすると小さな光球が灯り、周囲を照らす。


 「どうやら魔獣はいないようね……」
 「だな。鉱山だし、人の手が加えられた場所には結界も張られてたみたいだ」
 「うん、でも……1番の原因は、ドラゴンね」
 「ああ……要は他の魔獣がビビって近寄らないのか」


 アイトは肌で感じていた。
 この鉱山に入ってから、得体の知れない強さの魔獣の気配を。


 「それにしても、なんで心臓は返却なんだ?」
 「ああ、ドラゴンの心臓は薬になるのよ。最も心臓以外も使えるけど、心臓はエリクシールの材料になるから、魔帝族も人間族もこぞってほしがるのよ」
 「へぇ、じゃあクナイのお土産に少しだけ削っていくか?」
 「う~ん、バレたら厄介よ? だったら肝臓とか胃とか、あとは血液とかにしときなさい」


 まるで散歩のように歩き、最深部に向けて進む2人。
 岩場の道だがキチンと整備され、トロッコや台車、スコップやツルハシなどの道具が散乱していた。


 「作戦は?」
 「情報だと、ドラゴンの外皮は鋼鉄のような堅さを誇るわ。まともな打撃は期待できない」
 「ふん。俺の拳は内臓を破壊するぜ?」
 「バカ、それじゃ意味ないでしょ!! 高く売れるんだから、なるべく無傷で倒すの!!」
 「……すみません」


 アイトはすっかり忘れていた。
 倒すのは簡単だが、あくまで金稼ぎ。
 売れる部位である内臓を破壊するアイトの【壊神拳】は使えない。


 「じゃあどーすんだよ」
 「簡単よ。首をスパッと切り落とす……これで終わりよ」
 「……どうやって」
 「アタシの滅級魔術よ。詠唱に2分掛かるから、アンタは時間稼ぎとアタシの護衛ね」
 「2分って……滅級魔術でか!?」
 「そうよ。単発最強の「剣」で、首を切り落としてやるわ」


 下級・中級・上級・特級・星級、そして滅級
 第六番目の難易度を誇る滅級魔術を、アイトは見たことがない


 「今の俺は【雷】の上級だ。アイヒってやっぱスゲーな」
 「ふふん。アタシのアビリティ、《奇跡の魔術師》は伊達じゃないのよ」


 アイヒは胸を張る。
 ミレイやクナイより大きな乳房が揺れ、アイトは思わず凝視した。


 「ど、ドコ見てんのよ、変態」
 「い、いや……」


 アイトはそっぽ向き、アイヒも目をそらす。
 少し気まずい空気が流れたが、直ぐに気を引き締める。


 「……来たぜ」
 「ええ。手はず通りに」




 最下層。ドラゴンの住処に到着した。




 ***********




 最下層は広く高く、半球のドームのようになっていた。
 その最奥地には横穴があり、そこから赤い2つの光が見える。


 『グゥゥゥゥ………』


 大きな足音を響かせ現れたのは、真っ赤な鱗を持つ巨大なドラゴン。
 鱗と言うよりは甲殻で、全身はトカゲのように長細い。
 翼は無いが顔はドラゴンのそれで、内側に反り返った凶悪な角が見える。
 大きさは高さ5メートル、全長は50メートル以上はある。


 グランドレッド・ボルケーノドラゴン。


 SS+~レートに指定された、危険指定大型魔獣。
 単体で国1つ滅ぼす力があり、【魔帝十二神将】ですら手を焼く存在とも言われ、討伐には慎重にならざるを得ない怪物だ。


 「へへ、面白いじゃん。最近運動不足だったんだ」
 「あのね、気を引き締めてよ。それと内臓破壊の技は禁止」
 「へいへい」


 《魔拳イデア》をはめ直し、その場で軽くジャンプする。
 首をコキコキ鳴らし、ドラゴンの前に出る。


 『ガァォォォォォォッ!!』


 ドラゴンの咆吼にも屈しないのは、アイトが強くなった証。
 アイトは構え、名を名乗る。




 「壊神拳かいじんけん皆伝かいでん第四番だいよんばん第一種だいいっしゅ十五号じゅうごごう神世藍斗かみよのあいと




 ドラゴンの名乗りは無く、返すのは咆吼。




 「さぁて、稼ぎますか!!」



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