神様のヒトミ

さとう

69・完済

 
 「ねぇアイト、旅は順調?」
 「ああ。寄り道が多くてなかなか先に進まないけどな」


 アイトとミレイは、ベッドでたくさんの話をしていた。
 最近のことや、アイトが居ない間の村の様子などを、ミレイが楽しそうに語る。


 「あのね、私……もう、あっちの世界に帰らなくてもいい」
 「……うん」


 アイトも同じ思いだった。
 「ヒト型の鱗粉」の話が真実なら、アイトたちは既に死んでいる。
 なら、この世界で与えられた「命」で生きるしかないとアイトは考えている。


 「ま、この村が発展するのはいいな。温泉も湧いたし」
 「うん。施設が出来たら一緒に入ろうね」
 「………」


 アイトはゴクリとつばを飲む。
 つい先ほどまで深く交わったばかりなのに、アイトはもう興奮していた。


 「わ、すごい」
 「お、お前が誘惑するからだろ……」


 
 深夜を越えてなお、2人は元気だった。




 ***********




 翌朝。朝食を終えて再びロアの町へ。


 「あの、私は行かなくても宜しいので?」
 「はい。宿屋の準備で忙しいだろうし、お金払うだけですから」


 アイトは出発前にヤドの宿へ来ていた。
 ヤドの着ている服は新しくなり、表情も憑き物が落ちたようなふっくらした笑顔。
 ハクとトマルはまで寝ているため、宿屋のロビーにはアイトとアイヒ、ヤドの3人しかいない。


 「それに……相手の出方次第で、荒っぽくなるかも知れないですしね」
 「お、おいアイヒ、俺は穏便に済ませるからな」
 「真っ先に殴りかかったヤツが何言ってんのよ」


 アイトは反論できずに黙ってしまう。
 すると、飲食店のドアが開き、3人の少女が現れた。


 「にゃあ、行くのかアイト?」
 「わふ、いってらっっしゃい」
 「がう」


 ご飯を食べていたのだろう、口元が汚れてる。
 アイトはため息をつくと、順番に口元を拭ってやる。


 「ほら、行儀悪いぞ?」
 「にゃむ、ありがと」
 「ライラもおいで」
 「わぅん……ありがと、アイヒ」


 アイトとアイヒで口元を拭い、アイトはシアの傍へ。


 「ほら、おいでシア」
 「がぅぅ……くすぐったい」
 「よし、キレイになった。さーて、今日の予定は?」


 アイトはミコトに聞くと、しっぽを揺らしながらミコトは言う。


 「あのね、今日は3人で「ひみつきち」を作るの!!」
 「だめだよミコト。それいったらヒミツじゃないよ」
 「アイトはいいの、ねーシア」
 「うん。こいつ……アイトならいい。がうがう」
 「わふぅ……確かに」


 ヤドとアイヒはいつの間にか後ろに下がっていた。
 アイトは少女3人を順番になでる。


 「はは、気を付けろよ?」
 「にゃう!!」
 「わん!!」
 「がう!!」




 仲良くなった3人は、競争しながら出て行った。




 ***********




 「アンタって子供好きよね」
 「まぁ否定はしない。だってみんなかわいいしな」
 「アタシも同感。ミコちゃんはスッゴくカワイイし~、ライラもシアも捨てがたいけど、シアはアンタにしか懐いてないのよね~」
 「そうなのか?」
 「うん。昨日はミコちゃんとライラと3人でご飯食べてたけど、アタシやミレイが近づくと隠れるのよね。威嚇はしなくなったからまだマシだけどね」


 ロアの町を歩き、ヤドの元宿屋へ向かって歩きながら、2人は談笑していた。
 薄暗い路地を進み、廃屋のような宿へ進むと。


 「あれ、お客さん?」
 「ンなワケないでしょ。昨日の借金取りね」
 「でもよ、10人以上いるぜ」
 「……ま、お話を聞いてみますかね」


 アイヒはニヤリと笑うが、アイトにはイヤな予感しかしなかった。
 実に堂々とした歩きで進んでいくと、チンピラが気づき、注目される。


 「へ、逃げたのかと思ったが……来たようで何よりだぜ」
 「そりゃどーも。さて、まずはお金を返すわ。借用書をよこしなさい」
 「いいぜ……ホレ」


 牛の魔帝族が借用書を投げると、そこにはこう記されていた。




 **********************


    借用書


 私、ヤドはチンピラ金融に金1500万コインお借りしました


 **月**日まで返済いたします






 **月**日  借主 ヤド 


 **********************




 「……あれ、1000万コインじゃなかったのか? てゆうかチンピラ金融って……ぶふっ」
 「………」


 アイヒの表情が険しくなっていく。


 「は、慰謝料だよ慰謝料!! こっちは借金回収に来ただけでケガまでさせられたんだ。それ相応の慰謝料は必要だろーが。あぁん?」


 チンピラは右手を見せると、その手は包帯でグルグル巻きにされていた。
 牛の魔帝族も、アイトが握った腕を手ぬぐいで吊っていた。


 「さーて、慰謝料込みで1500万コイン、払って貰おうか……!! ヤドの野郎は夜逃げしやがったみてぇだし、当然お前らが払ってくれるんだよなぁ?」


 アイトは少し考え、仕方なくコインを取り出す。
 ケガをさせたのは事実だし、これで縁が切れるなら仕方なしといった風に。


 「アイト、2000万コイン出して」
 「はいよ……はぃ?」
 「2000万コイン、コイツらに払ってあげて。早く」
 「え、でも」
 「払え」
 「はい」


 逆らえば殺されるオーラを感じたアイトは、100万コインを20枚取り出す。


 「なんだ、気前がいいじゃねーか。それともビビったのか? まぁこの町でオレらに睨まれたくなければ、媚び売っとくのもいいかもな。ハハハハッ!!」


 10人以上のチンピラが笑う。
 アイトは手を差し出したチンピラにコインを渡すと、完済証明書を受け取った。


 「さーてこれで完済だ。けっけっけ、お疲れさん」
 「さて、これで借金は帳消しね……」




 次の瞬間、チンピラ1号が吹っ飛んだ。




 ***********




 アイトもチンピラたちも動けなかった。


 「言っとくけど、500万の上乗せは薬代よ?」


 ザワリとアイヒの空気が変わる。


 「アタシ、あんたらみたいなヤクザまがいの取り立てするヤツ、大ッッッキライなの……」
 「あ、アイヒ?」
 「安心して、殺しはしないわ……」


 アイトはいつの間にか後ずさりをしていた。
 チンピラたちもビビり、逃げ出すことも出来ないくらい震えてる。


 「ふふふ……7属性のフルコース、味わってね♪」




 カラフルな蝶が、路地裏を支配した。




 ***********




 「お前、どうしたんだよ。穏便に済ませたかったのに……」
 「ゴメン、あーいうヤツらを見ると、イライラしちゃって」
 「……死んでないよな?」
 「ええ、手加減したから」


 アイトたちは裏路地を抜けて大通りを歩いていた。
 予定通りギルドへ向かい、討伐依頼を確認するためだ。


 「さ、この話は終わり!! 次はギルドね」
 「ああ、大型の魔獣討伐依頼を受けて、報酬を村の資金にしよう」
 「おっけ。それにしてもなかなか先に進まないわね」
 「ま、焦らなくてもいいだろ。ガロンさんも許してくれるさ」


 町の中央に建つ大きな建物が見えてきた。
 看板には、「ロア・冒険者ギルド」と表記されている。


 「俺とお前なら、どんなヤツでも楽勝だぜ」
 「ま、そーね。ちゃちゃっと終わらせましょ」




 アイトたちは、ウェスタン風のドアを開けて中へ入った。



「神様のヒトミ」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く