神様のヒトミ

さとう

68・親友



 「お前……あたいの「力」が狙いじゃないのか?」
 「力?……なんだそりゃ?」


 お菓子を食べ終わったシアは、逃げることもなくアイトの傍に居た。
 すると少し躊躇いながら聞いてきた。


 「とーさまが言ってた。あたいには特別な「力」が眠ってる、その力を狙うヤツがいっぱいいるから気を付けろって……」
 「ふ~ん、特別ねぇ……」
 「【獣王種族】のメスにしか現れない、【災禍の魔獣オーバーロード・ビースト】だって言ってた……あたい、そんな力なんてないのに、何度も攫われたり、襲われたりした。とーさんがいないときを狙って、叩かれたり……」
 「………」


 ポロポロと涙を流すシアを、アイトは撫でる。
 拒絶されずに、耳も尻尾も項垂れたまま。


 「なぁ、その力を持つのは、お前だけじゃないぞ?」
 「……え」


 アイトの言葉に、シアは顔を上げる。


 「ミコトもライラも、お前と同じ「力」を持ってる。ライラは気付いてないけど、ミコトも苦悩してた」
 「あ、あのネコが!? うそ!?」
 「ホントだ、何なら聞いてみろ。お前と同じ苦しみを抱えた仲間だ」
 「………」
 「ミコトとお前の違いは、周りの反応だ。ミコトは一度暴走したらしいけど……この村の前の住人は、変わらずミコトを愛してくれた。だからミコトは笑顔でいられる」
 「……あたいは」
 「お前はどうなんだ?」
 「……ない。あたいは「力」があるってだけで、酷い目にあった」
 「なら大丈夫だ。お前は暴走しないし、ここにいれば仲間も、同じ境遇の友達もいる」
 「と、ともだち……?」
 「ああ。ミコトとライラ、同じ力、同じ境遇の友達だ」
 「で、でも……あたい、あのイヌに噛みついた」
 「ライラは許してくれる。それにライラだってミコトのしっぽに噛みついたことがある。でも2人は今は大の仲良しだ」
 「で、でも……」
 「大丈夫、謝れば、素直になれば仲良くなれる。お前がいつまでこの村に居るかわからないけど、淋しいのはイヤだろ? 友達と笑っていたほうがいいだろ?」
 「………うん」
 「ミコトもライラもシアも、悪い事をしたら謝るんだ。そうすれば友達になれる」
 「……ホント?」
 「ああ、ホントだ」
 「……ウソじゃない?」
 「ああ、もちろん」
 「じゃあ……一緒に来て、謝る……」
 「よし、行こう」


 アイトは立ち上がると、シアも立ち上がる。


 「……」
 「……ん」




 シアは、アイトの手をそっと握った。




 ***********




 ミコトとライラは、飲食店の前にある花壇に花を植えていた。
 どうやらつまみ食いのバツらしい。


 「……」
 「大丈夫。ほら」


 シアはアイトの手をギュッと握る。
 ミコトとライラは楽しそうに花を植え、尻尾が左右に揺れていた。
 穴を掘り、肥料を入れ、苗を植える。
 そんなシンプルな作業を、2人で楽しくやっていた。


 「ミコト、おみず……あ」
 「ライラ? あ」


 如雨露を取るために振り返ったライラが、手を繋ぐアイトとシアを見て、さらにミコトも振り返る。


 「あ、アイト!! なにムグ!?」
 「ミコト、すとっぷ」


 ライラがミコトの口を、土まみれの手でふさぐ。
 ムームー唸るミコトを無視し、ライラはシアをじっと見つけた。


 「シア、ここからはお前の番だ。俺はここまで」
 「………」


 シアはモジモジして前に出ると、ライラをチラチラ見た。
 ライラはじっとシアを見つめる。


 「あ、あの、あたい……その」
 「………」
 「ご……ごめんなさい!! しっぽ噛んで、引っ掻いて……えぐぅ……ひっく、ご、ごめんなさ」


 シアは泣き出してしまう。
 するとライラがシアに近づく。


 「わふ。わたしもごめんね……しっぽ平気?」
 「がう……へいき」
 「よかった。えへへ……」
 「あ、うん……えへへ」


 ライラはにっこり笑い、シアの手を取る。
 シアも目を擦ると、ようやく笑顔になった。


 「にゃぁぁっ!! あたしを忘れるなー!!」
 「わふ。ミコトもごめんなさいしないと」
 「にゃう……ごめんなさい。しっぽと耳、へいき?」
 「がう。へいき……あたいもゴメン」


 3人は笑い合う。
 仲直りすると、シアを誘って花壇に向かって土を掘り始めた。
 アイトの役目は終わり、そっとその場を後にする。
 アイトの後ろからは、楽しそうな声が聞こえてきた。




 「ガロンさんに、見せてやりたいよ……」




 ***********




 自宅に戻ると、ミレイとアイヒがいた。


 「アイト、明日ロアの町で、ヤドさんの借金を返しに行くわよ」
 「ああ。その後でギルドに行くぞ」
 「ええ、資金集めのために魔獣退治ね。ふふふ……腕が鳴るわ」
 「おう、久々に暴れるぜ」


 アイトとアイヒは不適に笑う。
 その様子を見たミレイは、羨ましそうに言った。


 「いいな……私も行きたいけど、ボルカニカはアイヒの担当だし……」
 「ゴメンね、でも次は譲るからさ」
 「うん」


 すると、ミレイはアイトに抱きつく。


 「アイト、今夜は……」
 「ああ、もちろん」
 「えへへ」


 アイトもミレイを抱き返す。




 今夜も、激しくなりそうだった。



「神様のヒトミ」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く