神様のヒトミ

さとう

67・泥蟲



 「あ、みんなー!!」
 《お、アイト》
 《アイトー!!》


 温泉が出て1時間、仰天してる作業員やウルフィーナを放置して、アイトは【黄昏世界アーヴェント】へ戻ってきた。


 「いやーありがとう、サイコーの温泉だよ」
 《うふふ、気に入って貰えてよかった》
 《人間や魔帝族の身体にいい効果を付与しておいたわ!!》
 《わたしたちの力で作ったから枯れることもないしね!!》


 アイトは妖精たちに礼を言って気が付く。


 「そういえばさ、みんなは力を解放すると、すぐにこっちに戻るんだな」
 《まぁね。キミを介して力を解放すれば、すぐに引き戻されるんだ。その間の僅かな時間、ボクたちは外を感じれる》
 《気持ちいいよね~》
 《うん。ここにはない刺激がいーっぱい!!》
 《アイト、わたしたちだけじゃなくて、ほかのニンフたちも解放してあげて!!》
 「わかった。でも、戦いで力を借りるかも……」
 《なんでもいいよ、ボクたちは外の争いなんてどうでもいいし。でも、ここの人や魔帝族が傷付けられるのはイヤだな》


 アイトは小さなキツネを見る。


 「ありがとな。俺も同じだ」
 《うん》


 すると、村の中央から白いヘビが飛んできた。


 《お~~い、アイト~~》


 アイトの名を呼びながらニョロニョロ浮いている。
 近くまで来ると、アイトの目の前でトグロを巻く。


 「どうした? なんか用事?」
 《うん、実はキミに会いたいってヤツがいるんだ》
 《え、まさか……上位個体かい?》
 《その通り、散歩から帰ってきてね、すぐそこまで来てるよ》
 「え、だれ? 上位個体?」


 アイトはキョロキョロ当たりを見るが、それらしき生物は見えない。


 《アアアァァァァ……》
 《あ、いたよアイト。キミの肩の上》
 「え」


 アイトは自分の肩の上を見ると、小さなアメンボらしき生物が居た。
 大きさは10センチほどで、身体が黄色い以外は普通のアメンボにしか見えない。


 《アァァァァ……》
 「えっと、こんにちは?」
 《アアァァァ♪》


 喜んでいるのか分からないが、6本ある1本の足を持ち上げ振っている。
 掠れたような声? を出し、アイトに呼びかけていた。


 《アイト、彼はこの世界で唯一、名前を持つ7つの個体の1匹さ》
 「7つの個体って、確か……」
 《そ、上を見てごらん》
 「上?……あれ、星が見える……?」


 セピア色の空には、星のような輝きの光が7つ見えた。
 この世界で唯一、光を放つ星だった。


 《あの七ッ星は、彼ら7個体が作り出した星。故に彼らは【黄昏の七ッ星トワイライト・セブンスター】と呼ばれてるんだ》
 「へぇ~……お前、凄いんだな」
 《アァァァァ♪》


 アメンボは前脚を誇らしげに振っている。


 「俺はアイト、よろしくな」
 《アァァァァ……》
 《ボクは【泥蟲どろむしスパンダルマド】です。どうぞよろしく……だってさ》
 「よろしくな。何かあったら言ってくれ、その代わり、俺に力を貸してくれよ?」
 《アァァァァ♪》
 《もちろん。ボクとお友達になってください……だってさ》
 「当然だろ。任せとけ」


 このとき、アイトはまだ・・知らなかった。




 このアメンボが、とんでもない存在ということに。




 ***********




 「温泉温泉~♪」


 アイトは【生物世界ラーミナス】に戻り、鼻歌を歌いながら歩いていた。
 この世界にも風呂はあるが、アイトはテント暮らしが多かったし、リアンの村ではお湯で身体を拭いたり魔術で清めるしかなかった。
 なので、温泉に浸かれる楽しみは嬉しかった。


 「ふんふ~……ん?」


 ご機嫌だったアイトは、1人で歩くシアを見かけた。
 どことなく淋しそうな雰囲気で歩くシアが気になり、アイトは後を追う。


 「シア……?」


 シアはガロンの家の裏に回り、家の裏にある木の裏にコロンと寝転んだ。
 そのまま目を閉じ、静かに寝息を立てる。
 アイトはそっと近づき、気配を殺して傍に座る。


 「………とーさま」


 淋しいのか、会いたいのか、ポロリと零れた本音と涙。
 シアはこの村に来て1周間。7歳の少女が1人で親元を離れ、話し相手もいない。
 アイトはそっと頭をなでる。たとえ噛みつかれてもいい覚悟で。


 「きゅぅん……」
 「よしよし……」


 ミコトやライラとは違う髪質。
 サラサラではなく、フワフワとした柔らかさ。


 「………っ!! がぅぅっ!? な、なんだお前っ!!」
 「あ、悪い……」


 ハッと目覚めたシアが、アイトを見て威嚇する。


 「なんだお前、あたいに何の用だっ!!」
 「落ち着けよ。ほら、アメやるよ」
 「がうぅぅぅっ!!」
 「い、っ!!」


 シアはアイトの指に噛みつく。
 アイトはライラとの出会いを思い出し、少しだけ苦笑した。


 「何もしないから、な? 落ち着け……」
 「がぅ、ぅ……」
 「ほら、チョコもあるぞ? クッキーも」
 「………」


 シアはアイトの指から口を離すと、おずおずとチョコに手を伸ばす。
 サッと奪うようにお菓子を取ると、モグモグと食べ始めた。


 「………」
 「うまいか?」
 「………ぅん」
 「そっか。まだ食べるか?」
 「………」


 シアは小さく頷き、アイトはポケットからお菓子を出す。
 こんな時のために、アイヒからたくさん貰っておいたのが役立った。




 シアは、黙ったままお菓子を食べ続けた。



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