神様のヒトミ

さとう

61・シア



 ラクシャーサは、小さな子供を抱いて現れた。


 「すまないね。たまたま近くに居たんで寄ってみたが、どうやら正解のようだ」
 「あ、いや、その……どど、どうぞ、中へ」
 「ははは、緊張しなくてもいい。友人に接するようにしてくれ」
 「い、いや。その」
 「頼む。オレはキミを友人だと思ってる」
 「……分かりました。出来るだけ頑張ります」


 アイトは家にラクシャーサを入れる。
 するとラクシャーサは、抱いていた子供を降ろした。


 「シア、ご挨拶は?」
 「………」
 「お、おはよう」


 無表情でアイトを見つめる、7歳くらいの少女。
 黒いショートカットに茶色の瞳、黒いしっぽに黒いオオカミ耳。


 「この子はオレの娘のシア。今日は町や集落の視察だけだし、連れてきたんだ」
 「娘さんですか、かわいいですね」
 「う~ん、少し無口でね。誰に似たんだか……」


 シアはアイトをじっと見つめる。
 アイトはどうしようか悩み、頭を撫でようと手を伸ばす。


 「がぅっ!!」
 「おぉっと!?」
 「こ、こらシア、やめなさい」


 アイトは噛まれそうになった。
 手を引っ込めたので噛まれなかったが、流石にアイトは驚いた。


 アイトはラクシャーサたちを椅子に座らせ、ミレイがお茶を出す。
 クナイはすでに仕事で、アイヒはまだ寝ていた。


 「あの、ラクシャーサさん。改めてありがとうございます。どうやら村のためにいろいろ手を回してもらってるようで」
 「構わない。むしろ当然だ、オレの領地にある村だしね」
 「………その、最初はこんな風になるとは思わなかったんですけど、けっこう楽しいです」
 「ははは、それは良かった。きっと国境警備軍のみんなも喜んでる」
 「……はい」


 すると、階段から唸り声が聞こえてきた。


 「がぅぅぅ~……」


 アイトとラクシャーサがそちらを見ると、ライラが犬歯を剝き出しにして威嚇をしてる。
 相手はやはり、シアだった。


 「ぐぅぅぅ~……!!」
 「がぅぅぅ~……!!」
 「シア、止めなさい」
 「ライラ、おいで」


 ライラはアイトに飛びつき、シアを露骨に威嚇した。
 シアもライラを睨み、犬歯を剝き出しにする。


 「アイト、あのオオカミきけん!!」
 「はぁ?」
 「なんか怖い、わたしやミコトと同じ!!」
 「お、おいライラ、落ち着けって。すみませんラクシャーサさん……」
 「……いや、いい。……同じ、まさか」


 ラクシャーサは、何かを考え込みライラを見る。
 アイトは、ここで『同じ』というのが気になった。


 「……まさか」




 ***********


 【シア】♀ 7歳 黒狼人


 ◎【異能アビリティ
 1・《魔狼転身マルコシアス・コンバージョン
  ○魔狼マルコシアスへ変身する


 ***********




 「……やっぱそうか」
 「アイトくん。もしかして……そちらのお嬢さんは、金犬人かい?」
 「そ、そうです」
 「ふむ。しかし何故ここへ?」
 「実は、シェスタ王国で酷い扱いを受けてたので、俺が引き取ったんです」
 「……そうか、しかし……まさか……」
 「あの、ラクシャーサさん?」


 ラクシャーサは何かを考え込むが、すぐに顔を上げる。
 さらに悪いタイミングで、ミコトが階段を降りてきた。


 「しゃぁぁぁっ!! オオカミがいる!!」
 「ぐぅぅぅ~っ!!」
 「がるるるっ!!」


 アイトの背中に飛びついたミコトは威嚇し、それにつられてライラとシアも威嚇する。
 ラクシャーサもアイトも子供たちをあやし、ラクシャーサは立ち上がった。


 「すまないね、今日は帰るよ」
 「す、すみません。コラお前達、いい加減にしろ」
 「しゃーっ!!」
 「がるるるっ!!」
 「シア、やめなさい」
 「ぐぅぅぅ~っ!!」


 威嚇はしてるが可愛らしく、あまり強く出れないアイトとラクシャーサ。
 シアを抱えたラクシャーサは、そのまま家を出た。
 アイトはミコト達を家に置き、外へ出る。


 「ほんと、すみませんラクシャーサさん。仲良くなれるかな~なんて思ったけど……」
 「仕方ないさ。【獣王種族】同士はあまり仲がよくない、キミのところの金犬人と銀猫人は例外みたいだけどね」
 「……じゅおう、しゅぞく?」
 「ああ、聞いたことがないのか。【獣王種族】は、魔帝族の中でも最強といわれる12の種族さ。【魔帝十二神将】は、全員がこの種族なのさ」
 「へぇ、初めて知りました」
 「まぁ人間には馴染みがない話だからね、しょうがない」


 ラクシャーサは微笑むと、シアの頭をなでる。
 シアは気持ちよさそうに目を細めると、「きゅぅん」と鳴いた。


 「アイトくん、ボルカニカに向かうなら、【火天アグニ】には気を付けろ。ヤツは人間嫌いで有名だ」
 「分かりました……」
 「では、また会おう」




 ラクシャーサは、静かな足取りで去って行った。




 ***********




 「2人とも、失礼だろ? ラクシャーサさんはただ様子を見に来ただけなのに」 
 「にゃぅぅ……」
 「くぅん……」


 アイトはミコトとライラを軽く叱り、出発の支度をする。
 すると、背伸びをしながらアイヒが降りてきた。


 「ふぁ……あれ、もう行くの?」
 「ああ。出発して数日で戻ってきたんだぜ、ちょっとのんびりしすぎなくらいだ」
 「そっか……」
 「で、お前は行くのか? 行かないなら置いてくぞ」
 「ちょ、行く行く、行くに決まってんでしょ!!」


 アイヒはバタバタ2階に戻り、支度を初めてマッハで降りてきた。


 「よし、ガトナ村までテレポーラで移動、そこから次の町を経由して〔灼熱王国ボルカニカ〕に行くぞ」
 「はーい」


 アイトはミコト達をなで回し、テレポクリスタルの傍へ行く。
 魔力を込めると一瞬の浮遊感、そしてガトナ村の入口まで転移した。


 「おお、すげぇ」
 「さすがアタシの魔術ね……」
 「自分で言うなよ」




 アイト達は、次の町に向けて歩き出した。



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