神様のヒトミ

さとう

60・移住



 アイトは別に、説得するつもりはなかった。
 アイトにとってリアン村は、帰る場所であり、無理をして発展させるつもりは微塵もない。
 精々、移住希望があれば適当に許可を出すだけ。


 「あ、あの、げほっ、今なんて?」
 「ですから、そちらのリアン村に、移住は可能でしょうか?」


 アイトは村長のラトブを見たが、特に表情は変わらなかった。
 すると驚きつつもアイヒが言う。


 「か、可能です。住居もありますし、畑もあります」
 「おお‼ ならば妻と共に移住してもよろしいでしょうか? 実は我が家の農地は粘土質で固く、あまり農業に向かないのです」


 反対する理由はないが、アイトは聞く。


 「で、でも、いいんですか? 村長の息子なら、いずれは村の村長になるんじゃ······」


 この意見には、ラトブが笑いながら言う。


 「ハッハッハ、人間の方にはわからないかと思われますが、ワシはこう見えて540歳なのです。あと800年は守護者を続けますぞ」
 「······」


 ケタ違いの数字に、アイトは黙ってしまった。


 「お願いしますアイト村長、ほんの200、いや100年ほどでいいので、移住の許可を」
 「えと、はい、どうぞ、100年でも200年でも」


 アイトとアイヒは頷くしかない。
 断る理由もないし、農業の手が増えるのはありがたい。


 「おぉ‼ ありがとうございます。では移住証明書を、あと、詳しい場所を教えて頂けますか」
 「あ、それならせっかくですし、下見に行かれますか?」
 「え?」


 アイヒはアイトを見る。


 
 「あぁ、テレポーラか」




 **********




 「おぉ······」
 「まぁ······」


 アイトとアイヒ、ラウルと奥さんのルエラは、テレポーラを使ってリアン村まで戻って来た。


 「ここ、ですか······ふぅむ。静かで、それでいて不思議な力が溢れているような······」
 「何だか落ち着きますね、それにキレイ······」


 ラウルとルエラは、村を見回している。
 するとガロンの家の裏から、ライラが現れた。


 「アイトーっ、やっぱりアイトだ。わう?」


 ライラは、ラウルとルエラを見て少し警戒した。


 「大丈夫だライラ、ほら、おいで」
 「くぅん······」
 「こんにちは、お嬢さん」
 「ふふ、かわいい」


 ルエラはライラを抱きしめ撫でる。
 するとライラは気持ち良さそうに鳴いた。


 「えーっと、どうしよう」
 「そうね······あ、丁度いいわ、ウルフィーナさんがいる」


 ギャング宅の裏から、ウルフィーナが出てきた。
 アイトたちを見て驚き、ラウルたちを見て納得したようだ。


 「アイト様、お疲れ様です。こちらは······」
 「同族の方ですね、ボクはラウル、こちらは妻のルエラです。ガトナ村から来た、移住希望なんですが」
 「なるほど、村を出て数日で移住希望者を見つけるとは、流石でございます、アイト様」
 「いやいや、あのー、案内を任せていいですか?」
 「もちろんです。それではこちらへ、物件を案内させて頂きます」


 ウルフィーナがラウルとルエラを連れて空き家を案内する。
 ライラはルエラを気に入ったのか、一緒に着いて行った。


 「アイト、ガロンさんの家に行くわよ。《テレポクリスタル》に転送履歴をインストールしなきゃ」
 「わかった······って、何それ?」
 「あ、説明してなかったわ」


 アイトが立ち寄った町や国は、アイトがテレポーラで移動出来るが、テレポクリスタルに転送履歴をインストールすることで、守護者であるアイトの許可で、誰でも転移が可能になる。


 「ってことね。ちなみに転移用のクリスタルを持っていればいいだけ、アンタみたいに身体にインストールする必要はないのよ」
 「······お前って、マジすげーな」




 アイトたちは、ガロンの家に向かった。




 **********




 ガロンの家の隅に、セーブポイントみたいな水晶が浮いていた。


 「お前、ロープレ愛好家だろ」
 「さ、さぁ、どうかしら······。いいから触りなさいよ、それだけで完了するから」


 アイトは水晶を触ると、一瞬だけ発光した。


 「はい完了。あとは誰でも転移できる、ガトナ村限定だけどね」
 「便利だなー」


 水晶を眺めていると、ギャングが入って来た。


 「アイト様、お疲れ様です。もう住人を連れて来るとは、流石ですな」
 「いやいや、あはは······」


 単なる偶然、とは言えなかった。


 「そうだ、いい知らせがございます」 
 「知らせ?」
 「はい。実はラクシャーサ様から、このリアン村まで通じる街道を整備するとの知らせがありました。国境からこの村、そしてガトナ村までの道を至急整備してくれるようです」
 「マジすか⁉ なんか悪いな······お礼とか言ったほうがいいっすかね?」
 「そうですね。ですが後日、開いた時間でよろしいかと」
 「あー……でも、〔灼熱王国ボルカニカ〕に向かうつもりだったし、いきなり方向転換すんのもなぁ」
 「ははは、我らの主は寛大なお方、そんなに急がなくても平気ですよ」


 ギャングが言うには、国境からリアン村、そしてガトナ村まで通じる街道は元から存在した。しかし、国境警備軍が集落として使うに当たり、一時的に封鎖したらしい。
 なので、整備と言っても看板を立てたり、簡単な整地をするだけのようだ。


 「それと、最低限必要な資材や施設も作るそうです。国境から入るとなると、このリアン村は中継地となります。なので、道具屋や薬屋、宿屋などを建設します」
 「はぁ……なんか大がかりになってきた」
 「はい。ですのでアイト様も、スカウトをお願いします。施設や村の拡張も、まだまだこれからですので」
 「……はぁ」




 アイトは、ため息をついた。




 ***********




 ラウルとルエナは村をたいそう気に入り、その日のうちに移住が決まった。
 空き家の一軒を自宅とし、家の裏手には畑、少し進んだ日当たりのいい地には田んぼを作る計画が早くも進行していた。


 ラウルとルエナに転移用のクリスタルを発行すると、2人はさっそくガトナ村とリアン村を往復する。
 ベッドやデーブルなどの家具はあったので、消耗品や衣服などを運び込む。


 アイト達も手伝い、夕食は村の全員で歓迎もこめて盛大にした。
 そして、驚いたのがルエラだった。


 「ルエラさん、すっごい料理上手なんすね」
 「ホント、おいしい~」


 アイトもアイヒもガツガツ食べる。
 ミコトやライラもいっぱい食べ、ウルフィーナやギャングも驚いていた。


 「うふふ、実は私のアビリティは《料理上手クックマスター》なの。食材を触るだけで、どんな料理を作れるか、すぐに頭に浮かぶのよ」
 「ははは、ボクの自慢の妻です」


 すると、クナイやミレイが言った。


 「ならば、せっかくですし料理店などを開業してみては?」
 「いいかも。私も手伝う」


 ウルフィーナも、ウンウン頷いてる。


 「ふむ、それはいいかも知れません。建築予定に料理店を追加しておきましょう。よろしいですか?」
 「あら、いいのかしら。実はやってみたかったのよね」
 「もちろんです。それに《料理上手クックマスター》は、私たち魔帝族からすればレアアビリティです。活かさなければ勿体ないですよ」




 こうして、宴は盛り上がりった。




 ***********




 夜。結局アイトとアイヒは家に泊まった。
 今日のアイトの相手はクナイ。


 「クナイ、大丈夫か?」
 「はい、まだいけます」


 2開戦が終わり、ベッドで小休止。
 村の状況や、クナイのことをアイトは聞いた。


 「私は、薬屋を始めます。ちょうどいいアビリティもありますし」
 「確か……《忍びの忍薬》だっけ」
 「はい。建設予定の中に、私の薬屋があります。ふふふ、この歳で一国の主です」
 「はは、お前なら出来るな。俺が保証する」
 「ありがとうございます、主殿」




 クナイと連戦し、眠り着いたのは深夜だった。




 ***********




 翌朝。朝食を食べ終わり、出発までのんびりしてる時だった。


 ドアが静かにノックされ、アイトは玄関まで進む。
 この時間帯なら、ウルフィーナたちが朝の挨拶に来たと、アイトは思っていた。


 「は~い、お待た……え」
 「やぁ、朝早くから済まないね。様子を見に来たんだ」




 そこに居たのは、【羅刹天ラクシャーサ】だった。





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