神様のヒトミ

さとう

59・見え過ぎ



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 《森羅万象しんらばんしょう大開眼だいかいがん
 ○見た物の情報を得ることが出来る
 ○究極開示(レベル2)
 ○自分より格下の動きを完全に読める


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 アイトは、究極開示のレベルをようやく理解した。


 「どうやら町や村の情報も見える。それに、移住を希望する住人が居るかどうかもな」
 「便利ね〜、それがあればスカウトなんて簡単じゃん」
 「いやいや見え過ぎだっての。逆にキモいぞ」


 戦闘形態の時はヒトミの色が変化するが、通常時には普通と変わらない。意思一つでアビリティを行使出来る。


 「ねぇ、アタシのアビリティも見えるの?」
 「まぁな。でも、なるべく見ないようにしてる。敵でもない限り、覧るのは悪いからな」
 「プライバシーの侵害ってヤツ?」
 「まーな。とにかく村へ行こうぜ」 
 「そうね。ウェルフィーナさんも言ってたけど、新しい村の守護者として、ちゃんと挨拶しなさいよね」
 「わーってるよ、じゃあ宿に行くか」




 アイトとアイヒは、村の入口に向かって歩き出した。




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 〔デズモンド地域〕は、13の地域に別れた大地で、12の地域を【魔帝十二神将まていじゅうにしんしょう】が守り、王を務める国家がある。
 最後の1つは、魔王と呼ばれる最強の魔帝族が収める、最重要国家【魔王都市サリヴァン】が存在する。


 アイトが受け継いだ領地は、【羅刹神ラクシャーサ】の管轄領地であり、アイトたちが向かったガトナ村も、ラクシャーサの管轄領地である。


 「さーて、守護者に挨拶に行こう」
 「場所は?」
 「ま、村人に聞けばわかるだろ」


 アイトたちは村を散歩するように歩く。


 典型的な農村といった感じで、人間であるアイトたちが居ても特に気にしたような雰囲気はない
 それどころか、人間も普通に居た。


 「やっぱり、魔帝族は悪だの何だの言ってるのは、デューク王国とその加盟国だけみたいね」  
 「うん、敵意さえ持たなきゃ村にも入れるしな」
 「争ってるのは大国だけで、小さな町や集落には関係ないみたい。むしろ、人間と魔帝族は手を取り合って生きてるわね」


 アイトは、リヤカーを引く人間男性に声を掛ける。


 「おう、旅人かい。なんか用か?」
 「はい。この村の守護者にご挨拶をしようと思って。どこに住んでるかご存知ですか?」
 「守護者······。あぁ村長か。この時間帯だと、息子夫婦の畑を手伝ってると思うよ」


 息子夫婦の畑の場所を教えてもらい、アイトたちは歩く。
 場所は村の奥から少し手前の、2階建ての建物の脇。


 「ねぇねぇ、道具屋があるよ」
 「ホントだ。っていうか薬はクナイがたくさん作ったのあるだろ?」
 「そうだけど、薬じゃなくてみんなのお土産を買わないと」
 「早くね? とりあえず後にしろ後に」
 「むぅ〜」


 むくれるアイヒと一緒に歩き、ようやく到着する。
 見た目は普通の木造住宅で、裏が畑になってるようだ。


 「村長の息子なら、挨拶した方がいいよな」
 「そーね」


 アイトはドアをノックした。


 「·········」
 「·········出ないわね」


 暫く待ってもう一度ノックする。


 「······うーん、いない」
 「どうする?······あれ?」


 アイヒが何かに気付き、耳を澄ませる。


 「家の裏から声が聞こえるわね······」
 「そういえば、畑を手伝ってるって言ってたな」


 2人は顔を見合わせると、裏手に回る。
 ここまで来たし、挨拶くらいはして行きたいらしい。




 すると、数人の男女の声が聞こえてきた。




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 「やれやれラウル、いい加減にせんか、その······、奇天烈な野菜作りを。もっと普通の野菜を······」
 「何言ってるんだよ父さん、今回のは自信作さ。それにボクが作るのは野菜じゃない。品種改良したコメさ」
 「全く、ただでさえ粘土質の土で育ちが悪いのに、こんな時間の掛かる······。コメ? に手を出す? 野菜なら手間は掛からんし、収穫も早いぞ?」


 まるでアイトたちが聞くのを待ち構えていたかのように、息子は自分語りを始めた。


 「前にも言ったけど、ボクは40年前に食べたコメに心打たれてね、商人を通じて苗を手に入れ、ここまで品種改良をして来たんだ。今更普通の野菜なんて作れないさ」
 「しかし、それでルエラを養って行けるのか? あんないい奥さんを」
 「当然さ。ボクのアビリティでポーションを作って薬屋に卸してる、それだけでも収入はある」
 「はぁ······」


 話しているのは、若い狼人と、年老いた狼人。
 夢を語る狼人の目は、キラキラ輝いていた。


 影で様子を見ていたアイトの目が、ジワリと疼く。


 「······まさか」


 アイトは、狼人を見た。




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 【ラウル】♂ 87歳 狼人


 ◎【異能アビリティ
 1・《品種改良》
  ○野菜果物などを組み合わせることが出来る
  ○交配(レベル2)


 2・《薬品生成》
  ○ポーション作成(成功率30%)


 ●移住意思アリ(要説得)


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 「······」
 「アイト、話終わったみたいだし、挨拶に行こ」
 「······わかった」


 アイトとミレイが前に出ると、狼人2人は驚いていた。


 「旅人、ですかな?」
 「は、はい。新しくリアン村の守護者になった、アイトです。よろしくお願いします」
 「······リアン、村? 長く生きとりますが、初めて聞きましたな」
 「えっと、実は出来たばかりなんです。名前を付けたのも最近で、国境近くにあります」
 「ふむ、なるほど」


 するとアイヒが、ポケットから丸い金属板を取り出した。
 それは装飾が施され、高級そうなケースにしまってある。


 「ラクシャーサ様より頂きました、領主の証明板です。ご確認を」
 「······おぉ、確かに。いやいや失礼しました、私はこのガトナ村の守護者、ラトブです」


 アイトとラトブはガッチリと握手する。
 すると、ラウルが手を差し出してきた。


 「初めましてアイト村長、ボクはラトブの息子でラウルと申します」
 「初めまして、よろしくお願いします」


 アイトとラウルは握手をすると、アイヒとも握手する。
 ラウルは、品種改良や薬品生成などのアビリティからして科学者かと思いきや、かなり鍛えられた肉体をしていた。


 「ささ、中でお茶でも」
 「いえいえ、お構いなく」


 そう言いつつ家の中へ入り、お茶を頂くアイトたち。
 すると1人の女性がトレイを持ってきた。


 「粗茶ですが」
 「どうも」 


 柔らかい笑顔の狼人の女性だった。
 間違いなく、ラウルの奥さんだろう。


 「彼女はボクの妻でルエラと言います、所でアイト村長、お聞きしてもよろしいでしょうか?」
 「はい、何でしょう?」


 アイトは粗茶を啜りながら聞く。




 「そちらの村へ、移住は可能でしょうか?」




 アイトはお茶を吹き出した。



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