神様のヒトミ

さとう

56・つながり



 「さてアイト、コレを渡しておくわ」


 ウルフィーナたちが出て行った3日後、ミコトと遊んでいたアイトはアイヒの手にあるガラス玉を見た。


 「なにこれ?」
 「ふっふっふ、ついに完成したのよ!! これが転移魔法、その名も《立ち寄っ転移テレポーラ》よ!!」
 「にゃぉぉー」


 アイトは暖炉の近くで、ミコトのネコ耳を弄って遊んでいた。
 ミコトが気持ちよさそうに鳴くので、ついつい長く弄っていたのだ。


 「ふ~ん、どう見てもガラス玉にしか見えないけど……」
 「アイト、上を見て」
 「上?……。んごっ!?」


 アイトが上を見た瞬間、ガラス玉が口の中に入れられ、そのまま飲み込んでしまった。


 「んげぇ!? 何しやがんだ!!」
 「はい、これでインストール完了。アンタの魔力で自由に転移が使えるわ。それと、一度立ち寄った町にも行けるから、かなり便利よ?」
 「お前な、便利だけど一言言えよ!!」
 「はいはい、悪かったわね」


 アイヒは全く悪びれず、丸くなりゴロゴロ言ってるミコトを一撫でする。
 さらに、タイミングを計ったかのように、ライラ達が帰ってきた。


 「ただいま戻りました、主殿」
 「ただいま」
 「ただいまー。あ、わたしもなでてー」


 ライラは撫でられてるミコトを見ると、すぐにアイトの元へ。
 ミコトにじゃれつくように転がると、尻尾をパタパタさせた。


 「よしよし、カワイイなぁ」
 「わぉん、くぅん……」


 アイトの傍にクナイが跪くと、集落の様子を話してくれた。


 「主殿。集落の件数は12軒、そのうち2軒は焼け落ち、残りの10軒は清掃すればそのまま使えます。住民の私物などは如何致しましょう?」
 「捨てるのは絶対ダメだ。家の一軒を倉庫代わりにして、各家ごとに私物を分けて保存する。ウルフィーナさんたちが帰ってきたら、作業しよう」
 「は、では私たちで出来るところから始めたいと思います」
 「ああ、俺も手伝う」


 するとアイヒが言う。


 「その前にアイト、テレポーラのテストをしてよ!!」
 「あ、そうか」
 「それに、最初に向かう国は決めたの?」
 「ああ、もちろん」


 この3日間、アイトはいろいろ考えていた。
 パーティーメンバーと、3つの国に向かう順番。


 〔水上王国ヴェーリャ〕
 〔風の王国アディーヤ〕
 〔灼熱王国ボルカニカ〕


 そこへ向かうのは、2人から3人。
 水上王国ヴェーリャは、ミコトは固定。
 風の王国アディーヤは、ライラは固定。


 「なんかRPGみたいだな……」




 いろいろ考えた結果、アイトはみんなに意見を聞くことにした。




 ***********




 その日の夕食、メニューはパンと野菜炒め。
 ガロンの畑の野菜は全滅していたので、手持ちの食材を使う。




 「まず最初に〔灼熱王国ボルカニカ〕に向かう。メンバーは、アイヒと俺だ」
 「え、2人で? しかもアタシ?」
 「ああ。ミコトは帰ってきたばかりだし、ライラはミコトの傍に居て欲しい。クナイはウルフィーナさんたちと集落のことを纏めておいて、ミレイはクナイのサポートだ」
 「なるほどね、じゃあアタシがあんたのサポートか」
 「ああ、ちなみに俺はお前のサポートでもある」


 食事しながら喋ったが、特に反対はなかった。
 強いて言えば、夜の相手が出来ないとミレイが愚痴をこぼした程度だったので、メンバー自体に不満はないようだ。


 「……」
 「どうしたアイヒ?」
 「なな、何でもない……」


 アイヒが顔を赤らめたが、何かを言うワケではなかった。


 食事が終わり一服していると、ドアがノックされる。


 「夜分に申し訳ありません、ウルフィーナです」
 「あ、どうぞどうぞ。お疲れ様です」


 ウルフィーナたちが家に入り、お茶を煎れる。


 「移住の準備が整いましたので戻って参りました。何かお変わりはありませんでしたか?」
 「いえ特に、そうだ、家はこの隣でもいいですか? 掃除はしたんで綺麗になってます」
 「ありがとうございます。夫婦で使わせて頂きます」


 元は話好きの羊人、ウールの家だ。
 きっとウールも許してくれるだろうと、アイトは思った。


 「では、集落の運営について……まずは水や食料の確保です。幸いこちらには井戸があり、食料も自給自足でまかなえるようですね」
 「はい。でも畑はほぼ全滅、食料は数ヶ月は保ちますけど、それ以降は狩りをするしかないですね」
 「ご安心下さい。私どもも食料を持参し、野菜や果物の種や苗をお持ちしました」
 「わぉ、でも人手がねぇ……アタシ、力仕事は苦手かも……」
 「そうですね。そこでアイト様の出番です」
 「お、俺? 力仕事はいいけど、流石に1人じゃ……」
 「いえ、そうではありません。これから魔帝族の村や町を巡る際に、移住を希望する魔帝族などをスカウトして頂きたいのです。出来れば最初は畑作業が得意な「力」系の魔帝族を」
 「す、スカウトって……、そんなゲームみたいに行くのかね……?」
 「そこは運ですが、魔帝族は殆どが長命種、1カ所に長く留まる者もいれば、刺激を求めて移住先を転々とする者も多くいます。可能性は十分にあるでしょう」


 アイトは、益々ゲームじみて来た、と思った。


 「最初は〔灼熱王国ボルカニカ〕に行くけど」
 「なるほど。あそこは鍛冶が盛んな王国、鍛冶職人や大工などが多く居ます。スカウトには絶好のチャンスですね」
 「でも、俺は人間ですよ? 大丈夫ですかね……?」
 「そこは運です」
 「運かよ!?」


 アイトがツッコむと、横からアイヒが言う。


 「アイト、テレポーラの魔術はアンタが触れた物も転送できる。大人数だったら全員に手を繋がせて1人に触れれば、全員を転移できるわ」
 「いやゲームかよ? いいけどさ」


 アイトは少し疲れてきた。
 すると、黙っていたギャングが言う。


 「まずは私の方で畑を手入れしてみます。他の方は住居の手入れをお願いします」
 「わかった、なんか楽しくなってきたね」
 「ミレイ……、はぁ、まぁいっか」


 話し合いは複雑になり、明日出発するアイトとアイヒは部屋に戻る。
 魔導車は置いていき、徒歩で進むので、体力を温存する。
 アイトがアイヒを抱えて『雷駆ライク』を使えば近隣の村や町には直ぐに着く。
 途中の村や町でスカウトしつつ、急がずに進む事になった。




 いつの間にか、ミコトとライラは暖炉の前で眠っていた。




 ***********


 
 翌朝。みんなに見送られながら家の前に出た。


 「ではお気を付けて。スカウトをよろしくお願いします」
 「あんま期待しないでくれ……、マジで」
 「主殿、お気を付けて。アイヒ、主殿をお願いします」
 「おっけ、任せて」


 アイトの近くに、ミコトとライラが来た。


 「アイト、はやく帰ってきて」
 「わふ、一緒に遊ぶ」
 「はいはい、お土産買ってくるからな」
 「にゃぅぅ」
 「くぅん」


 頭を撫でるのはお決まりとなり、蕩けるように鳴く。
 アイヒも撫でまくり、最後はミレイに向く。


 「アイヒ、アイトを満足させてね」
 「ななな、なに言ってんのよ!?」
 「素直になって」


 アイトは何を言ってるのかわかったが、ここで指摘はしない。


 「アイト、気を付けて」
 「ああ。淋しくなったら帰ってくるかも」
 「だめ、アイヒにしてもらって」
 「あ、いや……」


 アイトは苦笑する。
 そして、出発の時が来た。


 「よし、行くか」
 「うん」


 アイヒと一緒に旅立つ。
 これから様々な出会いの予感が、アイトにはわかった。
 歩き出した2人の背後から、ミレイが思いだしたかのように聞く。


 「アイト、聞き忘れた」
 「え?」


 アイトは振り向き、ミレイに向き直る。




 「この集落、なんて名前なの?」




 アイトは少し考え、思う。
 アイトにとって始まりの集落、開眼した場所。
 思い出の集落であり、旅立ちの場所。
 全てが1本に繋がる村。そして帰るべき場所。


 「そうだな……〔リアンつながり〕の村なんてどうだ?」
 「へぇ、いいじゃん」
 「リアンの村……。わかった」


 アイト達の新たな故郷、〔リアンつながり〕の村。
 名前を付けた瞬間、アイトの右目がじわりと疼いた。


 「……え、ウソだろ」




 ***********


 1・《森羅万象しんらばんしょう大開眼だいかいがん
  ○見たモノの情報を見ることが出来る
  ○究極開示(レベル2) LEVELup!!
  ○格下の動きを完全に見切る


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 アイトの目には、新たな情報が映る。


 「アイト?」
 「あはは……そう来たか」




 アイトは、思わず笑ってしまった。








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 【リアンの村】 LEVEL1


 ○〔住人〕 8名
 ○〔家屋〕 10軒
 ○〔商店〕 なし


 以下項目・未解放


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