神様のヒトミ

さとう

51・ハジの村



 「主殿、朝でございます」
 「………んん」


 アイトは、差し込み始めた朝日に目をくらませ起きる。
 身体を起こし、アイトを揺すったのはクナイ。
 アイトの視線は豊かな乳房で、アイトを揺するたびプルプル揺れる。


 「……おはよ、クナイ」
 「おはようございます主殿。素晴らしい朝日でございますね、心と体が洗われるようです」
 「ん……。朝からテンション高いな……」
 「はい。主殿もご立派で……」
 「いや、生理現象だ。気にするな」
 「そうですが、お辛いようなので、ここは私が……」
 「あ、ちょ……」


 クナイを抱いたアイトは、罪悪感もあったが性欲に負け、ガッツリと運動した。
 途中から開き直り、求められるままアイトも求めた。




 朝食まで、まだまだ時間はありそうだ。




 **********




 「にゃあ、どう?」
 「かわいい。じゃあこっちは?」


 ミコトとライラは、お互いの髪をいじって遊んでいた。
 ハジの村まであと少し。魔導車内では出来ることが限られているので、お互いを知るためにコミュニケーションを取り合っていた。


 「ミコトのしっぽはさーらさら」
 「ライラのしっぽはふーわふわ」
 「あ、そうだ。ちょっと待って」
 「にゃ?」


 ライラは小物入れを漁ると、青いリボンを取り出した。


 「こうして、こうして……。できた!!」
 「にゃおぉー!!」


 ライラは、ミコトのしっぽにリボンを結んだ。
 リボン結びで尻尾の先端に結ばれ、まるで青い蝶が飛んでいるようだった。


 「アイトアイト、見て見て!!」
 「おお、かわいいな」
 「ホントね、かわいいわぁ……」
 「にゃうぅ!?」


 アイヒはミコトを抱きしめ、頬ずりを始める。
 ミコトは嫌そうな声を出したが、力では敵わなくされるがままだ。


 「おいアイヒ、ミコトが嫌がってるだろ」
 「そんなことないもんねー、ミコちゃん」
 「はーなーせー!!」
 「嫌がってんじゃん……」


 アイヒの顔を手で押しのけ、ようやく距離を取ると、アイトの後ろへ。
 アイトの背中によじ登り、フーフー威嚇した。


 「あん、もうミコちゃん……」
 「しゃーっ!!」
 「おいアイヒ、可愛がるのはいいけど、あんま構うと嫌われるぞ」
 「うぅぅ……、そんなぁ」


 アイヒは昔からの猫好きで、そのことを知ってるアイトは忠告した。
 いつの間にか、気まずさは消えていた。


 「全く。お前さ、ウチの猫にも嫌われてたよな」
 「そ、そんなことないし!!」
 「そうかぁ? お前が遊びに来るたびに、うちの猫は外に逃げ出してたぞ?」
 「そ、そんなバカな……」


 何気ない会話が続き、ライラがアイトの傍に来た。


 「アイト、なんかヘンなニオイがする」
 「ん? ニオイ?……そうか?」
 「アタシは感じないけど?」
 「……うーん、あたしも。……あれ、なんか聞こえる?」


 ミコトは耳をピクピクさせ、ライラはくんくんニオイを嗅ぐ。
 アイトとアイヒは顔を見合わせると、魔導車が急ブレーキをかけた。


 「主殿!! 魔獣です!!」
 「でっかいゴリラ。マッドコングだね」


 運転席と助手席にいたクナイとミレイが言う。
 アイトは運転席から前を見ると、マッドコングが街道沿いにいた。


 「ライラ、もしかしてアイツのニオイがわかったのか?」
 「うん。なんかケモノのニオイがした」
 「あたしもあいつがウホウホ言ってるの聞こえたー」


 犬の嗅覚と、猫の聴力だろうか。
 アイトは二人の頭を撫でると、外に出るためドアをつかむ。


 「主殿、お手伝いを」
 「いや、俺だけでいいよ。なるべく痛めにように倒して、村へのお土産にしよう」




 アイトはウキウキしながらドアを開けた。




 **********




 「お、こっち見た」


 ドアを開け前に出ると、マッドコングがアイトを捉えた。
 アイトは右手の〔カティルブレード〕を展開し、『雷駆ライク』を纏う。


 「悪いねぇ、お前は村の食糧だ……『疾風刃雷しっぷうじんらい』」


 アイトはニヤリと笑い、全力でダッシュした。
 街道なので一直線の道。ブレーキや障害物を考えないダッシュは超スピード。
 普通の人間では視認すら出来ない速度でマッドコングの脇を通過。
 その際、右手のブレードで首を深く切りつけた。


 『グォ?』


 マッドコングは何が起きたかも分からぬまま、噴水のように首から血が噴き出す。
 そのまま白目をむくと、静かに倒れた。


 「ふぅ、コイツの課題はブレーキかな」


 アイトが振り向くと、魔導車がかなり遠くに見える。
 地面は10メートル以上えぐれ、その速度の恐ろしさを物語っていた。




 アイトはマッドコングを回収するため、慌てて引き返した。




 **********




 魔導車は順調に進み、ようやくハジの村が見えてきた。


 「ねぇ、アシュロンさんたちいるんだよね」
 「うん、そう言ってた」
 「う~ん、あんな別れをした後じゃ会いにくいわね……」
 「そう? 私は会いたい」
 「あ、アタシだって会いたいし!! ちょっと恥ずかしいだけだし!!」
 「おいアイヒ、何をムキになってるんだよ」
 「うっさい!!」
 「皆様、まもなく村へ入ります」


 クナイの運転する魔導車は、特に検問もなく村へ入る。
 すると、入口近くに大型の魔導車が停められていた。


 「あれって、施設を脱出するのに使った護送車だよな」
 「うん。よかった……、無事に着いたんだ」


 村を進むと、あちこちで建設中の家を見かけ、さらに炊き出し会場を見つけた。
 どうやら山から資材を切り出し、村の拡張をしているみたいだった。


 「一気に400人も増えるのか……」
 「いえ、デズモンド地域へ帰る魔帝族も居るでしょう」


 クナイの運転はスムーズに進み、1軒の家の前に停まる。


 「主殿、ドグ様の家に着きました」
 「ああ。ミコト、ライラ、起きろー」


 ベッドに丸くなってるミコト達を起こすと、眠そうに目を擦る。
 ライラはイヌのように背を伸ばし、ミコトはネコみたいに毛繕いをした。


 「にゃぁ~……。ここドコ?」
 「ハジの村だ。ここで少しお話したら、集落へ行くぞ」
 「にゃう、おとーさん……」
 「ミコト、外に行こ。わんわん」


 アイトたちは外へ出る準備をすると、ライラがミコトを引っ張るのが見える。
 どうやらミコトが悲しそうにしてるので、放っておけないようだ。


 「ミコト、ライラ、ドグさんはお前達の事も知ってるはず。ちゃんと話を聞けよ」
 「にゃーお」
 「わんわん」


 アイトは2人に上着を着せると、魔導車から降りる。


 「よし、行こう」
 「は、主殿」
 「うん」
 「りょーかい」
 「にゃーう」
 「わおーん」


 アイトたち6人は、ドグの家に向かった。
 ドグの家は変わっておらず、それほど日数が経過してないのに、アイトは懐かしさを覚える。


 アイトはドアをノックし、ドアノブに手を掛けた。






 「……ッ!!!」






 中に、恐るべきナニかがいた。
 アイトの全身が冷たい汗を吐き出し、身体がゾクリと震える。


 ドア一枚の向こうからナニか来る。
 アイトは無意識に拳を構えた。


 「離れろッ!!」


 アイトの叫びに全員が驚き、ドアが開く。


 「【打轟だごう】!!」


 アイトの一撃は、魔闘気を纏った突き。
 基本技の1つで、最も速い速度で放てる突き。
 しかし。


 「な……」
 「落ち着け、敵意はない」




 アイトの拳は、あっさりと掴まれた。




 ***********




 「すまなかった、なかなかの手練れの気配を感じたんでな、少しだけ威嚇した」
 「………」


 それは、人間に近い魔帝族の男性だった。
 年齢は20代半ばほどで、漆黒の髪と瞳、犬のような尻尾と耳が見える。
 顔はかなりの美形だが、額から右目に掛けて、引っ掻いたような傷が3本走っていた。


 アイトはツバを飲み込み、男性を睨む。
 男性は優しげに微笑み、アイトの視線を困ったように受け止めた。


 「キミは、……そうか、報告にあった【救世主】か」
 「……え」
 「なるほど、キミがガロンの言っていた継承者か」


 男性は微笑み、優しく微笑んで自己紹介をする。




 「オレは【羅刹天らせつてんラクシャーサ】だ。【魔帝十二神将】の1人にして、この地を守護する魔帝族幹部さ」




 いきなりの幹部登場に、アイト達は面食らっていた。





「神様のヒトミ」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く