神様のヒトミ

さとう

49・初夜



 シェスタ王国を出発した日の夜、アイトたちは野営をするために準備を始めた。


 魔導車には4人は泊まれるので、後の2人は外でテントで寝る。
 アイトは当然ながら外で、残りの1人で少し揉めた。


 「私が一緒、これは決定事項」
 「いえ、主殿は私がお守りします。外は危険がありますので、主殿の隠密である私がおそばに」
 「あのねー、……はぁ、ねぇアイト、アンタが決めてよ」
 「え」


 アイトは黙々とテントを組み立てていたが、アイヒのジト目で動きを止める。
 ちなみにミコトはまだ眠り、ライラもいつの間にかミコトの隣で寝てしまった。


 「あー、……いや、うん」
 「全く、食事の準備もあるんだし、さっさと決めなさいよ」
 「私」
 「いえ、私が」


 両者全く譲らず、時間だけが過ぎていく。
 この間、アイトはテントを組み立て、アイヒは調理器具を外に出し簡易テーブルで野菜を切り始める。
 ミレイは頬をぷっくり膨らませているが、クナイはにっこり笑っている。
 アイトは渋い表情を作り、究極の解決策を思いついた。


 「あ、いいこと考えた」
 「なに? 全く、アンタのことで揉めてるんだから、早くしなさいよ」
 「す、すまん。でもコレで決まる」


 アイトは枝を2本拾い、内1本に印を付けた。


 「ミレイ、クナイ、くじで決めろ。マークがある枝が、残念ながら俺と一緒だ」
 「ほう、面白い」
 「やる」


 バチバチと火花を散らし、2人が同時に枝を掴む。


 「いいか、文句はなしだ」
 「うん」
 「はい」
 「よーし。……いけっ!!」


 そして、2人が枝を引く。


 「……!!」
 「あぁっ!?」


 その結果。ミレイが印あり、クナイが印なし。


 「よし、今日はミレイだな」
 「うん。……やった」
 「くっ、負けは負けです。認めます……」
 「よーし、じゃあ夕食の準備だ。アイヒを手伝って……」


 
 「しゃぁぁ!!」
 「がるるっ!!」




 ドアの開いた車内から、ミコトとライラの声が聞こえた。




 ***********




 アイトは急ぎ車内へ戻ると、ミコトとライラが取っ組み合いをしていた。
 狭い車内をゴロゴロ転がり、涙目で掴み合いをしてる。


 「こら、何してるんだ!!」
 「にゃぅぅ、あいとーっ!!」
 「くぅぅん、あいとーっ!!」


 するとお互いが離れ、アイトに飛びついてくる。
 ミコトは背中に張り付き、ライラは胸に縋り付く。


 「全く、何してるんだよ……」
 「あのねあのね、コイツがあたしのしっぽに噛みついたの!!」
 「そっちが先にしっぽでわたしを叩いた!!」
 「うっさい!! そもそも何であたしの隣で寝るのよこのイヌっころ!!」
 「がるるるっ!! どこで寝ようがわたしの勝手よこのノラネコ!!」
 「しゃーっ!!」
 「ぐるるっ!!」


 アイトを挟みケンカする犬猫に、アイトは大声で怒鳴る。


 「いい加減にしろっ!!」
 「にゃうっ」
 「わふぅっ」


 アイトはミコトを降ろし、ライラを突き放す。


 「全く。ケンカするなとは言わないけど、今の話を聞くとどっちもどっちだ。お互いちゃんと謝れ」
 「にゃぁぁ、でも……」
 「ミコト」
 「わぅぅん、アイト……」
 「ライラ」


 アイトは、2人の頭に手を置いてなでる。


 「ちゃんとお互い謝ったら、ご飯にしよう。な?」


 アイトが微笑みかけると、2人はお互い向き合う


 「……ごめん」
 「……わたしも、ごめんなさい」


 2人の尻尾と耳は項垂れ、顔も伏せられてる。
 どうやら反省したらしく、シュンとしていた。


 「よし、ご飯にしよう。ミコトもライラも腹減っただろ?」
 「うん!! 今日のご飯は?」 
 「今日は鍋だ。みんなで旅をする初日の夜だし、お祝いも兼ねてな」
 「わっふぅ!!」




 2人はその場でジャンプし、喜びを露わにした。




 ***********




 「子守り、ご苦労さま」
 「子守り?……そう見えるか?」
 「うん、バッチリ」


 ミコトを背中に張り付けライラと手を繋ぐアイトは、アイヒとミレイには子守りに見えるらしく、温かい目で見られていた。
 クナイが簡易テーブルに魔道具のコンロを敷き、アイヒが作った肉野菜がたっぷりの鍋を移す。
 魔導車の光で周囲を照らすと、とても明るかった。


 「いい匂い……、こりゃ魔獣が寄ってくるな」
 「大丈夫、私の結界があるから平気」
 「ミレイの結界は凄いのよ? ダンジョン実習で使ったら、A級魔獣ですら寄せ付けなかったんだから」
 「へぇ。……だ、ダンジョン実習?」


 気になる単語はあったが、ミコトとライラが鍋を見て尻尾を振っていた。
 アイトたちは席に着き、クナイが炊いた米を貰う。


 「鍋と米、やっぱコレだな」
 「アタシは鍋は単品で食べるけど、久し振りのお米はうれしいわ」
 「私も」
 「おかわりもありますので、遠慮なく」
 「にゃあ!! いただきまーす!!」
 「わん!! いただきまーす!!」


 ミコトとライラに鍋をよそってやり、アイトたちは鍋を満喫する。
 野菜が豊富で、醤油ベースのスープと合い、もちろん最後はおじやを作った。


 魔術で汚れをキレイにし、テーブルや食器を片づける。
 魔導車に戻りリラックスし、ミコトとライラにこれからの旅の説明をする。


 ミコトには集落に戻り、そこからデズモンド地域へ向かうと伝えた。
 アイトは、そこでガロンの手紙を渡すことに決めている。


 「おとーさん……」
 「わふぅ……」


 ミコトが沈み、そのまま簡易ベッドに潜り込むと、ライラも一緒に潜り込んだ。


 「どうしたの……?」
 「わふ、淋しそうだから、だっこする」
 「だっこ?」
 「うん。わたしも淋しかったけど、アイトがだっこしたら元気になった」
 「にゃう。……ありがと」
 「うん、しっぽ……、ごめんね」
 「いい、あとミコトって呼んで」
 「うん。わたしはライラ、ありがとミコト」
 「うん。ありがとライラ」


 ベッドからそんな声が聞こえると、すぐに寝息が聞こえ始める。
 アイトたちは顔を見合わせると、優しく微笑んだ。




 アイトとミレイは外に出て、自分たちのテントに入った。




 ***********




 テントには毛布が2枚敷かれ、アイトとミレイは横になった。
 服装は薄手のシャツとズボンで、装備は近くに置いてある。


 アイトは、今更気が付いた。
 ミレイとの距離が、恐ろしく近いことに。


 「………」


 ザワリと、身体が震える。
 アイトと同じテントの争いと、その後に起きたミコトとライラのケンカで、一緒に寝るという事をアイトはすっかり忘れていた。


 「アイト、起きてる?」
 「うひゅっ!?」


 アイトはヘンな声が出たことを恥じ、背中合わせでミレイに答えた。


 「お、起きてる……」
 「よかった、ちょっとお話していい?」
 「な、なんでしょう……?」


 ミレイが寝返りをしてアイトの方に向く。


 「アイトには話しておきたいの、私のお兄ちゃんのこと」
 「……お兄ちゃん?」
 「うん」


 そしてミレイは話した。
 高校入学前に、ミレイの兄が死んだこと、アイトがミレイの兄に似ていること、だからアイトが気になったが、今ではもう関係ないこと


 「アイトをお兄ちゃんに重ねたけど、今は違う。アイトはアイト、お兄ちゃんはお兄ちゃん。離れて探して、ようやく会えて······やっぱり私は、アイトが好きみたい」
 「ミレイ……」
 「アイト……」
 「み、みれい……!?」


 ミレイは、アイトの背中に抱きつく。
 アイトの背中に柔らかい膨らみが2つ潰れ、アイトの理性を溶かしていく。


 「だ、だめだよミレイ。……俺、このままじゃ」
 「アイト、こっちを見て」
 「……え」
 「こっち、おねがい」


 アイトはゆっくり振り向くと、ミレイの顔が近くにあった。
 アイトの下半身は、既に硬くなっている。


 「アイト、好き……」
 「みれ、……ん」


 唇が重なり、それが合図となる。
 アイトの手がミレイの乳房を掴み、口の中に舌が侵入する。
 シャツに手を掛け、ミレイのシャツを一気に捲る。


 「おぉ……」
 「……ぅぅ」


 露わになった上半身に、アイトは最後の糸が切れる音を聞いた。
 自身も服を脱ぎ、気が付くとミレイはアイトを受け入れる。




 こうして2人は初めての夜を迎え、男女の仲となった。





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