神様のヒトミ

さとう

44・レジスタンス(2)



 牛人のブルホーンに案内された部屋は広く、真ん中にテーブルと何枚もの羊皮紙が置いてあった。
 木の棚には大量の酒瓶がストックしてあり、空瓶は地面に転がっている。
 部屋の中には、人間に近い魔帝族の女性がいた。


 「それにしてもアシュロンよぉ、いつから子守を始めたんだ?」
 「オレの依頼主とパートナーだ。失礼な口を聞くな」
 「おっと、悪い悪い」


 ブルホーンは棚から酒瓶とグラスを取り出し、アシュロンへ酒を注ぐ。


 「おいチータ、ジュースはないのか?」
 「ありますよ。アプジュースですが」
 「それでいい、嬢ちゃんたちにくれてやりな」


 チータと呼ばれた豹人の女性は、棚から瓶を取り出し木のコップに注ぐと、アイヒたちに渡した。


 「どうぞ」
 「あ、ありがとうございます」
 「ありがと」
 「悪いわね」


 ブルホーンがグラスを掲げ一言


 「再開を祝して」


 全員がグラスとコップを掲げ、アシュロンとブルホーンは酒を飲み干した。


 「さて、早速だが頼みがある」
 「お前、相変わらずだな。少しは······あぁもういい、オレたちも時間がないしな」
 「そうか、なら手短に話そう。お前のツテを使って、とある人物を探して欲しい」
 「ほぅ、誰だ? 人間の情報屋じゃ手に負えないから来たんだろ? 興味あるぜ」
 「ああ。探して欲しいのは【救世主】だ」
 「やっぱそうか······」


 事情を聞き、ブルホーンは腕を組む。


 「いいぜ、協力してやる。その代わりこっちも頼みがある」
 「頼み?」
 「ああ。アシュロン個人に頼みたいんだが······」
 「悪いな、オレは今雇われてる最中だ。傭兵の決まりとして、依頼の掛け持ちは出来ん」
 「硬い野郎だな。なら、依頼主の嬢ちゃんに頼めばいいんだな?」
 「それなら問題ないが、何のつもりだ?」
 「急ぎの用が出来たんだ。なぁ嬢ちゃん、聞いてくれ」
 「は、はい」


 ブルホーンは、ここでアイヒとミレイを見た。
 顔は完全に牛で、鼻には鼻輪も付いているブルホーンの顔。


 魔帝族の中でも魔獣寄りの姿は、それだけ強力なアビリティを備えていることが多い。
 ブルホーンは、間違いなく強者だった。


 「オレたちのことはアシュロンから聞いてるだろうが、実は今日、とんでもない情報が入った」
 「とんでもない情報?」
 「ああ。明日の夜、収容施設の魔帝族の首輪が全て外れる、レジスタンスを率いて救出するならチャンスだってな」
 「ブルホーン、お前、それを信じるのか?」
 「あぁ、その情報提供者は、施設に侵入してウチのカミさんの伝言を預かってきた。もちろん最初は信用しなかったが、オレがカミさんに送ったプロポーズの言葉をそっくり朗読しやがった。こりゃ信用するしかねぇと思ったよ」
 「それで、ウチらへの頼みってまさか······」
 「ああ、明日の夜、オレたちは救出作戦を決行する。そこでアシュロン、お前に手を貸して欲しい」
 「······ふむ、どうする?」


 アシュロンは、依頼主であるミレイを見る。
 当然ながら、ミレイは迷わなかった。


 「助ける、私も戦う」
 「ちょ、ミレイ······あぁもう、アタシも行くしかないか」
 「もう、ウチを忘れないでよね」
 「だ、そうだ。ブルホーン」


 女子3人は、やる気になっていた。


 「がっはっは‼ 決まりだなアシュロン、依頼料と情報料はこれでトントンだな」
 「そうだな、だが助けた後はどうする?」
 「もちろんアテはある。救出が済んだら護送用の大型魔導車をパクってハジの村へ行く。あそこならデューク王国は手が出せねぇだろうしな」


 こうして打ち合わせをし、アイヒたちは宿へ行くことに。


 「皆様の宿はこちらで手配させて頂きました。場所は中央区の〔ホテルシェスタ〕です」


 チータが事務的に告げ、アイヒたちは部屋を出る。
 すると背後でブルホーンが言った。


 「ちょっと待て、気分もいいし教えてやるよ」


 ブルホーンの視線は、ミレイとアイヒ。


  
 「オレたちの情報提供者、······黒髪黒目の女だったぜ」




 2人の少女は、顔を見合わせた。




 **********




 宿屋に入ったアイヒたちは、部屋で寛いでいた。


 「ねぇミレイ、誰だと思う?」
 「······わかんない」


 黒髪黒目の女。
 間違いなく【救世主】であり、もしかしたらアイヒたちを連れ戻しに来たのかもしれない。


 「用心しておこう、もしかしたら明日、収容施設に来るかも」
 「うん」
 「ミレイ、人間相手でも戦える?」
 「うん平気。奴隷なんておかしい、人間も魔帝族も、私から見れば同じ」
 「アタシも同じ。だから明日は頑張ろう」


 すると、お風呂場からルシェラが現れた。


 「あー気持ち良かった〜。2人も入れば?」
 「はい。ミレイ、先に入る?」
 「うぅん、一緒に入ろ?」
 「え、う、うん。いいけど」
 「ふふ、アナタたちってホントに仲いいわね」




 2人は仲良くお風呂場へ向かった。




 **********




 翌日の夕方、アイヒたちはレジスタンスの基地へ。


 「いいか、合図が出たら突入する」
 「合図ですか?」
 「ああ。情報提供者はどうやら仲間を助けるために侵入するらしい。そこで仲間の首輪を外すために所長を暗殺し、注意を引くためにオレたちを利用するつもりだ」


 ブルホーンたちは、最後の確認をする。


 「情報提供者······女の子?」
 「そうです。変わった格好の女の子でした。どうやら主が居るらしく、その方のためにいろいろ調べてたようですね」


 チータに聞くと、ミレイはふぅんと頷く。


 「ルシェラ、サポートは任せる」
 「おっけ、いつも通りね」


 アシュロンとルシェラも、最後の打ち合わせを済ませる。




 そして、アイヒたちは収容施設へ向かった。



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