神様のヒトミ

さとう

43・レジスタンス(1)



 アイトたちが魔帝族収容自然に侵入するよりだいぶ前。


 アイヒたち4人は、ブル王国の宿屋でこれからのことを話し合っていた。
 国境に向かった【救世主】たちの動向を気にしつつ、これからどうするべきかを考える。


 「とりあえず、この国では情報が集まらないわね」
 「そうですね······」


 ルシェラの結論にアイヒは肩を落とす。


 「人間の情報がアテにならないなら、魔帝族の情報を得ればいい」
 「魔帝族?」


 アシュロンは壁に寄りかかったまま言い、ジュースを飲んでいたミレイがアシュロンを見る。


 「ブル王国から先のシェスタ王国に、魔帝族の知り合いがいる。そいつなら魔帝族の情報にも明るいはずだ」
 「確か、アシュロンが冒険者時代に知り合った仲間だよね」
 「まぁな」


 ルシェラはアシュロンに聞くが、実は既に知っていた。
 アイヒとミレイのために、敢えて聞いたのだ。


 「じゃあ次の目的地は、シェスタ王国で決まりですね」
 「美味しいお店あるかな?」
 「う〜ん、あそこはいい店はあるけど······。魔帝族を奴隷にして使ってるから、あんまりいい気はしないかもよ?」
 「そういえば、デューク王国で散々言われました。魔帝族は魔獣と変わらない、野蛮な生物だって。もちろん信じてないですけどね」
 「私は寝てたから聞いてない」
 「そうね、国王がいる国なんかじゃ、魔帝族の奴隷は多いけど、地方の町や集落じゃ魔帝族と人間は手を取って生活してるわ」


 その後も、出発の打ち合わせをし、物資の確認をする。
 翌日は足りない物資の補給をして、明後日の早朝出発となった。




 まさかシェスタ王国に、アイトが居るとは思わない2人だった。




 **********




 ブル王国を出発し、数日掛けて隣国のシェスタ王国へ到着する。
 数日で到着したのは、街道が整備されて魔導車がスムーズに進んだからである。


 「ここも大っきな町ですね······」
 「そうね。あとここはデューク王国の同盟国だから、アナタたちの捜索願いが出てるかもしれないわ。気をつけて」
 「は、はいっ」


 魔導車の窓から顔を出していたアイヒは、顔を引っ込めた。
 町中を魔導車で走り、アシュロンは細かい路地を進む。


 「アシュロン、細い」
 「もうすぐ到着する、大丈夫だ」
 「うん」


 相変わらず、ミレイはアシュロンに懐いてる。
 運転席の隣に腰掛け、アシュロンの運転を眺めていた。


 アイヒは暗く狭い路地が気になり、聞いてみる。


 「あの、こんなトコに魔帝族が?」
 「ああ。アイツは冒険者でありながら、レジスタンスのリーダーでもあるからな」
 「······れ、レジスタンス?」
 「そうだ。デューク王国のやり方が気に食わない、この国にある魔帝族の集団だ」
 「アシュロン、お友達なの?」
 「まぁな。アイツらが気に食わないのはデューク王国であり、この町にある魔帝族収容施設だ。アイツらはそこに収容されている魔帝族を開放するために、何度か小競り合いを起こしてる」


 この話は、ミレイとアイヒには強烈だった。


 「魔帝族収容施設······、確か奴隷として使う魔帝族を教育して、貴族やオークションに売るための······」
 「そうだ。アイツは······、ブルホーンは、腕利きの冒険者だったが、奥さんが攫われて収容され、それを取り戻すためにレジスタンスに加わった。戦闘力はもとより、リーダーシップもあったから、たちまちリーダーになった。ヤツならこの辺りの魔帝族に関する情報を持ってるはずだ」


 そして、魔導車は裏路地の広場へ停止した。
 4人は車から降りアシュロンに着いていく。


 「······ここだ。気をつけろ」
 「これって······、魔導車ですか?」


 広場には壊れた魔導車が何台も積み上げられ、まるでスクラップ置き場にしか見えなかった。  
 しかしアシュロンは、1台の魔導車に近づくと、錆びついたドアを開ける。


 「変わってないな、ここならそう簡単にはバレないだろう」
 「か、隠し通路⁉ ウチも知らなかったわ······」




 ドアの先には、細い階段があった。




 **********




 アシュロンに続き細い階段を下る。
 すると、かなり広い空間に到着した。


 「だ、誰だテメェ‼」
 「人間だと⁉ なぜここがバレた⁉」
 「チィィ、おい、リーダーを呼べ‼」


 広い空間には、たくさんの魔帝族がいた。
 テーブルの上には酒瓶が転がり、壁に設置してある魔道具からは、明るいひかりを放っている。


 「待て、オレたちは敵じゃない。ブルホーンに用があって来た」
 「うるせぇッ‼」
 「あ、アシュロンさん⁉」


 アイヒが叫んだ時には、犬人の男が抜いた剣が振られていた。
 狙いはアシュロンで、肩から脇腹に掛けての袈裟斬りだ。


 「な⁉」
 「落ち着いてくれ、頼む」
 「わぁ、すごいアシュロン」


 アシュロンは、男の剣を指二本で挟むように止めた。
 緊張感のないミレイの声が響く。


 すると、部屋の奥のドアが開き、大きな笑い声が響いた。


 「がっはっは‼ 落ち着けお前ら、ソイツは敵じゃねぇよ」
 「り、リーダー?」
 「悪ぃなアシュロン、ウチの若けぇモンが失礼した」
 「気にするな。······久しいな、ブルホーン」


 アシュロンが珍しく(アイヒとミレイは初めて見た)微笑み、全身が焦げ茶色の牛人に挨拶する。
 すると牛人は耐えきれずに大爆笑した。


 「がーっはっはっはっは‼ 何なんだよ今日は⁉ 『暴虐獣ぼうぎゃくじゅうデッドワイルド』のお導きなのか? このタイミングでお前が来るとは、こりゃ運命に違いねぇ‼」


 突如笑いだした牛人に、アシュロンも部屋の魔帝族も訳がわからない表情をする。


 「さぁ再開を祝して1杯やろう、奥へ来な」
 「ああ、お前に頼みがあって来た」
 「そうかい、たった今オレもお前に頼みが出来た」




 アイヒとルシェラは、最後までポカンとしていた。



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