神様のヒトミ

さとう

42・作戦

 
 「ただいま戻りました」
 「おかえりー」
 「おう、帰ったか。メシにしようぜ」


 ライラがクナイに抱きつくと、クナイは驚きつつもライラをなでる。
 俺は焼き肉弁当を取り出したが、少し冷めているのに気が付いた。


 「あちゃー。……まぁ仕方ないか」
 「少々お待ちを。……たしか、よっと」


 クナイは影に手を突っ込むと、大きな四角い箱を取り出す。


 「電子レンジです。正確には温熱調理魔道具ですが」
 「………まぁ、ありがと」




 アイトは、クナイなら何でもアリだと思うことにした。




 ***********




 3人で弁当を食べ終え、シャワーを浴びる。
 ライラはクナイと一緒に浴び、アイトは当然1人で浴びる。
 ベッドに入ったライラは、クナイに今日の出来事を楽しそうに語り、話し疲れたのか暫くすると寝息を立て始めた。
 アイトとクナイは椅子に座り、小声で話し始める。


 「そうですか、ライラは一緒に行くと」
 「ああ、ドグさんに預けることも話したけど、突っぱねられたよ」


 クナイには予想通りだったらしい。


 「ミコト様の救出方法ですが、目処が立ちました」
 「マジか!?」
 「はい。進入路と脱出路、そして首輪の解除も」
 「よし、計画を教えてくれ」
 「はい」


 クナイは影から1枚の羊皮紙を取り出し、テーブルに広げる。
 室内は暗く、クナイは魔術で小さな光を生み出し照らす。
 見せられた羊皮紙は、収容施設の見取り図だった。


 「侵入方法ですが、収容施設の空調点検口から入ります。実は先ほど鍵を開け、ダミーの鍵を設置しておきました。そして点検口を進み、ミコト様のいる地下2階まで真っ直ぐ行けます」
 「おお、行きはクリアか」
 「はい。帰りは地下水道を通って行きます。場所は地下3階の拷問室、そこから下水に通じる道があります」
 「帰りもクリアか、次は首輪だな」
 「はい、首輪はコレを使います」


 クナイは、小さな布の包みを取り出し、丁寧に開く。
 するとそこには小さな針が何本も刺してあった。


 「何だコレ?」


 アイトは手を伸ばすが、クナイがそっと制止した。


 「毒針です。私が調合した、解毒の出来ない究極の毒です。刺されば1分もしないうちに、眠るように死亡します。暗殺は私が行いますので、主殿はミコト様をお願いします」
 「わかった。それと……」


 アイトは少し迷ったが、聞いてみる。


 「収容施設に居るのはミコトだけじゃないだろ? 魔帝族はどれくらいいるんだ?」
 「ざっと400人ほどですね」
 「……そっか」


 当然、全員を助けるなんてアイトには出来ない。
 どんなに強くても、特殊な目を持っていても、アイトは万能ではない。


 「胸糞悪いけど……」
 「いえ、一応ですが保険を掛けておきました。なんとかなるかもしれませんが、確証はありません」
 「え……」
 「調査の結果、収容施設の所長を始末すれば、400人の首輪は全て外れます。ならば可能性があります」
 「……何をしたんだ? 保険って?」
 「確証はないので、まだ言えません。……期待させるのも、悪いですし」
 「そっか、自信はあるのか?」
 「五分五分、といったところですね」
 「わかった。じゃあ決行日は?」
 「明日の夜11時頃です」
 「わかった。頼むぜクナイ」
 「は、お任せを」




 決行は明日。アイトは気合いを入れた。




 ***********




 翌朝。3人で朝食を食べるため、ライラと行ったカフェとは別のカフェに入る。
 アイトはモーニングセット、クナイはサンドイッチ、ライラは再びパンケーキを頼んだ。


 「みてみて、クリームがいっぱい」
 「ホントだ。美味そうだな」
 「そうですね、甘そうです」


 夜まで3人で過ごすため今日は昼過ぎまで買い物し、あとは宿屋で鋭気を養う予定で、ライラには既に話は付いていた。


 「ライラ、今日はお洋服と小物を買いましょう。靴やカバン、あとは髪留めなんていいかもしれませんね」
 「わふぅ‼ ありがとう‼」


 ライラの笑顔を見ながらアイトは思った。


 「ミコトにも、いろいろ買ってやらないとな」




 こうして、アイトたちは楽しい時間を過ごした。




 **********




 夜。アイトとクナイは魔帝族収容施設前にやって来た。


 「来たか······」
 「主殿、こちらです」


 クナイの案内で施設の真裏へ。
 収容施設は大規模な工場のように大きく、アイト1人では何も出来なかったのは間違いない。


 「改めて、ありがとなクナイ。俺じゃあ何にも出来なかった」
 「いえ、お役に立てて光栄です」


 アイトは気になった。
 いくら命を救われたといえ、言われただけでここまでアイトに尽くす理由は何だろうか。  
 命の約束は命で返す、本当にそれだけなのか、と。


 「·········来ましたね。どうやら保険は効いたようです」
 「え?」


 クナイのことを気にし過ぎ、周囲の警戒を怠っていた。
 慌てて周囲の気配を探ると、ここでようやく気が付いた。


 「······これって、何だ? 人がたくさんいる?」
 「はい。これが私の賭けた保険です」


 クナイは、薄く微笑んだ。




 「この国にある、魔帝族のレジスタンスに話を持ち掛けました。今夜、全ての収容魔帝族の首輪が外れると、救出のチャンスは今夜しかないと」




 アイトは驚いた。
 まさか1日でここまでやるとは、と。


 「信用して貰うのに苦労しましたが、内部の構造や調査資料を渡し、収容魔帝族に話を持ち掛けて伝言を伝えました」
 「伝言?」
 「はい。レジスタンスのリーダーの奥さんが捕らえられていたので、彼への愛の言葉を伝えました。そこで何とか信用して貰えました」
 「……お前、絶対に敵に回したくないな」
 「お褒め頂き、ありがとうございます」


 褒めてねぇよ。とは言えないアイトだった。


 「首輪を外したら、私が外へ合図します。それを機に突入するようです」
 「なるほどな、俺たちは?」
 「私たちはミコト様優先です。それ以外は、レジスタンスの仕事だそうです」
 「わかった。へへ······、楽しくなって来た」


 アイトはフードを深く被り、口元以外を隠す。
 〔マルチウェポン〕と〔カティルブレード〕を確認し、クナイに言った。


 「行くぞ。待ってろよ、ミコト」
 「はい。参りましょう、主殿」 


 クナイも口元をマスクで覆い、戦闘態勢を取る。




 こうしてアイトたちは、施設へ侵入した。




 **********




 アイトは気付かなかった。
 レジスタンスのメンバーに、2人の少女が居ることを。








 その2人は、大剣使いと双剣使いの護衛を連れていた



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