神様のヒトミ

さとう

41・問いかけ



 「では、私が得た情報をお伝えします」
 「ああ」


 ライラが眠っているので小声で話す。
 窓際のイスに座り、クナイは話し始めた。


 「まずミコト様ですが、やはり魔帝族収容施設にいるようです。《暗夜行路あんやこうろ》で影を伝い、施設に侵入して確認しましたが……」
 「……いい、言え」


 クナイが言い辛いのか、言葉を濁す。
 アイトは続きを促した。


 「首輪をはめられて、その……、指導と言う名の調教を、あ、主殿……」
 「………」


 アイトの目は、虹色に輝いていた。
 深呼吸をすると、右目の光が薄らいでいく。


 「悪い、わかってても押さえられなかった」
 「いえ、それが普通です」
 「ああ……、それで、首輪は?」
 「はい。正式な所有者がいない首輪は、基本的に施設の最高責任者が仮所有者として登録されます。なので首輪を外すには収容所所長を倒す必要があります」
 「よし、これで希望が見えてきた」
 「はい、しかし……、施設の警備は厳重です。いかに主殿といえ、正面からでは……」
 「う~ん、お前の影の中に、俺は入れないのか?」
 「申し訳ありませんが、不可能です」
 「そっか……、じゃあお前の影の中にミコトを入れていくって作戦はムリか」
 「はい、ですが抜け道はきっとあります。もう少しだけ時間をいただければ、侵入・逃走ルートを確保し、収容所所長の行動を洗えます」
 「よし、ミコトはまだ……?」
 「はい。教育が終われば競りに賭けられてしまいますが、まだ時間はあるでしょう」
 「……もう暫く、辛抱してもらうしかないな」
 「……はい、私も全力を尽くします」
 「頼む。ここはお前が頼りだ、クナイ」
 「は、お任せを」
 「何か手伝えることは?」
 「……では、ライラの面倒を見てあげて下さい。町に出るときは、しっぽを隠して、帽子を被らせて下さい」
 「え、でも……、お前が頑張ってるのに、遊ぶのは……」
 「では、私にもご褒美を下さい」
 「え?」
 「期待しています。主殿」




 クナイはにっこり笑い、この日の話し合いは終わった。




 ***********




 翌朝。ベッドにクナイはいなかった。
 昨夜はライラを挟むように寝たが、ライラはアイトにくっついて離れなかった。
 起きて着替えをし、朝ご飯を食べる。


 「さてライラ、朝ご飯だ」
 「わん!!」


 アイトはカバンを背負い、財布の中身を確認する。


 「よし、今日は1日遊ぼうか。好きな物食べて、好きな物を買ってやる。行こう」
 「わふ!? ホントにいいの!?」
 「ああ、いいぞ」


 アイトは、今日1日を使いライラと遊ぶ。
 恐らく数日中に、ミコトを救うための戦いが始まる。
 そのことを伝え、それでも一緒に居るか、離れるかを選ばせる。
 もし一緒に居られないと答えられたら、アイトは最初の村のドグにライラを引き取るように説得するつもりだった。


 「じゃあ行くか、朝は何が食べたい?」
 「あまいの!!」
 「よーし、じゃあパンケーキでも食べに行くか」


 クナイにライラが好みそうな店を聞いておいたので、抜かりはない。




 こうして、アイトとライラは町に出かける。




 ***********




 「わふぅ……。おなかいっぱい」
 「よく食べたな……」


 町の飲食店が並ぶ通りのカフェで、モーニングを食べる。
 アイトはサンドイッチとコーヒーを頼み、ライラはパンケーキを食べた。
 フワフワのパンケーキに、生クリームと果物が添えられ、甘いシロップが掛けてある、デザートみたいな朝ご飯を完食し、食後のジュースを飲むライラ。
 アイトは、少しずつ聞いてみることにした。


 「なぁライラ、どうして奴隷になったんだ?」
 「わかんない、気が付いたら奴隷だった。このへんの街道で気を失ってたのを拾われて、そのまま売られたって奴隷しょうにんが言ってた」
 「……そうか」


 アイトは、ライラもミコトと同じワケあり魔帝族と踏んでいた。
 ミコトは銀猫人、ライラは金犬人、この繋がりは偶然ではない。


 「ミコトを助けたら、ドグさんの村に行かないとな……」
 「わふ?」


 あの村ならライラのことも分かるかも知れないと、アイトはこの国を出たあとの目的地を決める。


 「さて、次はどこに行く?」
 「えっとね、わたし、公園に行きたい」
 「公園? 場所はわかるのか?」
 「うん、あそこにね、ぶらんこっていう乗り物があるの。のってみたい」
 「ブランコか、よーし行くか」
 「わん!!」


 会計を済ませ店を出る。
 ライラと歩いていると、ライラはアイトの手をそっと握る。


 「えへへ……」




 にっこりと笑うライラは、とても幸せそうだった。




 ***********




 「わふーっ!!」
 「気を付けろよ、ライラ!!」


 ライラは公園に到着するなり、ブランコへ飛び乗った。
 そのまま上下に揺らし、スカートも気にせず大暴れ。


 ブランコが終わると滑り台、その次はアスレチックと止まらない。
 公園もかなり広かったので、遊具も豊富で遊ぶには最適の場所だった。


 しばらく遊ぶと小腹が減り、露店でジュースとホットドッグを買う。
 ベンチに座り、アイトはまた少し聞いてみた。


 「奴隷だったとき、仕事はなにを?」
 「えっと、掃除と洗濯、あとお買い物。アイトに助けられた日はお皿を割っちゃって、それで怒られた」
 「……ごめん」
 「ううん、アイトが来てくれて嬉しかった。あ、そうだ!!」
 「ん?」


 ライラは立ち上がるとアイトに向き合い、深々と頭を下げる。


 「アイト、助けてくれてありがとう!! わたし、今がとっても幸せ!!」


 ライラはにっこり笑い、アイトにじゃれつく。
 その姿に、アイトはミコトを重ねていた。


 「……うん、よかった。ホントによかった……」
 「くぅん」
 「よしよし……」




 アイトは、ライラにこれからを問うことにする。




 ***********




 夕方になり、晩ご飯を買って帰る。
 今日は焼き肉弁当を3つ買い、3人そろって宿で食べることにした。


 部屋に戻ると、クナイはまだ帰ってこない。
 アイトはテーブルに弁当を置くと、ベッドに座るライラの隣に腰掛ける。


 「ライラ、今のうちに聞いておく」
 「わふ?」


 座ったアイトにじゃれつき始めたライラの頭をなでながら、アイトは真剣に聞く。
 昨日は勢いで言ったが、これからのことをキチンと聞いておかないといけないと、アイトは感じていた。


 「昨日、この町で用事があるって言ったよな。実は、魔帝族収容施設に、俺の大事な妹が捕らわれている」
 「え……、アイトはにんげんだよね?」
 「ああ、でもずっと一緒に居た、俺の父親に託された妹なんだ」
 「くぅん……」
 「クナイが情報を集めて準備が整ったら、施設に侵入する。そして妹を……、ミコトを救う。それが終わったら〔デズモンド地域〕に向かう。そこでライラに聞いておく」
 「わふ?」
 「このまま俺たちと一緒に行くか、俺が信用出来る人と一緒に静かに暮らすか、選んで欲しい」
 「アイトと一緒にいく」
 「時間は……。へ?」
 「アイトと一緒、アイトはわたしのお兄ちゃんだから」


 ライラは真っ直ぐアイトを見た。
 迷いなく、ノータイムで答えを出した。
 いや、答えは初めから決まっていた。


 「……わかった、悪かった、ヘンなこと聞いて」
 「うぅん、へいき。あのね、ミコトってどんなコ?」
 「そうだな、ライラと同い年の女の子で、きっといい友達になれるぞ」




 アイトはライラをなでながら、ミコトの話を始めた。



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