神様のヒトミ

さとう

40・ライラ



 アイトは少女を抱きかかえ、宿屋へ向かった。
 宿屋はほぼ無人なので、少女を連れても何も言われなかった。
 部屋のベッドに寝かせ、仲間を頼ることにする。


 「······お〜い、聞こえるか〜?」


 アイトは半信半疑で自分の影に話しかける。
 すると、すぐに返事が帰ってきた。


 『主殿、何か御用でしょうか』
 「おぉっ⁉ あ、いや実は······」


 アイトは事情を説明する。


 『なるほど、ちょうど調査が一段落したので、買い物をして帰ります。大体でいいので少女の身長や特徴をお願いします』


 アイトは少女の特徴を話すと、通信は終わった。
 すると、少女が起きてアイトを見ていた。


 「起きたか、身体は大丈夫か?」
 「······うん」


 少女はポツリと喋り、コクンと頷く。
 アイトはベッド脇に座り少女の頭をなでながら、ベッドサイドに置いてあった水の水筒を少女に渡す。


 「ほら、水を飲め」
 「······」
 「ゆっくりでいいぞ、落ち着いて」


 水を飲んだ少女は、アイトの右手を見ていた。


 「······手、ごめんなさい」
 「気にすんな、それより、俺の仲間がごはんを買ってくるから、もうしばらく待ってろよ」


 すると、少女のイヌ耳がピコピコ動く。
 アイトはミコトを思い出し、少し苦笑した。


 「う〜ん、先にシャワー浴びるか。ケガもしてるし、キレイにしよう。1人で行けるか?」
 「······」


 少女はブンブン首を振る。
 アイトは少し考え、決意した。


 「えっと、俺と一緒でもいいか? 何もしないからさ、信用してくれるか?」
 「······うん」




 少女は、コクンと頷いた。




 **********




 シャワー室は意外と広く、畳4畳ほどの広さがあった。
 アイトと少女は全裸になりシャワー室へ入る。


 「······ヒドいな。くそ、アイツら」


 少女の身体は傷だらけで、切り傷や打撲が多かった。


 「痛くないか? 洗っても平気か?」
 「うん。平気、キレイにして」


 アイトはシャワーで少女を流し、石鹸を泡立てる。
 タオルでは刺激が強いと思い、手を使って洗う。


 「ほら、前は自分でな。頭は洗ってやる」
 「うん」


 少女はイヌ耳に泡が入らないように閉じ、目もギュッと閉じた。
 アイトは優しく、しっかりと洗う。


 「しっぽはどうする?」
 「洗って」


 少女のしっぽもキレイに洗うと、とてもキレイな毛並みになった。
 そして洗い終わるとドアが開く。


 「主殿、失礼します」
 「ぶはっ⁉ なんでフツーに入って来てんだお前は⁉」


 クナイが素っ裸で現れた。
 アイトは振り向いたおかげで、お互いの全てを見てしまった。


 「主殿、お背中を」
 「やると思ったよチクショウ‼」
 「ぐるるる······」


 すると少女が、クナイを威嚇する。


 「落ち着け、この人はごはんの人だ。怖くないぞ」
 「ぐるる?······ごはん」


 アイトの後ろに隠れた少女は、クナイを見て警戒してる。
 しかし、ごはんという単語に惹かれたのか、少し大人しくなる。


 「大丈夫、怖くありませんよ」
 「……」


 クナイはアイトの後ろにいる少女に手を伸ばす。
 すると少女は、おっかなびっくり手のニオイを嗅ぎ、ぺろりと舐める。


 「ふふ、かわいい……」
 「わぅぅ」


 クナイは少女の頭をなで、イヌ耳を触っていた。
 そして、持っていたタオルで少女を拭く。


 「はい、おしまいです」
 「あ……、ありがと」


 少女は恥ずかしいのか、シャワールームから出てしまった。


 「はは、かわいいな」
 「……はい、それにしても苦しそうです」
 「だな、このまま」
 「いえ。……主殿がです」
 「え」


 クナイの視線はアイトの下半身へ。
 アイトはクナイの裸体をガン見していたおかげで、すっかり元気に。


 「ああああ、これはその」
 「いいえ、構いません。せめて私に処理を」
 「あ、いや……」


 クナイはしゃがみ、ナニかをしようとしてる。
 アイトは避けることも、躱すことも出来なかった。




 「それでは、失礼いたします」




 ***********




 「わふ?」
 「ふふ、似合ってますよ。怪我は平気ですか?」
 「うん、おくすり苦かった」
 「………」


 少女はクナイの買ってきた服に着替え、怪我の治療のためポーションを飲んだ。
 アイトは、激しい自己嫌悪で落ち込んでいた。


 「俺は、俺は最低だ。……まさか口で」
 「痛いの? 大丈夫?」
 「あ、ああ、大丈夫」


 少女は長い金色のストレートヘアを梳かしてもらい、可愛らしい黄色のワンピースを着ていた。
 クナイが手を加え、尻尾の部分がちゃんと出ている。


 「さ、食事にしましょう」
 「わん!!」
 「あ、そういえば」


 アイトはここで始めて気が付いた。


 「キミの名前は?」
 「ライラ」
 「ライラか、俺はアイトだ」
 「私はクナイです。よろしく」
 「アイト、クナイ……」


 ライラはミコトと同じ、耳としっぽ以外は人間と変わらない。
 助けた以上、アイトは責任を取るつもりだった。


 「ライラ、キミのことはちゃんと面倒を見るから安心しろ。それと、俺たちはこの町での用事が済んだら、〔デズモンド地域〕へ行く。ライラの故郷に連れて行ってやるからな」
 「くぅん……」


 アイトはライラをなでると、気持ちよさそうに鳴いた。
 どこから持ってきたのか、夕食はシチューで、ライラは3杯もおかわりした。
 そのままベッドに寝かせると、静かに寝息を立て始めた。


 「悪いクナイ、勢いで助けちまって、その、……ミコトとダブって見えて」
 「いえ、主殿の優しさは尊敬できます。私は主殿を誇りに思います」
 「……その、サンキュ」
 「いえ、それに、ミコト様のいいお友達になれそうですし。ライラは狐人でしょうか?」
 「う~ん、それにしては尻尾が犬みたいだけど」
 「では、主殿が覧てみれば宜しいのでは?」
 「あ、そっか」


 アイトは右目を発動させ、ライラを覗いてみた。
 そして、その能力を覧て驚いた。


 「な……、なんだこりゃ……!?」
 「主殿?」






 **********


 【ライラ】 ♀ 7歳 金犬人きんけんじん


 ◎【異能アビリティ
 1・《犬神転身ライラプス・コンバージョン
  ○魔犬ライラプスへ変身する


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