神様のヒトミ

さとう

39・冒険者



 アイトは、やることもなかったので帰ろうと思ったが、帰ってもやることがないことに気が付いた。


 「クナイ待ちか。······どーすっかな」


 アイトはなんとなく周囲を見る。
 先ほど、クナイと一緒に露店のハンバーガーを食べたので腹は減っていない。
 すると、町の中央なので色々な店がある。


 「武器に防具、道具に錬金道具、パン屋に八百屋、冒険者ギルドに傭兵ギルド、魔術ギルドに錬金ギルド。······至れり尽くせりだな」


 せっかくの異世界なので、アイトは冒険する。
 まずは武器屋へ入ってみた。


 「お、おぉ〜」


 アイトも男の子。
 ファンタジー世界そのままの武器屋に目を光らせた。


 大量生産のだろうか、剣と槍が挿してある樽。
 魔術師用の杖はガラスのケースに収められ、壁には大剣が掛けてある。
 店主がいるカウンターの前には、装飾された立派な剣がケースに収められていた。
 アイトと同年代くらいの駆け出し冒険者グループが、武器を漁っている。


 「へへ、今回の報酬でようやく青銅の剣を卒業だぜ」
 「ああ、いよいよ鉄の剣だな」
 「ねぇ見てよこの剣、カッコいいわ」
 「私はこの魔術師の杖がいいわ」


 ワイワイと楽しそうに武器を物色してる。
 すると、店主がカウンターのケースから剣を取り出し、四人組の少年少女に解説した。


 「コイツは《魔剣アルベド》という、《魔装具カラミティアームズ》の1つでな、装備した人間と共に成長する、世界に7つしかない秘宝だ。わしの爺さんの爺さんの爺さんが、国王陛下より賜った武具なのじゃ」


 少年少女は、おぉ〜とかへぇ〜とか言っている。
 アイトは気になって剣を覧てみた。




 **********


 【装飾された鉄の剣】 
 ○鉄の剣に装飾を施した物


 **********




 アイトは、悲しくなって店を出た。


 「あの店主、偽物って気付いてないのか?」


 アイトは武器屋でのことを忘れようと町を歩く。
 そして今度はギルドに注目した。


 「冒険者か。······う〜ん、惹かれるね」


 アイトはギルドの前で少し悩む。


 「冒険者の資格、······う〜ん、別に邪魔にならないし、取って損はしないかな。うん、取ろう」


 アイトは自分を納得させる。
 これからの旅、何があるかわからないし、冒険者の資格が役に立つかもしれない。
 取れる物は取っておく。そう思いギルドへ入った。


 「すんませ〜ん」


 ギルドの中は、冒険者で溢れていた。


 ギルドはかなり広く、受付カウンターだけでも10はある。
 依頼の掲示板にはA4サイズの紙が何枚も貼られ、素材の収集だったり、討伐依頼だったり、挙句の果てには清掃依頼なんてのもある。


 冒険者世代は様々で、上は老人から、下は子供までと広い。
 併設されたテーブルで飲食してるグループや、掲示板を見て悩んでる駆け出し、依頼料で受付と揉めてる冒険者と、見てて飽きない光景だった。


 アイトは空いてるカウンターに向かい、受付のお姉さんに聞く。


 「あの、冒険者になりたいんですけど」
 「はい、冒険者登録ですね。それではこちらにご記入をお願いします」


 渡されたのは1枚の羊皮紙。
 そこには名前、年齢などを書く欄がある。
 アイトはガロンやオババから字を習っていたので、問題なくスラスラと書く。


 「はい。それでは登録料金3000コイン頂きます」
 「あ、はい」


 アイトは、お金が必要だとは思っていなかった。
 仕方なく支払いを済ませる。


 「それではお待ち下さいね」


 受付のお姉さんは、アイトの書いた羊皮紙を、カウンターに置いてある謎の魔道具に入れる。
 アイトには、それがスキャナーのように見えた。


 スキャンが終わると、空中に青い画面が浮かび上がり、お姉さんが画面に触れると、まるでタッチパネルのように画面に波紋が広がる。


 そして、机の中から赤いプレートを取り出し、スキャナーに差し込む。アイトにはUSBメモリに見えた。


 赤いUSBメモリを抜き取り、細い鎖を通してアイトに渡す。


 「それではこちらが冒険者の証となります。始めの等級はF級からとなりますので、頑張って等級を上げて下さいね」
 「はい、どうも」


 アイトは証を受け取り首にかける。


 「これで俺も冒険者か······へへへ」




 アイトは上機嫌でギルドを出た。




 **********




 登録に意外と時間がかかり、アイトは宿へ戻ることにした。
 上機嫌で町を歩きながら宿の近くまで来ると、薄暗い路地裏から鳴き声が聞こえた。


 「ったく、立てこのガキ、世話かけんな‼」
 「くぅぅん······」


 怒号と鳴き声。
 アイトは迷わず路地裏へ進む。


 「あぁもう使えねぇ、ガキはこれだから」 
 「格安だったから仕方ねぇだろ、もっとマトモな奴隷は居なかったのかよ?」
 「はっ、マトモな奴隷なんて金持ちが買うもんだ。オレたちみてぇな平民は、こんなハズレ奴隷しか使えねぇよ」
 「ははは、そりゃそうだ」


 大きな男2人が、小さな女の子の髪を掴んでいた。


 女の子は金色の長い髪で、頭には柴犬のようなイヌ耳。
 おしりからはしっぽが伸びているが、力無く項垂れてる。
 首には【服従の首輪】が着けられていた。


 アイトは怒りを堪えつつ、男2人に言った。


 「なぁ、何してるんだ?」
 「あぁ⁉ 見て分かんだろ、調教してんだよ」


 ピキリと、アイトの右目が疼く。
 アイトは全力で怒りを抑え、笑顔で言った。


 「······あのさ、ちょうど子供の奴隷が欲しくてさ、その子を売ってくれないか?」


 アイトは、自分のセリフに吐き気を覚えた。
 あの金髪のイヌ耳少女が、ミコトと被って見えた。


 「ほぉ、いくら出す?」
 「言い値でいい。頼むよ」
 「へへ、じゃあ200万コインでどうだ? へへへ」
 「······わかった、それでいい。首輪を外せ」
 「へっへ、毎度あり」


 コインを受け取った瞬間、少女の首輪が外れた。
 男2人は嬉しそうに去って行く


 「おい、元値は5万コインだろ?」
 「いーんだよ、ああいう偽善者は金持ってんだ。けけけ、いい買い物したぜ」


 アイトは少女に近寄る。


 「大丈夫か?」
 「ぐるるるるっ‼」


 少女は警戒し、最後の力を振り絞り唸る。
 アイトはゆっくり手を伸ばす。


 「がうっ‼」
 「っ‼」


 アイトの右手に少女は噛み付いた。
 指抜きグローブだったので、指の部分から血が出る。


 「大丈夫、大丈夫だ······」
 「がぅぅぅ······、ぅ?」


 アイトは、涙を零していた。
 ミコトのことを思い出し、もしかしたらミコトもこうなってしまうかもと思ったら、涙が止まらなかった。


 「ごめん、ごめんな······」
 「······くぅん」


 アイトは少女を抱きしめる。
 少女も限界なのか、そのまま眠るように気を失った。




 アイトは少女を抱きしめ、しばらく動けなかった。



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