神様のヒトミ

さとう

38・シェスタ王国



 「シェスタ王国······。来たか」
 「はい。まずは拠点となる宿を確保し、補給を済ませましょう。その後はミコト様の情報を集めます、そして魔帝族収容施設の見取り図を手に入れて、ミコト様奪還の具体的な作戦を考えましょう。よろしいですか、主殿?」
 「えと、はい。完璧な答えだな」
 「ありがとうございます」


 シェスタ王国の門には検問があり、そこで入国料を支払う。
 簡単な審査を受けて、ようやく入国出来る寸法だ。


 クナイと並び、審査を待つ。
 すると俺を見たクナイが質問してきた。


 「主殿、質問をよろしいでしょうか」
 「ん? どした」
 「はい。主殿は拳を武器にしてるのは見ましたが、刃物等は使わないのですか?」
 「刃物······、剣とかナイフか? う〜ん、いちいち抜くのは面倒だし、ナイフを抜く手間を考えたら、殴った方が早いしな」


 アイトに取って刃物は、調理や解体のための物という認識だ。
 それにガモンは武器を使えなかったので、アイトも習っていない。


 「なるほど。それでしたら、良い物がございます」
 「良い物?」
 「はい。後ほど差し上げます。主殿にピッタリかと」


 クナイが微笑む。
 アイトはその笑みにドキリとした。




 入国の列に並び2時間、ようやくアイトたちの番が来た。




 **********




 入国料は1人5000コインと意外と高く、アイトは一万コインで支払った。
 入国審査は、簡単な質問だけ。
 国に来た理由と、滞在期間だけを聞かれた。


 こうして、アイトとクナイは無事に入国した。


 「では、予定通り宿へ」
 「ああ。場所は?」
 「町の中央に、大きな宿がありますが、そこではなく規模の小さい目立たない場所にしましょう。いざという時に、見つかりにくい方がいいでしょうし」
 「そうだな、さっさと終わらせるに越したことはない」


 アイトとクナイは入国して3分と歩かずに、普通よりやや大きな一軒家の宿屋を見つけた。


 「ここでいいか?」
 「ですね。看板も小さいし、一見して宿屋とは分かりにくい。さすが主殿です」


 宿屋へ入るとすぐ脇が受付になっていた。
 部屋数は3室しかなく、入口のすぐ先に階段がある。
 クナイが受付したが、当然のように1室だけで、アイトは頭を抱えた。


 「あのなクナイ······」
 「申し訳ありませんが、譲れません。主殿の側を離れることはできません」


 凄く強い目で見られ、アイトはしぶしぶ了解した。


 2階に上がり部屋に入る。
 部屋は6畳ほどで、ダブルベッドと、窓際に小さな椅子テーブルのみ、クローゼットなどはなく、以外なことにシャワーは付いていた。


 「主殿、この宿は食事が出ないようで、買い物ついでに夕食を買ってきましょう」


 部屋の狭さから、アイトはそんな気がしていた。
 宿は素泊まりのみで、食事などは出ないらしく、カプセルホテルみたいな安宿のようだ。


 「主殿、まずはこちらをどうぞ」


 クナイは影から何かを取り出しアイトに渡す。
 それは、黒い2つの腕当てで、飛び出しナイフが付いていた。


 「これは?」
 「はい、これは〔マルチウェポン〕と〔カティルブレード〕と呼ばれる暗器の1つです。主殿の格闘を邪魔しない武装として、これ以上の物はないかと」


 アイトは〔マルチウェポン〕を左手の服の上から、〔カティルブレード〕を右腕の服の下に隠すように装着した。


 「〔マルチウェポン〕は、ロープダートと短弓ショートボゥの機能が付いており、中距離での使用に適しています。ブレードは手を反らせば展開します」
 「へぇ······」


 アイトは両腕を強めに反らすと、ブレードが飛び出し、力を抜くと元に戻ることを確認する


 「こりゃいいな、ありがとな、クナイ」
 「はい、よくお似合いです、主殿」


 アイトは、クナイに服でも買ってやろうと決意した。
 いつも同じ忍び装束だし、お礼の意味も込めての決断である。


 「では、食料とその他の補給をしましょう。私はその後、収容施設の情報を集めますので」
 「わかった。何か手伝えるか?」
 「いえ、情報収集は私の専門です。お任せ下さい」
 「お、おお。じゃあ買い物行くか」




 アイトとクナイは、町へ向かった。




 **********




 町で買い物を終え、食材や道具を買い込む。
 クナイは薬屋や錬金道具屋で謎のアイテムを買っていた。


 「なぁ、その草や虫、何に使うんだ?」


 アイトは、謎の薬草や昆虫を入ってる袋を指差す。
 クナイは得意げに話してくれる。


 「はい、これは毒矢や煙玉などの材料として使います。さすが王国の道具屋や錬金道具屋は種類が豊富ですね」


 錬金術は傷を癒やし治すポーションや、毒や麻痺を治す薬を作ったりする。いわば薬剤師である。
 腕のいい薬剤師であれば、効果の高いポーションを調合できるのだ。


 「クナイも錬金術······、ポーションとか作れるのか?」
 「はい、薬品調合は得意でしたので。この世界でも変わらないようで、安心しました。アビリティのおかげで更に多くの種類が精製出来ます」
 「15歳で薬品調合か······、同じ時代の人間とは思えないよ」


 買った物は全てクナイの影の中に収納してある。
 町の中央広場へ着いたとき、アイトは気が付いた。


 「奴隷が多いって聞いたけどよ、全然見かけないな」
 「はい、奴隷は基本的に、家の雑務や国が経営する工場で働かされます。僅かな賃金は奴隷所有者に奪われ、劣悪な環境で働かされるようです」
 「······ふーん」
 「逃げ出した奴隷に【服従の紋章】が刻まれていれば、所有者の意思1つで殺され、紋章が刻まれてない奴隷には、【服従の首輪】という魔道具が着けられています。こちらは命を奪うほどではありませんが、強力な電気が流れるようです」
 「奴隷は開放されないのか?」
 「基本的に奴隷は開放されません。ですが、所有者が変わることは在りますね。その場合【服従の紋章】を刻み直し、首輪はそのまま残ります」
 「ん? 【服従の紋章】は、死ぬまで消えないんじゃ?」
 「そうですが、所有者が死んだ時と、所有者の変更の際に消えるようです」


 話が終わると、クナイは言う。


 「主殿、私はこれからミコト様の情報を集めてきます。何かありましたら「影」に向かい、私をお呼び下さい」
 「か、影?」
 「はい。私と主殿は繋がっておりますので、主殿の声1つで参上します。では」
 「·········」


 クナイは人混みに紛れ、瞬きする間に消えた


 「·········影?」




 アイトは、自分の影を見つめていた。
 

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