神様のヒトミ

さとう

37・野営



 森を抜けた先には街道があり、見通しもよく危険も少ないと判断し、アイトとクナイは野営の支度を始めた。


 「主殿、野営の支度は私に任せ御寛ぎ下さい」
 「いやいいよ、2人で準備した方が早いだろ」
 「しかし······」
 「いいから、早く」
 「わかりました。ご命令ならば」


 クナイは、足元の影に手を突っ込むと、中から大きな袋を取り出す。
 袋を開けると、中にはテントやら調理器具が入っていた。


 「おぉ、便利だな」
 「はい。影の中に大抵の物は入っています。必要な物がありましたら何なりと」


 アイトはテントを掴み組み立て、クナイは岩でかまどを作り、火を起こす。


 「主殿、苦手な食べ物はありますか?」 
 「いや、特にない」
 「わかりました。それでは今日のメニューは肉野菜丼にします」
 「ああ·········、え?」


 アイトは手を止めクナイを見ると、飯ごうに米を入れているところだった。


 「こここ、米があるのか⁉ マジで⁉」
 「はい。修行中に立ち寄った村で栽培されておりまして、買えるだけ買ったのです。やはり日本人は米がなくては」
 「その通り、お前は偉い‼」
 「お誉め頂き光栄です」


 クナイは影から水のボトルを取り出し米を洗い、飯ごうを使い火にかける。
 木のまな板と包丁で野菜とウェアウルフを切り、米が炊けるまで置いておく。
 その間にサラダを作り、米がいい感じになって来たら肉と野菜を一気に炒める。
 飯ごうからご飯をよそい、肉野菜をのせて完成した。


 アイトと見てるだけでなく、テントを完成させる。
 意外と大きく、2人で使えるサイズだった。


 「主殿、食事の支度ができました」
 「おお、今行く」


 折り畳みの簡易テーブルには2人分の食事。
 クナイは携帯食料で済ませようとしたが、アイトが一喝して黙らせ同じ食卓へ着かせる


 「じゃあ、いただきます」
 「はい、お口に合えばいいのですが」


 アイトは久しぶりの米を食べる。
 ふっくらした米、噛むと柔らかく甘い味が広がる。
 肉野菜も美味く、塩加減も絶妙だった。


 「あぁ······、美味い。こんな美味い食事は久しぶりだ」
 「良かったです」




 クナイの声も、心なしか弾んで聞こえた。




 **********




 食事も終わり、片付けも終わる。
 後は寝るだけとなり、アイトは嫌な予感がした。


 「では主殿、用意があるので先にどうぞ」
 「·········用意?」
 「はい。夜伽の」
 「却下」


 クナイが言い終わる前に黙らせる。
 クナイの仕事は、炊事洗濯暗殺、そして夜伽と言っていた。
 まさかと思っていたアイトは、用心していた。


 「······私では、その、満足して頂けないでしょうか」
 「いや、そういうワケじゃなくて」


 アイトは思春期の15歳。同世代の女子が気にならないワケがない。むしろ興味津々である。
 しかし、いくらアイトが認めたとは言え、今日初めて会った女の子を、そういう対象には見れなかった。


 それに、アイトは気になる女子がいる。


 「······クナイ、明日も早いし寝ようぜ」
 「······はい。あの、主殿」
 「なんだ?」
 「その、したくなったらいつでもどうぞ。経験はありませんが、知識はありますので」
 「······わかった。ありがとな」


 恐らくその予定はないが、アイトはそう答えることにした。
 クナイはアイトの影に潜ると言ったが、アイトは隣で寝るように命令する。
 手を出すつもりはないが、あまり距離を取るのも悪い気がするとは言えないアイト。
 テントの中で毛布に包まると、すぐにクナイの息遣いが規則正しくなる。


 
 クナイの息遣いにドキドキしながら、アイトは眠れぬ夜を過ごす。




 **********




 「いいかクナイ、これからは俺に遠慮するな。メシも一緒、いちいち畏まるな、立場はあくまで対等だ」
 「それは受け入れられません。私は主殿に仕える身、対等などあり得ません」
 「······はぁ」


 翌朝。街道を歩きながらアイトは困っていた。
 クナイは何かと付けて主殿主殿なので、いい加減気疲れし始めていた。
 そこで朝からクナイと話し、いくつかを決めた。


 クナイは、アイトの命令を聞く。
 食事は一緒、寝るのは状況に応じて一緒。
 行動も一緒、影に入るときはアイトの許可を得てから。
 夜伽をする場合はアイトから言う。クナイは誘惑しないこと。
 お互い、間違いは指摘すること。自分の意見を言うこと。
 以上を守らない場合は、主従契約を解除する。


 「思い付いたら追加していくからな」
 「······はい」
 「言いたいことは?」
 「ありませ······、いえ、あります。影に入る許可は必要ないと思います。危険な場合に主殿の許可を待っていたら、取り返しのつかない事が起きる可能性が」


 クナイは、自分の意見を言うことを忘れなかった。
 最初はこんなモンかと思い、先を進む。




 シェスタ王国は、すぐそこまで迫っていた。



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