神様のヒトミ

さとう

35・対集団技



 翌朝。アイトは目覚め朝食を頂いたが、すぐに出発とは行かなかった


 「大変だドグさん!! ちょっと来てくれ!!」
 「なんじゃ朝から騒々しい……ゆっくり茶ぐらい飲ませんか」
 「それどころじゃないんだっての!!」


 ドグとドーサとまったりしてたアイトも驚いた
 入ってきたのは、凶悪な顔をした鰐人だった


 「あぁそうだ、旅人のアンタも来てくれ、頼む!!」
 「は、はい」
 「いやしかしアイトくん、キミは……」
 「いえ、せっかくだし何か手伝えれば」


 アイトは立ち上がり、鰐人のところへ行く
 ドグはため息をつくが、仕方なく立ち上がった


 家から出て村の入口近くまで行くと、人間と魔帝族が集まっていた


 「全く、こんなに集まって……」
 「いいからドグさん、コレを見てくれ!!」
 「ん?………こ、コイツは……!?」


 アイトもドグの隣に立ち、視線を下に向ける


 「これって足跡ですか?……う~ん、どこかで」


 村の入口にある畑には、大量の足跡があった
 耕したばかりの畑に、犬みたいな足跡が満遍なく付けられている
 するとドグが重々しく言う


 「コイツはウェアウルフの足跡じゃ。しかもこんなに沢山……マズいな、どうやらここを狩り場にするための偵察に来たか」
 「ウェアウルフって、昨日のオオカミですよね」
 「うむ、ヤツらは知能が高く、決められた狩り場で狩りをする。そして新しい狩り場を見つけたら、必ず最初に下見をしてから来るのじゃ」
 「じゃあこれは下見の跡ですか?」


 足跡の数は、ざっと見ても30以上はある


 「下見でこれだけの数……恐らく、100以上の集団なのは間違いない」
 「ひゃ、ひゃく!?」


 驚く俺を尻目に、住人達は対策を練る


 「どうする、救援を……」
 「間に合うもんか、恐らく今日中に来るぞ」
 「じゃあ戦うしか」
 「いや、子供達や年寄りを避難させて……」
 「村を捨てるしかないのか?」 
 「だが、これから農繁期が来るんだぞ」
 「戦えるのは……」
 「バカ、オレたちみたいな人間の農民じゃCレートの魔獣も倒せない。魔帝族のみんなだけじゃやられるぞ」
 「数は100以上……」


 20人以上いる大人達が議論していた
 戦うか、逃げ出すか
 アイトは考える、もしかしたらやれるかもしれないと


 「あの、ドグさん、戦える人はいますか?」
 「なに?……まぁいない事はないが、100体も相手はできんぞ」
 「いえ、そうだな………10体ならどうですか?」
 「……何を考えてる?」


 アイトは、迷いなく言った


 「俺が戦います。考えがあるんです」




 アイトの声は、20人の大人達を黙らせた




 ***********




 村の入口を丸太のバリケードで固め、クワや剣を持った人間や、斧やハンマーを持った魔帝族が固めていた
 アイトは1人、バリケードの外で精神統一していた


 「………ふぅぅ」


 アイトの作戦はシンプル
 自身が開発した新技で、100匹の魔獣を殲滅する
 アイトには自信もあったし、なによりストレスをぶつけられる絶好のチャンスでもあった


 「………ミコト」


 もしミコトが奴隷になり、【服従の紋章】を刻まれでもしたら、アイトは間違いなくキレるだろう
 怒りは拳を鈍らせるというが、アイトはそうは思わなかった
 適度な怒りは、技と力を増幅させる
 だが怒りすぎると鈍るので、ここでガス抜きついでの新技試しだった


 風が吹き、アイトの鼻孔に獣のニオイが入る


 「……来たか」


 村の先の雑木林から、100匹以上のウェアウルフが現れる
 村人達は武器を構え、アイトは全身が発光し『雷駆ライク』を纏う


 灰色の毛並みのウェアウルフが、雪崩のように迫る
 アイトは構え、雷のように飛び出した




 「『雷影弾エクレール・ワルツ』!!」




 それは、超スピードの連撃。対集団用の新技
 雷駆のスピードで細かく動きつつ、魔闘気を纏った拳を急所に当てる
 ウェアウルフの雪崩を縫うように駆け抜けると、バタバタとウェアウルフが倒れていく


 「行ける……!!」


 70以上倒したところで、アイトの動きが鈍くなる
 ほぼぶっつけ本番の技に、身体が着いていかなくなってきたのだ


 「あと、10……やべッ!?」


 1体、打ち漏らした
 拳が外れ、村に向かって駆け抜けていく
 アイトは打ち漏らしを追うか残りを始末するか迷い、それが隙となった


 「しまッ……!?」


 アイトを襲わんと、大口を開けたウェアウルフが飛びかかる






 「『影刃えいじん』」






 次の瞬間、ウェアウルフの首が落ちた




 ***********




 アイトは一瞬唖然としたが、すぐに残りを始末する
 村に向かったウェアウルフは、鰐人の魔帝族が噛みついていた


 「お、終わった……」


 アイトはへたり込むと、そのまま大の字で倒れる


 「まだ改良が必要だな、魔力は持つけど体力が持たない、それに集中力も切れるし、50体ぐらいが限界かな……」
 「やれやれ、平気かの?」
 「あ、ドグさん。大丈夫ですか?」
 「バカたれ、そりゃこっちのセリフじゃ。任せておいて何だが、ヒヤヒヤしたぞ」
 「ははは……でも良かった」
 「はぁ……のう、急ぐ身なのは分かるが、もう一泊していかんか? 皆が礼をしたいと言って聞かんのじゃ」
 「えっと……疲れたんで、そうします」


 アイトが周りを見ると、村人が死んだウェアウルフを回収していた
 どうやら今日は祭りらしい


 しかし、アイトの視線は1匹のウェアウルフへ


 「……誰だ?」


 首の切断されたウェアウルフ
 とても綺麗で、美しいと思える一太刀だった




 周りを見渡したが、誰もいなかった




 ***********


 その日の夜は、村を挙げてのバーベキュー


 100体以上のウェアウルフは、村人全員の腹を満たした
 魔帝族と人間達は歌と踊りで盛り上がり、アイトも久し振りに騒ぐ
 たくさんの人に肩を叩かれ、アイトは賞賛される
 そこに人間や魔帝族はない。あるのは感謝のみ


 その日は、男達と外で寝た


 翌朝。パンを貰ってご飯を済ませ、ドグの元へ


 「キミには感謝してる。村の危機を救ってもらった」
 「いや、ガロンさんなら、助けてたと思うんです。今度はミコトを連れてきます」
 「ああ、待ってるよ」


 こうしてアイトは村を出発した
 次の目的地は深い森、そこを抜ければシェスタ王国だ




 たくさんの村人に見送られ、温かい気持ちに包まれながら歩き出す




 ***********




 しばらく歩いたアイトは立ち止まる
 村から出て2時間、天気も良く眺めもいい平原




 「誰だ……」




 アイトは振り返り、平原にある藪に向かう
 すると、1人の人間が立ち上がった


 「………」


 全身を紺色の忍び装束で固めた少女だった
 額当てに、口を覆うマスク、首元には長いマフラー
 鎖帷子の上に二の腕が見える羽織、袴は履いておらずスパッツのみ
 両手に徹甲、両足に脚絆のようなレガース、そして腰のベルトにはナイフが2本
 黒い目に黒いミディアムヘア


 アイトは構え、戦闘態勢を取る……が


 「……へ?」
 「………」


 少女が、アイトの足下へ跪いた
 アイトは虚を突かれ、ポカンとする
 少女はマスクを取り、アイトに向かって言う


 「『天魔てんまアーカーシュ』の命により馳せ参じました、黒崎九乃くろさきクナイと申します。『万象ヤルダバオト』の継承者、神世藍斗かみよのあいと殿とお見受けします」




 アイトは、ワケも分からずポカンとしていた



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