神様のヒトミ

さとう

33・最初の村



 アイトは『雷駆ライク』を使い、平原を駆け抜けていた
 障害物は飛び越え、木々を躱し、あえて木々の密集地帯を走る
 そうすることで瞬発能力を鍛え、細かい動きに対応できるようにする


 超近距離のでの『雷駆ライク』の制御が可能になれば、【壊神拳】との連携に生かすことが出来ると踏んでいた
 そして、魔獣も現れる


 『ガルルォォッ!!』
 『グルルルルッ!!』


 雑木林の中で、木々を掻き分けるように魔獣は現れる
 藪を飛び越え、ジグザグに走るのはウェアウルフと呼ばれる魔獣だ


 「よーし、追いかけっこだ!!」


 アイトは笑いながら走る
 ウェアウルフは、獲物を求めて駆け抜ける。慣れた走りは、この雑木林がウェアウルフの縄張りだからだろう


 「はっははーっ!! こっちこっち!!」
 『ガルルォォッ!!』


 アイトはウェアウルフを挑発しながら雑木林を駆ける
 藪を跳び、木々を躱し、岩を飛び越えながら走り続ける


 「たしかコイツは……Cレートだな。近くには村もあるようだし、ここらで狩っておくか」


 アイトはウェアウルフを狩ることにした
 ウェアウルフはアイトの真後ろ8メートルほどの位置に2匹
 アイトはジャンプしてクルリと反転、木々を足場にしてウェアウルフへ向かって跳ぶ


 「【跳矢とびや】!!」
 『ギャインッ!?』


 右拳を突き出し、矢のようにウェアウルフの顔面に突き刺さる拳
 殴られた衝撃で首が折れ、そのまま動かなくなった


 『グルルルルッ!!』
 「行くぜ!!」


 アイトは構え、ウェアウルフはジャンプしてのど笛を狙う
 しかし、アイトには絶好のカウンターチャンスであった


 「【牛角ぎゅうかく】!!」
 『グギャッ!?』


 ウェアウルフの腹にショートアッパーが突き刺さる
 魔闘気を込めた一撃は、ウェアウルフの内臓に深刻なダメージを与えた


 「へへ、俺の勝ち」


 ウェアウルフは、そのまま力尽きた
 アイトはウェアウルフの首を切るとドロリと血が流れる
 手に電気を纏わせて心臓を動かしてやると、噴水のように血が噴き出した
 ガロンから習った血抜きの方法であり、肉を新鮮に保つため大事な事であった


 「村に持って行けば売れるかな、毛皮や牙もあるし」


 アイトはロープを取り出し、木の枝を集めてソリを作る
 ソリにウェアウルフを乗せて引っ張る


 「うん、行ける。早く村に行くか」


 アイトはゆっくりとソリを引き、障害物を避けながら歩き出す
 予想では、あと1時間も進めば村に到着する


 「………ん?」


 アイトは何気なく振り返る


 「………気のせいか?」


 一瞬だが視線を感じたような気がして振り向いたのだが、誰もいなかった
 アイトは首をかしげて歩き出した




 「………」




 ミモの木の裏に、誰かがいた
 息を殺していたが、気付かれたのにショックを受けていた




 その人物は、まるでくノ一のような衣装だった




 ***********




 「な、なんだよ……コレ」


 アイトの目の前には、小さな村があった
 アイトのいた集落よりは大きいが、住宅は20軒ほどしかない
 間隔もバラバラで、家の近くには畑があるようだ
 村の中を川が流れ、家畜を飼っているのか鳴き声が聞こえる
 住人も農民で、日陰でお茶を飲んだり談笑していた。どうやらお昼休みのようだ


 奴隷がいるとは聞いていたが、アイトの目には信じられなかった


 「おーいブルさんや、お昼にしようや」
 「待ってくれオヤジさん、コイツらに水をやってからな」
 「ははは、後ででいいだろう? ブルさんは家畜に優しいなぁ」
 「がっはっは、オレも牛人の魔帝族だからな。ほっとけねぇんだわ」


 大きな牛の魔帝族が、牛の家畜に水を与えてる
 しかし、人間も笑いながらソレを手伝っている


 「ブッタ、メシだぞー!!」
 「おう、もうすぐ終わるから待ってろ!!」
 「ブッタさん、終わったら遊ぼーぜ!!」
 「ったく、メシって言っただろ? 仕事が終わったらな」
 「はーい!!」


 豚みたいな魔帝族が薪割りをし、人間の子供がじゃれついてる
 ポカンとしたアイトは目立つのか、近くに居た魔帝族が話しかけてきた


 「おや、旅人ですかな。しかもウェアウルフとは……」
 「ふぁ!? あ、どど、どうも。その、えっと」
 「ははは、落ち着きなされ。そのウェアウルフは?」
 「ふぅー……はい。その、途中で狩りました。それで今日はこの村に1泊しようと思って、それでお土産にと……」
 「ほぅ、あいにくですがこの村に宿はないので……よかったらワシの家に来ませんか?」
 「え、でも……いいんですか?」
 「はい。ワシは村の案内人みたいなモンで、それにそんな美味そうなウェアウルフを見せられたら、きっと村で取り合いになるでしょう。まぁつまり、早いモン勝ちですわ」
 「あ、はは……じゃあ、お願いします」
 「よろこんで、では今日は家内にウェアウルフの肉を使った鍋を作らせましょう。ワシもとっておきの酒を出しますので」
 「お、お世話になります」


 村に到着して1分で今日の宿が決まり、まだアイトは困惑していた


 「おお、ワシは犬人のドグ。まぁ見ての通りのジジィです」
 「俺はアイト。えーと……旅人です」


 ソリを引きずりながら村へ入ると、案の定注目された


 「おうおうドグ、そいつは旅人か? しかも立派なウェアウルフじゃねぇか」
 「かっかっか、早いモン勝ちじゃい」
 「ちっくしょう、なあ兄ちゃん、牙を一本3000コインでどうだい?」
 「おい!! オレは5000出すぜ!!」
 「じゃあオレは8000だ!!」


 ウェアウルフに引かれ、人間と魔帝族が集まってきた
 アイトは対応に困り、ドグに任せようとする


 「よぅし!! ではウェアウルフの牙、1本3000コインからスタートじゃ!!」
 「5000!!」
 「8000!!」
 「ちっくしょう1万でどうだ!!」


 ドグはノリノリでオークションを始めた
 アイトは訳も分からずボーゼンとしてると、騒ぎを聞きつけた村の住人が続々と集まる


 「あ………」


 アイトは気付く
 人間も、魔帝族も、みんなが笑ってる
 先入観にとらわれ、アイトはこの世界を見ていなかった


 「自分の目で見ろ………か」




 アイトはオークションを眺めながら、そんなことを感じた



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