神様のヒトミ

さとう

32・理解



 「よし……この辺でいいか」


 アイトはシェスタ王国へ向かう途中の山の頂上へいた
 周囲を確認すると野営の後があるが、もう大分昔の物らしい


 「取りあえず、確認はしないとな」


 そう言うと、アイトの右目が変わる
 目の周囲の皮膚が発光し、黄金と虹色の眼球に変わる


 「まずは……《森羅万象・大開眼》」


 アイトは、自身の能力を確かめるために、今日は山で野営をする
 自身の能力なのに知らないコトが多すぎるので、身体に負担をかけない範囲で、いろいろ試して見ることにした


 アイトはそのまま空を見る


 「………青いな」


 空は青いまま、特に何かが表示されるわけではない
 そのまま地面を見るが、こちらも変化はなかった


 「じゃあ……コイツと、コイツ」


 アイトは葉っぱと石を拾い、右目で見る




 〔落石〕
  ○落ちていた石
  ○どこにでもある石、投石可


 〔ミモの葉〕
  ○〔ヒューム地域〕に広く分布する木
  ○特に効果はない




 「ふむ、どうやら「モノ」と「ヒト」は見える……大陸とか、空とか……俺が全体を把握できない、捉えきれないモノは情報開示出来ないのか……」


 アイトは試しにミモの木を見たが、キチンと情報は見えた
 次はミモの木に近づき、右目が木の幹に触れる寸前で見たが情報は見えなかった


 「それに、この〔究極開示(レベル1)〕って何だ? 成長………待てよ、アイツらのアビリティにもレベル表示があったな……」


 アイトはそこまで考えて、次に移る
 ある意味、アイトの力の本領でもある




 「《万象神ヤルダバオトの瞳》……コイツはちゃんと調べないと」




 ***********




 アイトは右目を使い、セピア色の世界【黄昏世界アーヴェント】へ来た


 「ふぅ、言っちゃ悪いけど……」
 《味気ない世界、だろう?》
 「うぉぉッ!?」


 アイトの足下には、小さなウサギがいた
 真っ白で目が赤く、手のひらサイズの大きさのウサギだった


 《話は聞いてるよ、ヤルダバオトの瞳を持つ人間が現れたって、ボクたちの世界は大騒ぎさ》
 「そ、そうか……それで、聞きたいことが」
 《もちろん、その瞳についてだろ?」
 「ああ、コイツを使いこなさないと、ミコトを救えない」
 《いいよ、ボクたちが知ってることを教えてあげる。なるべく急いでね》
 「いや、ゆっくりでいいよ。今日はここで野営するから」


 アイトがそう言うと、ウサギはアイトの眼前まで浮遊する


 《バカ言っちゃいけない、いくらその瞳を持っててもキミは人間だよ? ある程度は平気だろうけど、長時間この世界に居たら、身体と心が離れて死んじゃうよ?》
 「……へ? なんだよそれ?」
 《気が付かなかったのかい? まぁそうか、最初の開眼では怒りに支配されてたしね》
 「えっと……?」
 《ちょっとコッチに》


 ウサギがふよふよ浮き、5メートルほど離れる
 アイトは取りあえず付いていく


 《気が付かない?……後ろを見て》
 「後ろ?」


 アイトは振り返る


 「………え」
 《分かっただろ?》




 そこに居たのは、セピア色のアイトだった




 ***********




 《この世界に物質は持ち込めない。今のキミは精神体でボクたちの世界に干渉してる、ヤルダバオトなら問題ないだろうけど、キミは人間だからねぇ……》
 「あわわわわ……ししし、死んでるの……!?」
 《まだ・・死んでないよ、でも長時間は居ないほうがいい。じゃあさっそく話すけど大丈夫?》
 「マッハで頼む!! メモ取るから、早く!!」
 《わ、わかったよ。お? みんなも出てきた、おーい、ヤルダバオトが来たぞー》
 「うぉぉぉーい!? 早くしてくれぇぇぇーッ!!」


 小さなウサギやリス、犬や猫や昆虫たちが集まってきた
 アイトは囲まれ質問され、気が付くと15分は経過していた


 「………な、なんか気分が……」
 《あのね、15分やそこらじゃ死なないよ》


 アイトは地面に座り、身体中に小さな動物たちがいた
 可愛らしく、アイトは手を伸ばすが触れられない


 《まず、ボクたちはこの【黄昏世界アーヴェント】の住人、【黄昏精霊トワイライト・ニンフ】だよ。この世界じゃ大したことない小さな精霊だけどね》
 「大したことないって、あんな強かったのにか?」


 アイトは思い出す
 蝶々が宿った右腕は、炎を切り裂く青い炎が宿った
 トカゲが宿った足は、大地を揺らし変則的なスピードを出せた
 キツネが宿った左腕は、集落全体を癒やした


 《この世界と【生物世界ラーミナス】では法則が違うからね。だからボクたちからはあっちに干渉出来ないし、見ることしか出来ない。キミという中継地点を得て初めて力を出せる。まぁ微々たる力だけどね》
 「び、微々たるって……アレで?」
 《うん。ボクたちの世界の上位個体なら、もっと強い力を出せるよ。キミも頼めば力を貸してくれるんじゃない?》
 「……どんなヒト?」
 「ヒトじゃないけどね。ボクたちは【黄昏の七ツ星トワイライト・セブンスター】って呼んでる。みんなヤルダバオトの友達だったんだ、だから……ヤルダバオトが【虚空世界ヴァニタス】の神たちに殺されたときは、みんな悲しんで……怒ってた》
 「ヤルダバオト……」
 《うん、彼女は優しかった。ボクたちに触れることも出来たし、可愛がってくれた》


 アイトはウサギに手を伸ばす


 「……あ」


 だが、その手はすり抜ける


 《キミは優しいね。ありがとう》
 「………」


 ウサギはふよふよ浮き、アイトの側に来る


 《こっちの世界に入れるのは、1日1時間ほどが限度だと思う。それ以上は危険だよ》
 「わかった。そういえばさ、みんなには属性ってないのか?」
 《属性? ああ、ボクたちにそんな概念はないよ。むしろ人間といい魔帝族といい神といい、なんでそんなモノに縛られてるか分からないね。キミだって使っただろ? 炎を切り裂く炎とか》
 「……まぁ、確かに」
 《ボクたちの力を使うときは気を付けて、キミはヤルダバオトの瞳らあるからまだマシだけど、本来は流れるべきでないモノがキミの中を流れて外に出る。魔経絡もダメージを受けるよ》
 「それは経験済みだけど……」
 《うん、キミの魔力なら睡眠を取れば修復される。それに壊れて治って、壊れて治ってを繰り返せば、魔経絡も太く頑丈になるかもね》
 「そうか? なんかホネみたいだな」
 《ははは、キミ達が使う魔術と、ボクたちを使う魔術は全く別。そうだね……《黄昏魔術》とでも名付けようか》
 「お、いいね。カッコいいぜ」
 《ははは、ありがと》


 この世界は、まだ分からないことがある
 でも、今はそれでいいとアイトは思う
 《黄昏妖精トワイライト・ニンフ》たちから力を借りて放つ、《黄昏魔術》
 この力があるだけでも、ありがたい


 「そろそろ行くよ、その……一緒に行ければいいんだけど」
 《ありがとう、でもムリだよ。キミの世界で使われたボクたちは、またこちらに戻るけど、ずっと存在できるワケじゃない。キミと同じ……ボクたちは、外に長く居れない》
 「……」


 アイトはもう一度手を伸ばし、小さなウサギに触れる


 「……触ってみたいな、きっとすっごくフワフワなんだろうな」
 《………》




 ウサギは目を閉じて、嬉しそうに鳴いた




 ***********


 目を解除すると、いつもの光景が広がる
 色付いた世界が凄く眩しく感じる


 「……メシにするか」


 アイトはカバンから干し肉とパンを取り出し挟んで食べる
 ドライフルーツをデザートで食べ、水を飲む


 時刻は2時
 まだ日は高く、暗くなるには早い


 「どうすっかな……『雷駆らいく』を使えば近くの村まで行けるけど……」


 アイトは不安だった
 オババとの授業で一般的な知識は得たが、まともな人間と喋ったことがない


 「それに、奴隷もいるって話だし……」


 アイトにとって魔帝族は家族であり仲間
 不当な扱いをされている魔帝族を見たら、自分を抑える自信がない
 今のアイトは、人間より魔帝族を優先させる思考にあった


 だが、魔帝族側にも人間の奴隷がいる
 人間だけが魔帝族を奴隷のように扱い、魔帝族は人間を手厚く扱うと言うことは、人間族に舐められると、【魔帝十二神将】の【火天アグニ】が猛反対したとか


 「どっちもどっちか、でも……ミコト」


 アイトは割り切れない
 ガロンに託されたミコトが、人間によって不当な扱いを受けていたら、その人間を殺す覚悟がアイトには出来ていた


 「………行こう、一刻も早くミコトを、まずはそれからだ」


 アイトは立ち上がると、全身に紫電を纏う


 「『雷駆らいく』」




 アイトは近くの町に向かうため、全力で走り出した



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