神様のヒトミ

さとう

31・天魔



 アイトが裏切り、仲間の3人に重傷を負わせた
 そのニュースは、【救世主】たちには衝撃的だった


 「何でだよ、藍斗……」


 洋二は、ベッドの上で頭を抱えていた
 隣にはこの国の次女姫、メルドが眠っている
 洋二が藍斗のニュースを聞き、頭を抱えていたときに、洋二を慰めるために部屋へやって来た。そしてそのまま洋二は流され、メルドを抱いてしまったのだ


 まるで貪るようにメルドを抱いた洋二
 洋二は後悔した。疲れ果てるまで抱き、眠れば夢だったのではと思えるかもしれないと、現実から逃げようにしてしまった
 洋二はメルドの頭をなでる


 「ん……ヨージ、さま?」
 「悪い、起こしたか」
 「いえ、その……」
 「ん?」
 「ヨージ様は、平気ですか?」 
 「………」




 洋二は、答えられなかった




 ***********




 藍斗は【救世主】ながら人間族を裏切り、迎えに来た仲間に重傷を負わせた
 藍斗の目的は、魔帝族と手を組むこと


 そんな噂が城に広がり、【救世主】たちは困惑した


 「まさか行方不明の……えっと、アイト? がねぇ」
 「うん……怖いね」


 木城エミリと田村エリも、そんな1人だった
 そこに来たのは2人の男子
 訓練帰りなのか汗を掻き、訓練用の上着を脱いでランニングシャツだった


 「よう、アイトの話をしてんのか?」
 「全く、ワケわかんねーよな。死んだと思ってたら裏切り者かよ」


 刈り上げの加藤浩太郎かとうこうたろうと、ツリ目の田辺幸司たなべこうじは言う
 普段はあまり喋らないが、この話題では盛り上がった


 「まぁね。みわも裕子もヤバいみたい。両腕が千切れて顔面が爆発したとか……」
 「う、うぅ……やめてよエミリ、怖い」
 「なーに言ってんだよ田村、オレたちだって戦う可能性はあるぜ?」
 「だな、広大たちが外に出れたんだ、今度はオレたちも……」
 「うぅぅ、いやだなぁ……」


 ワイワイ盛り上がっていると、1人の少女が通り掛かる


 「あ、あの……」
 「ん? おぉぉ、何かな?」
 「迷子かい? オレたちが案内してやるよ」


 フワッとした長い黒髪の少女が、4人の側へ
 美少女の登場に、浩太郎と幸司は目を輝かせた


 「えっと、アナタ……ん? 今までいたっけ?」
 「エミリ、失礼でしょ? でも……うーん」


 すると、今度は別方向から声が


 「いた!! ちょっとエル、勝手にフラフラすんなっての」
 「あ、せんぱーい!!」
 「おっと、抱きつくなっての!?」


 現れたのはハニエル
 どうやらエルを探していたらしく、少し息が切れていた


 「ゴメンねみんな、この子はエル。いずれ紹介があると思うけど、みんなと同じ【救世主】よ」
 「え!? マジっすか!?」
 「うっそ!? 追加の【救世主】かよ!?」
 「よ、よろしくです」




 こうして、エルは【救世主】たちの一員となった




 ***********




 とある森の中、木々の上を渡りながら走る人影があった


 小柄な人影は、まるで地面を走るような感覚で木々を飛ぶ
 この世界では珍しい忍び装束を纏っている


 忍び装束と言っても大部分が弄られている
 上半身こそ忍び装束だが、二の腕は剝き出しで、胸元には鎖帷子が見える
 下半身はズボンではなくスパッツで、剝き出しの太ももに脛当てと足袋を履き、腰にはベルトを巻き、そこからナイフが2本差してある
 背中にはショルダーバッグが見え、装いは旅人に見えなくもない
 額当てを巻き、口元は布で隠れている
 髪は黒いミディアムヘアで、顔立ちはかなり可愛いかった


 少女は、まるでくノ一だった
 木々を渡りながら、確認するように呟く




 「『天魔てんま』様、『万象ヤルダバオト』は、私が必ず守ります」




 くノ一少女は、木々を跳んで進む



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