神様のヒトミ

さとう

30・慈悲



 「たっだいま~……ありゃ? アドナイだけ?」
 「はい。他の方々はお仕事中ですよ。それより……アナタがいながら、何をしていたのですか?」
 「うぐ」


 【無限光の11人アインソフオウル・イレブン】専用の会議室に報告にやって来たハニエルは、さっさと結果を報告して帰ろうとしていた
 しかし、1番最悪なヤツに捕まり、げんなりした


 「3人の【救世主】は重傷、しかもやったのは同じ【救世主】と来ましたか。全く、私の『千里眼』がもっと万能なら、こんな結果にはならなかったかもしれません」
 「だよねだよね、じゃああたしはこれで……」
 「お待ちなさい」


 アドナイは、立ち去ろうとしたハニエルの首根っこを掴む


 「な、なに? あたしはもうオフなんだけど……」
 「ふむ……【救世主】たちの監督役として同行し、少し戦闘を眺めて後は昼寝をしていただけのアナタが……これからオフ、ですか」
 「見てんじゃん!? バッチリ見てんじゃん!!」


 ハニエルはじたばた暴れ、アドナイはにっこり笑ったまま


 「ですが丁度いい。アナタには仕事を与えます」
 「うぇぇ~………」
 「いえ、きっと驚きますよ? それに楽しいです」
 「………」


 ハニエルが1番嫌いな、人形のような笑み
 精一杯のイヤな顔を作り、ハニエルは聞く


 「……なにすればいいの?」
 「なに、簡単ですよ」


 アドナイは、ここでようやくハニエルから手を離す
 ハニエルは向き直る




 「新たな救世主・・・・・・様に、町を案内してあげて下さい」




 ハニエルは、口をポカンと開けた




 「……は?」




 ***********




 ハニエルがやって来たのは、城に隣接してる教会
 かの【救世主】が現れた場所で、普段は礼拝堂として解放してる場所


 その教会の更に隣に、小さな家がある
 そこはシスターたちが暮らす家で、普段は誰も近づかなかった


 「なーんでこんな場所に……?」


 ハニエルはドアをノックする


 「こんちわー、【救世主】さまに会いに来ましたー」
 「は~い」


 どこか間延びした、のんびりした声
 すると、フワリとした長い黒髪の少女が現れる
 ハニエルが見たこともない服は、異世界の物だとわかった


 「え~っと、アンタが……」
 「はい!! わたしが新しい【救世主】にして【無限光の11人アインソフオウル・イレブン慈悲ケセド】の初見恵留はつみえるです!! どうぞエルとお呼び下さい!!」
 「救世主……はぃぃ!?」


 ハニエルは、思わずマヌケな声を出した
 アドナイは何も言っておらず、ただ町を案内しろとしか言ってない


 「あんのクサレメガネ……」
 「先輩? どうしたんですか?」
 「いえ、何でも………先輩?」
 「はい!! 先輩です。先輩ですよね?」
 「え、あ、うん。まぁ……」


 フワッとしたペースが掴みにくいとハニエルは考え、さっさと用件を話す


 「あのさ、アンタに町を案内しろって言われてんの。いくわよ」
 「はい!! お願いします!!」
 「えっと、もっと声のボリューム落として……」




 こうして、ハニエルとエルは町に出た




 ***********




 エルと買い物しながら歩き、カフェでお茶をする
 なんだかんだでハニエルは楽しんでいた


 「ありがとうございます先輩、こんなに服を買って貰っちゃって……」
 「いーのよ、あたしの奢り。異世界の服しかないんでしょ? 全く気の利かない連中で申し訳ないわ……」
 「い、いえ。わたしもこの世界に来たのは1週間前ですし、それまではシスターさんの服を借りたりしてましたから」


 紅茶を啜りながらハニエルは聞く
 ハニエルがちょうど国境の集落へ行ってる時に来たようだ


 「アンタさ、どうして【救世主】に? ただでさえ19人……いや、20人もいるのに。追加で来たなんて聞いたことないけど」


 エルは、苦笑しながら言う


 「えっと、実はわたし……異世界の交通事故で死んじゃって。それで気が付いたら真っ黒な空間で聞かれたんです。『万象ヤルダバオト』を助けてあげて下さいって……よく分からなかったけど、死んじゃうのは怖かったから……」
 「……」


 ハニエルは訝しみ、聞いてみる


 「あのさ、それって……「ヒト型の鱗粉」が言ったの?」


 それは、【救世主】が言っていた話
 彼らは「ヒト型の鱗粉」によってこの世界に来たと言っていた












 「いいえ? 『慈愛ミストラル』っていう女の人でしたよ?」



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