神様のヒトミ

さとう

29・故郷



 「う、ぐ、ぅぅぅ······」


 アイトの右腕と足が痛み出す
 どうやら蝶々とトカゲの力が強すぎ、アイトの魔経絡にダメージを与えたらしい
 アイトは、この力を早急に調べる事に決める


 しかし、アイトは立ち上がる
 やるべきことがある


 「みんなを、埋葬しないと······」


 アイトはガロンの家に向かい、気が付く  
 家の柱に、グリスがいた


 「へ、へへ······さすがだな、アイト」
 「ぐ、グリスさん⁉ 生きて······良かっ」
 「悪りーな、もう、持たなそうだ······へへ」


 グリスは片腕が消失し、全身に火傷を負っていた
 目は真っ白に濁り、今にも死にそうだった   


 「アイトよぉ、頼みがあるんだわ」
 「はい······」


 アイトはしゃがみ、グリスの声を聞く
 今にも消えそうな、か細い声を


 「ガロンの家の、キッチンの床下に······アイツの、とっておきの、酒がある。ちょっと、持って来てくれ······」
 「さ、酒?」
 「あぁ、頼むわ」


 アイトはワケが分からなかったが、言う通りにする
 キッチンの床下に切れ込みがあり、そこを開けると高級そうな酒瓶が何本かある  
 アイトは、未開封の1本とグラスを持ってグリスの元へ


 「へ、へへ······悪いなガロン、約束、だからよ」


 アイトは酒を注ぎグリスへ渡す
 残った1本の腕を持ち上げ、グリスは一気に煽る


 「はぁぁ······美味い」


 グリスの顔は晴れやかだった


 「アイト、よく聞け。ガロンの家の2階、ガロンとミコトの寝室のベッドの下に、お前宛のプレゼントがある、出発する前に持っていきな。それと、ミコトの行方だ」
 「ミコト······何処へ?」
 「へへ、ちゃんと情報は手に入れたぜ。ミコトはデューク王国が管理する、魔帝族収容施設がある〔シェスタ王国〕に向かった。そこで選別されて、奴隷として売られて行く。場所はここから東、お前のプレゼントに地図もあるから確認しとけ」


 グリスの息遣いが弱くなっていく


 「それと、ミコトを助けたらガロンの故郷とミコトの故郷へ行くんだろ? 気を付けろ、【魔帝十二神将まていじゅうにしんしょう】は、人間を恨んでるヤツもいる。ガロンの奥さんのモーラは、【火天かてんアグニ】の副官であり現妻だ」
 「······はい」


 話終わったグリスは息を吐く


 「へへ、まさか······お前に看取られるとはなぁ」
 「グリスさん······俺、楽しかったです」
 「オレもだ。へへ、キレイないい目だ。オババやオピスの言ってたことは、間違いなんかじゃなかった」


 グリスの瞳から、涙が溢れ出す


 「アイト、情報料は······ミコトを必ず助けることだ。約束しろよ······?」
 「はい、必ず······‼」
 「へ、へへへ······アイトよぉ、ちょっと······あの世で······アイツ等と······いっ、ぱ······い」




 グリスは、静かに息を引き取った




 ***********




 アイトは、集落の外れに全員を埋葬した


 ボロボロの身体を引きずり、1つ1つ穴を掘り、丁寧に埋葬した
 アイトの涙は止まらず、脱水症状を起こしかけた
 集落の全員を埋め、大きな石を墓石にする
 ナイフで全員の名前を掘り、アイトは手を合わせた


 「ガモンさん、グリスさんだけじゃズルいよね······」


 アイトは、ガモンの墓石に酒をかける
 ガモンだけじゃなく、全員の墓石に酒をかけると、何故か右目が疼き出した


 「······何だ?」


 アイトは、ヤルダバオトの瞳を使う
 セピア色の墓地が広がり、アイトの足元に小さなキツネがいた


 《アイト、おいらにこの墓地を、この集落を守らせてくれないかい? 頼むよ》
 「······うん、頼むよ」
 《おいら······ここのみんなが大好きなんだ》


 キツネはアイトの左手に宿る
 瞳を解除し、アイトが左手を地面に当てると、温かい何かが地表を伝わる


 「すげぇ······」


 墓地だけじゃない、集落全体を包んだ何か
 墓地から花が咲き誇り、集落全体が春のように明るくなる
 大木からは桜のような花が咲き、柔らかい風がアイトを包む




 アイトは身体の痛みも忘れ、風を身体で感じていた




 ***********




 ガロンの家に戻ったアイトは、疲れ果ててベッドへダイブ
 気が付くと朝になり、残り物で朝食を済ませる


 「確か、俺へのプレゼント······」


 ガロンとミコトの寝室へ入り、ベッドの下を探ると、大きなダンボールみたいな箱が出てきた


 「これは······おぉ⁉」


 中には新品の服とカバン、大きな包みと、さらに黒い箱が入っていた


 そして、2通の手紙
 片方はアイトへ、もう片方はミコトへと書いてある




 アイトは自分宛の手紙を破り読んで見る




 ***********


 『アイトへ
  この手紙を読んでいると言うことは、オレは既に死んでいると言うこと
  だろう。【救世主】たちはオレたちを狙い、この集落へ進行して来ている
  お前やミコトを巻き込まない為に、ウソをついた。済まなかった、アイト
  オレたちが死んだら、頼みがある。ミコトを連れてミコトの故郷を探してくれ
  これはお前にしか頼めない。そして出来るならミコトの両親を探してくれ
  苦労をかけてばかりで済まない


  箱の中は、お前専用の防具だ
  魔帝族の鍛冶屋に作らせた、お前だけの防具
  その名も《天上天下てんじょうてんげ
  その服は破れても魔力で自動回復し、耐刃・耐熱
  に優れている。荒っぽいお前にはピッタリの装備だ


  もう一つの黒い箱には、オレが親父から受け継いだ
  世界に7つしかない《魔装具カラミティアームズ》の1つ《魔拳まけんイデア》が入っている
  その武具は、持ち主に合わせて成長する、お前だけの武具だ


  最後の包みにはこの世界の地図と、お前が今まで倒した
  モンスターの魔核を換金した金が入ってる。お前の金だが、考えて使え


  最後に、オレはここに宣誓する
  アイトを【壊神拳】正当後継者として認める
  そしてここに第四番目の免許皆伝を与えることを


  アイト、お前はオレの自慢の息子だ
  妹のミコトを頼んだぞ


                 ガロンより


 ***********




 アイトは手紙を抱きしめ静かに泣いた
 そして、立ち上がり着替える


 「これが《魔拳イデア》か。ただのグローブにしか見えないけどな」


 《天上天下》は黒と赤のボアコートみたいなデザイン。しかもフード付き
 しっかりした作りで、動きやすい
 靴もカバンも同じデザインで、アイトの好みだった
 《魔拳イデア》は、黒い指ぬきグローブにしか見えず、鉄板が仕込まれているが、どう見ても伝説の武器には見えなかった


 「地図と、お金······うおっ⁉」


 財布と袋があり、袋をひっくり返すと100万コインがジャラジャラと落ちてきた


 「俺が狩った魔獣って······マッドコングだよな? アイツの魔核って、そんなに大金なのか?」


 アイトは肩掛けカバンにコインをしまい、何枚かを財布に入れてポケットへ
 自分宛の手紙とミコト宛の手紙をカバンにしまい、1階に居りて旅の支度をする


 「う〜ん、食料は最低限で、町に着いたら魔導車を買って······」


 干し肉やドライフルーツ、水やパンを数日分カバンへ
 カバンはパンパンになり、準備は終わった


 「······よし」


 アイトは最後に家の裏へ回る


 「ガモンさん、見てて下さい」


 アイトは、アダマンタイト石の前に立つ
 魔闘気を練り、息を整える
 迷いと雑念を捨て、1つの決意を拳に乗せる


 ミコトを救い、ガロンの願いを叶える


 アイトは目を開き、全力で拳を打ち込む
 インパクトの瞬間に、魔闘気を回転させる


 「『羅渦らうず』‼」


 今までにない手応えと共に、アダマンタイト石は砕け散る


 「壊神拳かいじんけん皆伝かいでん第四番だいよんばん第一種だいいっしゅ十五号じゅうごごう神世藍斗かみよのあいと


 アイトは、この集落で得た誇りを名乗る
 ガロンに認められた、第一種の15番目の使い手として
 免許皆伝の4番目としての誇りの名を




 「行ってきます───父さん」






 アイトの長い旅が始まった



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