神様のヒトミ

さとう

28・大開眼



 アイトは、目に映る全てが新しく感じた


 「へ、気色悪ぃ目だな。それがお前の【異能アビリティ】かよ?」


 広大がニヤつく
 恐らく、訓練を受けた自分と、魔帝族に拾われたアイトでは、練度が違うとでも言いたいのだろう
 アイトは、改めて自分の中のアビリティを確認する


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 【神世かみよの藍斗あいと】 ♂ 15歳


 ◎【異能アビリティ
 1・《森羅万象しんらばんしょう大開眼だいかいがん
  ○見たモノの情報を得ることが出来る
  ○究極開示(レベル1)
  ○自身より格下相手の動きを完全に読み取る


 2・《万象神ばんしょうしんヤルダバオトのひとみ
  ○隣合う世界に干渉することが出来る


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 アイトは眉を潜める
 隣合う世界も気になるが、森羅万象の効果も気になった
 アイトは、広大を相手に実験する


 「来いよザコキャラ1号、ナメた口を叩けないようにしてやる」
 「ンだとテメェェェェッ‼」


 アイトは広大を挑発し、広大を


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 【時枝ときえだ広大こうだい】 ♂ 16歳


 ◎【異能アビリティ
 1・《ハイマッスル》
  ○腕力、握力が上昇する
  ○魔術耐性がアップする


 2・《クリアラッシュ》
  ○見えない手を作り出す(レベル3・最大数5)


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 広大は【第二異能ダブルアビリティ】まで目覚めている
 だが、アイトには何も響かない


 「要は腕力が強いのと、見えない手を出すだけか······格下だな」


 そう自覚した瞬間、広大の動きが手に取るように理解出来た


 「オォぉラララララッ‼」
 「【蛇乱じゃらん】」


 アイトは、突き出した左手を操り拳を流す
 左手が蛇のようにうねる
 見えない手も混ざったラッシュだが、アイトは全てを弾いた


 「て、テメェ⁉ なんで⁉」
 「バーカ、何が『クリアラッシュ』に『ハイマッスル』だよ。俺には全てが覧えるんだよ、ザコが······‼」


 アイトは『雷駆ライク』で懐へ潜り込み、魔闘気を込めた左手でラッシュを繰り出す


 「【連牙れんが】‼」
 「オブべぇっ⁉」


 内臓を潰す連打を繰り出し、血を吐き出して吹っ飛ぶ
 アイトは広大から視線を外し、残りの2人を見る


 「と、時枝くん‼ 貴方、正気なの⁉」
 「あわわ、不味いよぉ‼」


 アイトは興味なさそうに言う


 「うるせぇボケ、テメェの身の心配でもしてろ」
 「······いいわ、ケガじゃ済まない、腕の1本は覚悟してもらうわよ」


 みわの身体から炎が吹き荒れる  
 アイトは、冷静にみわを見た


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 【日野ひのみわ】 ♀ 16歳


 ◎【異能アビリティ
 1・《身炎》
  ○身体の一部を炎にする(レベルMAX・全身炎)
  ○身に着けてる物も身体の一部とする
  ○物理無効
  ○指定した相手の身体を炎に変える


 2・《不死鳥》
  ○身体を作り変える


 3・《大火》
  ○炎の規模を自由に操る


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 物理攻撃が効かない、恐らくこのアビリティでオババやガロンたちの攻撃を無効化したのだろうと、アイトは推測した
 アイトはここで、右目を使うことにする
 みわの身体が燃え上がり、炎が吹き荒れる


 「殺しはしないけど、覚悟なさい」
 「『開眼かいがん』」


 アイトは呟き、右目が発動する






 「·········え」






 全ての色が、セピア色に染まった




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 そこは、まるで古い写真のような色だった


 草も木も、人も死体も、風も炎も
 全てがセピア色で、全てが停止していた


 「······これが、隣合う世界?」


 アイトは目の前の炎に触れるが、まるで雲を掴むようにすり抜ける


 「この世界に入れる目······凄いな、つまり時間停止······ん?」


 アイトは、背後に気配を感じ振り向く


 「······へ?」


 そこに居たのは、ちいさな蝶々たち
 オババの死体の周りを飛び回る、カラフルな羽の蝶々
 アイトはゆっくりと近づく


 『うぅぅ······ゼオ、ゼオぉぉ』
 『また、死んじゃったよぉぉ』
 『オピスも、ガロンも、うぇぇぇん』


 よく見ると、蝶々ではなかった
 20センチほどの小さな人間に、蝶の羽が付いている
 女の子だろうか、全身が発光し、全員が涙を流していた


 「あ、あの······」
 『え?』『な⁉』『うそ、なんで⁉』


 3匹の蝶々は振り向くと、アイトを見て驚いていた
 すると今度は足元に、二足歩行のトカゲが来た


 『落ち着けよ、コイツはヤルダバオトの瞳を持ってる。どうやらソレのお陰だな』
 『ホントだ、懐かしい······』
 『うん、キレイな瞳······』
 『また会えた······』


 アイトの周りを蝶々が舞い、キレイな鱗粉が落ちる


 「えっと、ここは『隣り合う世界』······ですか? おわ⁉」


 アイトは思わず敬語になる
 すると、周囲から小さな何かが続々と現れた


 どれも小さく愛らしい
 犬やネコ、鳥や魚、全てが発光し宙に浮いてる
 アイトの足元のトカゲが言う


 『ここは【黄昏世界アーヴェント】さ。【虚空世界ヴァニタス】と【生物世界ラーミナス】とは別の、独立した世界。ここに干渉できるのは、『万象ばんしょう』の名を持つヤルダバオトだけなんだ。キミは数久しぶりのお客様だ』
 「べ、別の世界……」
 『うん。【虚空世界ヴァニタス】の神たちに、ヤルダバオトは滅ぼされたからね、どういう因果か、キミにその目が受け継がれたってワケさ』


 トカゲと話していると、蝶々たちが暴れ出した


 『ねぇ‼ アナタ強いんでしょ、お願い、ゼオの仇を討って‼』
 『そうよ、絶対に許せない‼』
 『お願い、あたしたちの力をあげる』


 すると蝶々たちが光の玉となり、アイトの右腕に吸い込まれる
 さらに、足元のトカゲも光の玉になった


 『この世界と、キミの世界の法則はまるで違う。ボクたちみたいに小さな《黄昏精霊トワイライト・ニンフ》でも、キミの世界では莫大な力になる』
 「なんで、力を······?」
 『······たとえ、感じることも、見ることも出来なくても、ボクたちはずっとここの魔帝族を見守ってきた。その人たちが理不尽に殺されて、許せるはずがない』


 トカゲは光の玉となり、アイトの足に吸い込まれる


 『さぁ、あまり長くここに居ないほうがいい。キミのような優しさに溢れた人間に、ボクたち《黄昏精霊トワイライト・ニンフ》は力を貸そう』




 ザワリと、世界が切り替わる




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 「殺しはしないけど、覚悟なさ、え⁉」


 アイトは、みわの目の前に居た
 蝶々の力が宿った右腕を振り上げる


 「こ、のっ‼」


 炎がアイトの眼前に来ても、アイトは慌てない
 蝶々が宿った腕が温かく、負ける気がしなかった


 「燃えろ」
 「何っ⁉」


 アイトの右腕は蒼い炎に包まれ、みわの炎を両断した  
 みわの炎が収まると、両腕が肩から切断されていた


 「あ、ぁぁ、あがァァァっ⁉」


 噴水のように血が吹き上がり、みわは白目を向く
 血の噴水を浴び真っ赤に染まった裕子は、呆然としていた


 アイトは裕子を覧る


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 【土間どま裕子ゆうこ】 ♀ 16歳


 ◎【異能アビリティ
 1・《堅牢城壁》
  ○堅固な壁を作り出す(レベルMAX)
  ○指定した味方を守る
  ○物理無効


 2・《攻城砲》
  ○砲台を作る(レベル3・3門)


 3・《フルアーマー》
  ○全身を強固な鎧で覆う


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 防御専門、つまり攻撃は砲台のみ
 アイトは裕子を睨み、最後の攻撃に移る


 「は⁉ ふ、ふるあー」


 アイトは右足を地面に叩き付けると、地震が起きた


 「わ、わわぁっ⁉」


 体制が崩れた瞬間、トカゲのように地面を駆ける
 蝶々の力は消えたが、アイトには関係ない


 「や、ややや、やめ」
 「終わりだ」


 アイトは魔闘気を右拳に集め、裕子の顔面に叩き付ける


 「【破爆はばく】‼」


 目、口、鼻、耳から魔闘気が侵入し、小規模の爆発を起こす
 顔の皮膚と鼻が弾け飛び、両目が破裂した




 アイトは構えを解き、静かに一礼した




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 アイトは、未だにピクピク動く裕子にトドメを刺そうと歩き出す
 もはや【救世主】はアイトの同胞ではなく、単なる敵と認識していた


 両腕を切断されたみわ
 顔面が爆発した裕子
 内臓に損傷を負って倒れてる広大


 全員にトドメを刺そうとした時だった






 「ひゃ〜、派手にやったねぇ〜」






 どこか明るい、場違いな声
 アイトは構え、声の主を探すと、ガロンの家の屋根に乗っていた


 「はろ〜、強いねキミ」
 「······誰だお前」


 屋根の先端に胡座をかいて座っていたのは、同年代の少女
 白いシャツに黒いスカート、癖っ毛のロングヘアに白いマント
 顔は美少女だが、子供っぽい笑顔な眩しく見える


 少女はスカートも気にせず屋根から飛び降りると、瀕死状態の3人を指差した


 「いや〜実はさ、そいつらを回収しに来たんだわ。初戦闘だって言うし、念のためあたしがバックにいたんだけど、見てると圧倒してたし大丈夫かな〜って思って、昼寝してたんだ。そうしたらピンチだし、助けなきゃな〜、って思って」


 少女は頭をポリポリ掻きながら言う
 アイトとしてはどうでもいいが、このまま渡すのはカンに触る


 「······死体でいいか?」
 「いやいや、そりゃ不味いって。ふつーに貰うから、ってかもらったし」
 「何だと······っ⁉」


 3人の身体は消えていた
 近くの裕子を見た瞬間に、少女も消えていた
 すると、声だけが聞こえる


 「あ、自己紹介しとく。あたしは【無限光の11人アインソフオウル・イレブン勝利ネツァク】のハニエル。縁があったらまた会おうね」




 声が途切れると、そこには誰も居なかった



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