神様のヒトミ

さとう

22・情報屋



 露店巡りという名の昼食を終え、アイヒ達はブル王国の傭兵ギルドへやって来た


 「あの、ルシェラさん、情報屋はどこに?」
 「簡単よ、ここはどこ?」
 「ここって……傭兵ギルド?」
 「そう、じゃあここにいるのは?」
 「よ、傭兵……ですよね?」
 「当たり、じゃあ情報屋は?」
 「………」


 アイヒは答えに詰まってしまう
 正直、意味が分からなかった


 「正解は……傭兵っぽくないヤツが情報屋よ!!」
 「………は?」
 「ほら、周りを見て」


 アイヒは訳も分からず周囲を見回す
 そこに居たのは筋骨隆々の戦士達
 厳つい表情をした男に、使い込まれた鎧や剣を装備する戦士。数人のグループが集まり共通の装備を付けた男女、意外なことに小学生くらいの子供までいた


 「で、正解は?」
 「………た、たぶん……あの辺りかしら?」


 ミレイのジト目のツッコミに、ルシェラは焦る
 適当な方向を指さしたが、そこに居たのはムキムキの戦士だった


 「……」
 「……」
 「な、なによその目、あぁもう、悪かったわね、知らないわよ!! この町に来たのだって久し振りなのに、情報屋の顔なんて分かるワケないでしょ!!」


 なぜかルシェラは逆ギレし、黙っていたアシュロンに詰め寄る


 「アシュロン!! なんとかしなさいよ、このままじゃ依頼主が依頼放棄しちゃうわよ!!」
 「………ハァ」


 アシュロンは周囲を見回し、小さな円卓でエールを飲んでいる中年男性に近づく


 「なんだい兄ちゃん、依頼かい。悪いけど仕事が終わったばかりでね、こうやって仕事終わりのエールを飲むのに忙しいのさ」


 アシュロンはイスを引き寄せ座ると、10万コインを1つ置く


 「仕事とは傭兵か? それとも……別の仕事か?」
 「……何の話だ? オレは傭兵だ。護衛や警備以外の仕事なんてないぜ?」
 「そうか、悪かったな」


 アシュロンは、10万コインを5枚置く


 「邪魔したな、よかったら奢らせてくれ、迷惑料だ」
 「………ああ、悪いな。ご馳走になるぜ」


 中年男性はコインを全て掴むと、アシュロンに言った


 「よかったら場所を変えようや、いい店を知ってるんだ」
 「わかった。ツレも居るんだが構わないか?」
 「……仕方ねぇな」


 中年男性は立ち上がると、店を後にする
 アシュロンはポカンとしてるアイヒたちに言った


 「行くぞ」


 3人の前を通り過ぎようとしてるアシュロンを、ルシェラが慌てて引き留めた


 「ちょ、アシュロン!? 今のってじょうほ、むぐ!?」
 「声が大きい、静かにしろ」


 ルシェラの口を押さえつけ、アシュロンは黙らせる
 ミレイが首をかしげ、不思議そうに聞いた


 「なんでわかったの?」
 「た、確かに。アシュロンさん、分かってたんですか?」
 「いや、周囲を見て最も可能性があったのがアイツだった」
 「な、なんでよ!? どう見てもフツーのおっさんだったじゃない!!」


 アシュロンは歩き出したので、3人はそれに着いていく
 ギルドを出ると、10メートルほど先に中年男性がいた


 「よく見ろ、アイツは仕事終わりと言った、しかも仕事は護衛と警備……それにしては靴が綺麗だし、装備や衣服も汚れていない。ギルド内にいた傭兵の中で、1番まともな身なりで怪しい言動のヤツ……つまり、アイツだ。金を見せて探りを入れたらビンゴした、と言うワケだ」




 アイヒとミレイは感心し、ルシェラはなぜか悔しそうだった




 ***********




 着いたのは、小さな酒場だった


 裏路地を進み、誰も来ないような死角に立てられた、どう見ても営利目的ではなさそうな酒場だ
 中年男性は、ドアを開けて中へ入る
 アシュロンたちも続き、酒場の中へ入った


 「……いらっしゃい」


 中は円卓が2つにバーカウンターがあるだけ
 中年男性は、バーのマスターに声を掛ける


 「奥を借りるぜ」
 「……はいよ」


 中年男性はカウンターにコインをいくつか置くと、そのまま奥のドアを開けて中へ入る
 アシュロンたちも続き部屋に入ると、中にはテーブルが1つしかなかった


 中年男性はテーブルに向かい手を付くと、アシュロンに向けて言う


 「さーて、商売の話をしようか。どんな情報がお望みだい?」


 中年男性が明るい雰囲気で言う


 「おっと、名前は名乗らないぜ。いくつもあるし、名乗っても意味が無いからな」
 「ああ、それでいい。お前たち諜報ギルドはそういうモノなんだろう?」
 「そうさ、善人でも悪党でも、金次第でどんな情報も仕入れる。それがオレたち諜報ギルドのエージェントさ!! オレを見つけるとは流石だな兄さん、いい目をしてるじゃねぇの」
 「ふ、さぁ仕事の話だ」


 アシュロンはアイヒを促す
 アイヒは驚いたが、ここでようやく意味が分かった


 「あ、あの……探して欲しい人が居るんです」
 「ほう、探し人。わかった、特徴は?」
 「えっと、アタシやこの子と同じ黒髪黒目で……」


 アイヒは特徴を伝えつつ、似顔絵も描いてアイトのことを伝える
 中年男性はフンフン頷き、説明が終わるとニヤリと笑った


 「わかったぜ、情報を集めておこう。料金はオレたちが掛けた手間に比例して上がる。まぁその時にならないと分からんから大金を用意しとくんだな。まぁすぐに見つかると思うぜ、お嬢ちゃんたち・・・・・・・みたいな救世主・・・・・・・なら、尚更な」


 アイヒは絶句し、アシュロンとルシェラの雰囲気が変わる


 「おいおい、情報通のオレらにゃ素性を隠してもしょうがないぜ。デューク王国が【救世主】を呼び出した事なんざ、とっくの昔に知れ渡ってるしよ」


 そして、ミレイが言う


 「じゃあ……私たちを探してる人達に依頼されれば、私たちの居場所を言うの……?」


 ザワリと、空気が変わる
 アシュロンもルシェラも中年男性も、ミレイの雰囲気に押されかけた


 「お、落ち着けよ。守秘義務があるから詳しく言えないが……まだ、ブル王国の諜報ギルドに、お嬢ちゃん達の捜索依頼は入っていない」
 「まだブル王国の、ってことは……他の国、例えばデューク王国には入ってるってことね」
 「ルシェラさん……」


 ルシェラの問いに、中年男性は曖昧に首を振る


 「たぶん、私たちを連れ戻すためだと思う」
 「だね、マズいな……このままじゃ、アイトどころじゃなくなるかも」
 「……う~ん、まぁ策がない事もない」


 中年男性は、ニヤリと笑う


 「実はさ、もうすぐ3人目が生まれるんだ」
 「……は?」
 「子供だよ子供!! オレの天使!!」
 「……で?」
 「いやぁ、諜報ギルドなんて言っても薄給でよ、かみさんには町の傭兵っていう職業で通ってるんだが、正直なところ、そこまで儲かってないんだ」
 「……」
 「家族は5人になるし、家も狭くなってきたし……」


 つまり、そういうことである


 「賄賂、ね」


 ルシェラが言うと、中年男性はニヤリと笑う
 この笑みはいやらしいが、どこか憎めない笑みだった


 「まぁ、ちょっとお小遣いをくれれば、依頼が入ったときに偽情報を流してやってもいい。こう見えてもけっこう偉い立場なんでね、オレが流せば信用するはずだ」


 アイヒはアシュロンを見て確認すると、アシュロンは小さく頷いた


 「わかった、じゃあこれ」
 「おうサンキュ、うぅぅっっ!? い、500万コイン!?」
 「その代わり、アイトの情報を必ず仕入れること、アタシ達の素性を誤魔化すこと、アタシ達の捜索依頼が来たらちゃんと知らせること。いい?」
 「おうおう、任せとけっての!!」
 「ちゃんと出来たら、正規の報酬に加えて更に報酬を上乗せしてあげる」
 「おっほーッ!! いいねいいね、任せとけ!! やったぜ夢のマイホームっ‼」


 アイヒは100万コインを5枚渡す
 中年男性はホクホク顔で受け取った


 「ただし………」
 「へ?」


 中年男性の周りに、地水火風光闇雷で出来た「蝶」が舞う
 アイヒが作り出した、7属性の魔術蝶だった


 「もしアタシ達のことがバレたら………ね?」




 アイヒの微笑みに、中年男性は青くなった




 ***********




 結果が出るのは1週間後となった


 「なかなかいい脅しだ、流石だな」
 「確かに、ウチも驚いたわ」
 「アイヒ、すごく怖かった」
 「あ、あはは……」


 バーから出たアイヒ達は、裏路地を抜けて町の中心へ戻ってきた
 あとはしばらく時間を潰し、結果を待つのみとなる


 「諜報ギルドはあんな連中だが、腕は確かだ。賄賂で動くヤツもいれば、仕事に誇りを持っているヤツもいる。今回は前者でよかったな」
 「はい、でもアシュロンさんのおかげで会えました。ありがとうございます」
 「ありがとう、アシュロン」
 「気にするな、依頼主の願いを聞くのも仕事のうちだ」
 「むぐぐ……今回ウチは役に立ってない……」


 するとルシェラが言う


 「じゃあさ、1週間もあるし、町を楽しみましょ!! 美味しいお店や可愛い服を買ったり、アイヒやミレイの装備も買ったりしましょ!!」
 「お、いいですね、賛成です!!」
 「うん、息抜きも大事」
 「……はぁ」




 こうしてアイヒ達は、町を散策しながら待つことになった
 

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