神様のヒトミ

さとう

20・ブル王国



 デューク王国から出発して2週間、アイヒたちは無事にブル王国へ到着した
 道中、魔獣などに出会うこともなく、ある意味観光気分での旅であった
 少し寄り道をすればもっと色々な物が見れたらしいが、アイヒとミレイの目的はあくまでもアイトのことである


 「おぉ〜、おっきな町ねぇ〜」
 「ブル王国は、デューク王国の非加盟国の中で3番目に大きな町よ。ヒューム地域の名産や物資なんかは、殆どがこの町を通過してると言われてるわね」
 「さすがルシェラ、物知り」
 「まぁね、こう見えても地理は得意なのよ」


 ブル王国への入国前、魔導車の中ではルシェラの講義が行われていた


 「いい? アンタたちは世間知らずだから言っておくけど、ブル王国は非加盟国だから、治安が悪い地域があるわ」
 「何で?」
 「何でって、あのね、加盟国にはデューク王国の兵が派遣されて治安維持を努めてるけど、非加盟国のここにはそれがないの」
 「で、でも、王国って言うくらいなら王様が居るんじゃ?」
 「それは昔の話、ブル王国は遥か昔に一度滅んで、名前だけが残ったの。その証拠にこの町にはお城はないわ」
 「じゃあ、町の自警団とかは······」
 「一応、商人ギルドのギルド長が最高責任者だけど······どういう警備体制を取っているかは分からないわね。専属で傭兵団でも雇ってるんじゃない?」


 ルシェラの話は城で習った知識とは別に、アイヒとミレイのためになった
 魔導車に乗ったまま検問を通ると、ブル王国の町並みが見えてきた


 「おぉ〜、人がいっぱい」
 「あの、ルシェラさん」
 「わかってる、人探しね。アシュロン」
 「ああ、情報屋だな。だがその前に、宿を確保する」


 アシュロンの運転で交通量の多い道路を進む
 すると、まるで学校のグラウンドのような駐車場へ到着した


 「ここはお金の掛からない自由駐車場よ、町中の駐車場は有料だからね、ここを使うわ。どの町にもあるから覚えておきなさい」
 「はい、ルシェラさん」
 「ありがとルシェラ」


 魔導車を降りて鍵を厳重に掛け、さっそく歩き出す
 まるで日本の首都のような賑わいに、アイヒとミレイは顔を輝かせる


 「わぁ、すっごい。お店がたくさん」


 大きな通りには、たくさんの露店が並んでいた
 飲食店はもちろん、服やアクセサリー、武器や防具なども売っている
 アイヒやミレイが見たこともないような道具も売っていた


 「ホラホラ、まずは宿の確保、それから情報屋のところへ行くわよ」
 「は、はい、すみませんルシェラさん」
 「いいわ、それと、アタシたちの契約更新についても話したいからね」


 ルシェラとアシュロンは、このブル王国までの護衛
 つまり、契約更新をするためには、また手数料を支払わなければならない


 「もちろんお願いします。ね、ミレイ」
 「うん」
 「ふふ、じゃあ宿屋で再契約しましょっか、いいよねアシュロン」
 「ああ」


 わかっていたとばかりにルシェラが笑う
 そして歩くこと20分、露店の誘惑に逆らいながらも大きな宿屋へ到着した
 まるで高層ビルのような、標高の高い宿屋だった


 ロビーに入り受付に並ぶ
 部屋は2つ取るように指示を受けた


 「アタシとミレイ、アシュロンさんとルシェラさんか······」


 アイヒは、女3人と男1人の計算だったが、ルシェラにあっさり拒否された
 傭兵は基本、男とか女だからとかは気にしないらしい


 列に並んで順番を待っていると、ミレイが小声で聞いてきた


 「ねぇアイヒ、お金は平気なの?」
 「まーね、城の金庫から100万コインを500枚ほど失敬してきたから······えっと」
 「5億コイン」
 「ね、平気でしょ」
 「うん、アイヒってスゴい」


 アイヒは城を抜け出すときに、100万円コインが100枚入った袋を5つほど失敬していた


 受付を済ませ、三階の部屋へ
 当然ながら隣り合わせの部屋だ
 アイヒたちの部屋に集まり、今後の方針を話す


 「まずはここまでの護衛はお終い、次は再契約ね」
 「はい。じゃあ報酬の50万コインです」


 アイヒはルシェラにコインを渡す


 「確かに、じゃあ次は再契約ね。条件は?」
 「条件は······アタシたちの探し人の捜索と、その間のアタシたちの護衛です」
 「わかった。じゃあ前金で200万、成功報酬で100万を貰うわ。期間が未定だから高くなるけど、それでいいかしら?」
 「はい、構いません」


 アイヒは100万コインを2つ、ルシェラに手渡した


 「契約成立、よろしくね」
 「はい、よろしくお願いします、ルシェラさん、アシュロンさん」
 「よろしくね、アシュロン、ルシェラ」
 「ミレイ、アンタまた呼び捨てで······」
 「あはは、構わないわよ。むしろそっちの方がアタシ好みかも、ねぇアシュロン」
 「······」


 アシュロンは変わらず無表情
 だが、文句などは出てこない


 「さーて、今後の方針を説明するわ。意見はじゃんじゃん出してね」




 こうして、本格的なアイト探しが始まった



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