神様のヒトミ

さとう

19・道中



 アイヒの頼みでデューク王国からすぐに出発する


 ルシェラは1泊して明日出発したかったのだが、城を脱走してる身となれば何が起きるか分からないので、出来るだけ早く町から出たかったのがアイヒの本音だ


 ブル王国までは魔導車でも2週間は掛かる
 買った食材をチェックしてもらい、足りない食材を山ほど買い込んで《立入禁止キープアウト》へ収納した


 「この【魔術奥義テンプレート・アーツ】ってスッゴく便利ね。食材が傷まないまま保存できるなんて」
 「はい、スッゴく助かってます。よかったら教えましょうか?」
 「……あのね、アンタも魔術師なら、自分の【魔術奥義テンプレート・アーツ】は他人に教えちゃダメよ。どんなに親しくても、それが魔術師としてのルールよ、いいわね」
 「は、はい……スミマセン」


 ルシェラがアイヒのほっぺをツンツンする
 すると、ミレイがルシェラのほっぺをツンツンした


 「……なによ?」
 「柔らかい、気持ちいい」
 「………」




 ルシェラは、ミレイのほっぺをツンツンした




 ***********




 運転は専らアシュロンがしている


 出発したのが午後三時頃だったので、2時間もすると日が暮れてきた
 街道沿いの木の下に停車し、アシュロンが運転席から振り向いた


 「今日はここで野営する」


 それだけ言うとアシュロンは車を降り、魔導車のトランクを開けて自分たちの荷物を取り出す
 ルシェラはアイヒ達のテントを引っ張り出すと、アイヒたちに組み立て方を教え始め、アシュロンはその間にもう1つテントを組み上げ、調理器具を取り出していた


 「おい、食材を出してくれ」
 「あ、はい………え!? アシュロンさんが料理を!?」
 「そうだが」
 「………」
 「………な、なによアイヒ、その視線は」
 「い、いえ……」
 「てっきりルシェラが料理するのかと」
 「ちょ、ミレイっ!?」


 ルシェラがミレイのほっぺを高速でツンツンしてる間に、アシュロンは魔術で岩を生み出しかまどを作る
 落ちていた枯れ木を細かく切り、薪を作り火を起こす
 野菜を刻み肉を切り、熱した鍋で軽く炒め、水を入れて暫く煮込み、調味料やミルクを入れて簡単なシチューを作る
 シートを敷き、簡易テーブルを組み立て、食事の準備は完了した


 「す、スゴい……早い」
 「いい匂い……じゅるり」
 「ふっふ~ん、スッゴいでしょ」


 なぜかルシェラが誇らしげだ
 4人はテーブルを囲み、ホカホカの湯気を立てるシチューに手を付ける


 「う、うんまぁ~っ!!」
 「美味しい」
 「ふふん、アシュロンの料理はサイコーなんだから!!」


 アイヒとミレイはシチューをおかわりし、パンに付けても食べる
 鍋はカラッポになり、食事は無事に終わった
 アシュロンは魔術で鍋をキレイにし、食器もキレイに片づけた


 「ルシェラ、交代で見張りだ」
 「わかった。3時間交代ね」
 「ああ、先に休め」


 それだけ言うと、アシュロンはかまどの近くに座る
 ルシェラは、ミレイとアイヒに言った


 「アンタたちは自由にしなさい、まぁ夜更かししなければいいわ」
 「え、ルシェラさんは?」
 「アタシは寝る、3時間交代だからね。依頼主のアンタ達は気にしないでいいわよ」
 「あ、でも……」
 「いいの、アンタ達からは前金貰ってるんだし、仕事だしね。おやすみ~」


 ルシェラはテントに消えた
 アイヒも悩んだが、テントに戻ろうとする
 しかし、ミレイはなぜかアシュロンの側へ向かった


 「………」
 「………」


 特に会話はない
 ミレイはアシュロンを興味深そうに見ているが、アシュロンは目を閉じて相手にしていない
 アイヒはミレイの側に行き、こっそりと言う


 「ほら、寝るよミレイ。アシュロンさんに悪いでしょ?」
 「うん。おやすみアシュロン」
 「よ、呼び捨て!?」


 アイヒが驚愕する中、2人はテントに戻った
 誰もいなくなり、かまどの火だけが揺らめいている




 アシュロンは少し目を開け、揺らめく炎を見つめていた




 ***********




 「ねぇミレイ、何でアシュロンさんに懐いてるの?」


 アイヒは思わず聞いていた
 ミレイの好きな人はアイトだと思っていたので、ミレイの行動が余りにも疑問だったのだ


 「えっと、上手く言えないけど、アシュロンはミレイと同じなの」
 「······同じ?」
 「うん」


 ミレイは、少し悲しそうに言った


 「アシュロン、私と同じ目をしてた」
 「同じ、目·······?」
 「うん。だからかな、気になっちゃったの」


 テントの中で毛布に包まるミレイは、寒いのかアイヒの毛布に潜り込んで来た


 「わ⁉ み、ミレイ」
 「寒い」


 アイヒに抱きつき、毛布2枚を重ねて被る
 突然の行動にアイヒは困惑したが、ミレイに抱きつかれると暖かいので離すに離せない




 2人は、抱き合うように眠りに付いた




 ***********




 かまどの前でアシュロンは、座ったまま目を閉じていた


 「ふぁ······交換よ、アシュロン」
 「······」


 アシュロンは無言で立ち上がり、ルシェラのいたテントに入ろうとする


 「ねぇアシュロン」
 「······なんだ」


 ルシェラとすれ違う直前、呼び止められる
 振り向くことなく、アシュロンは止まる


 「ミレイ······似てたよね」
 「······」
 「依頼を受けたのって、ミレイがアシュリーに似てたから?」
 「······」


 アシュロンは、黙ったままテントへ入った
 ルシェラは、かまど近くに座る


 「アシュロン······アシュリーは、アンタの妹・・・・・は、もう帰ってこないのよ······」




 かまどの薪が、パチッと爆ぜた



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