神様のヒトミ

さとう

18・護衛



 魔導車を運転し、やって来たのは傭兵ギルド


 「ねぇアイヒ、どうやって護衛を雇うの?」
 「えっと、ギルドに依頼を出すか、傭兵と交渉して直接依頼するか……だったはず」
 「へぇ、じゃあいい人がいたら直接話してもいいんだね」
 「そうだけど……」


 取りあえず2人でギルドの中へ
 アイヒは少し躊躇したが、ミレイは迷わず入っていった


 「ちょ、ミレイ!?」
 「ごめんくださーい」


 黒髪の美少女が2人、イヤでも注目される
 アイヒは警戒する。無防備なミレイを守るために


 傭兵というだけあって、中は厳つい中年ばかりだった
 剣や大剣を装備した髭面の中年に、若いけど頼りない新人の傭兵、大胆な露出をした筋骨隆々の女性など、見えるだけでも20人以上入る
 そんな中で、やはりアイヒたちに話しかける輩はいた


 「よぉ嬢ちゃんたち、依頼かい?」
 「へへへ、オレたちが格安で受けてやろうか?」


 下卑た表情をした傭兵が、ミレイに近づいた
 30代くらいで実力があるのだろう、自信に満ちた表情だが、下心も見えていた
 アイヒはミレイに近づき、傭兵達にやんわり言う


 「ありがとう、でも平気です」
 「平気? なら何でギルドに来たんだよ、依頼ならオレたちが受けてやるって」
 「そうそう、遠慮するなよ」


 傭兵たちの視線は顔から始まり、胸を見て足をなぞる
 アイヒは露骨な視線に嫌悪感を感じた


 「へっへっへ、そっちの嬢ちゃんはどうだ? 後悔はさせないぜ?」


 傭兵たちを無表情で見つめていたミレイは、ほぼ無感情で言った


 「いい、強い人じゃないと信用できない」
 「ちょ、ミレイ!?」


 ミレイの一言で、2人組の傭兵は沸騰した


 「ンだとこのガキ!!」
 「オレらが弱いってのか、あぁん!?」
 「うん」


 ミレイは何の迷いなく、ノータイムで答える
 アイヒは頭を抱える


 「あ~その、スミマセン、帰りま~す」


 アイヒはミレイを連れて入口に向かうが、別の傭兵がブロックする
 出口をふさがれ、いつの間にか包囲されていた


 「よぉ嬢ちゃんたち、オレら傭兵はな、舐められたら終わりなんだ」
 「少~しだけ痛い目に遭わせてやるよ」


 アイヒは頭を抱え呟く


 「ああ、なんでこんな事に……」


 がっくりと頷くがもう遅い
 ジリジリと距離を詰められ、絶体絶命だった


 「………」


 すると突然、ギルド内の温度が下がる
 窓は一瞬で結露し、傭兵達が飲んでいたエールが凍り付く
 この異常事態にアイヒは本気で慌てた


 「落ち着いてミレイ!! ね、お願い!!」
 「でも、アイヒや私にヒドいことしようとした」
 「大丈夫だから、ね? 行こう?」


 必死にミレイを宥めるアイヒ
 強烈な魔力を感じた傭兵は、一斉にミレイ達から離れた


 「な、なんだよこの【異能アビリティ】は……こ、氷だと!?」
 「こんなガキが、まさか……」


 先ほどまでの視線は消え、今は恐怖の視線に包まれる


 「あぁもう……」


 アイヒは指揮棒のような杖を取り出し、魔力を込めて振る
 それだけで温度は戻り、凍ったエールも解凍された


 「帰ろ、ミレイ」
 「……うん、ゴメンね」


 ミレイは素直に謝り、アイヒの腕を取る
 しおらしいミレイにアイヒは苦笑し、ギルドを出ようとした時だった




 「あっはっはっはっはっ!! おもしろいじゃん!!」




 突如、そんな笑い声が聞こえてきた




 ***********




 アイヒとミレイは、思わず声の主を見る


 「いいね、カワイイ顔してなかなかやるじゃん、ねぇアシュロン」
 「………」


 アイヒやミレイよりやや年上の少女と、側には1人の男性だ
 少女は金色のセミロングヘアに、分厚い生地で出来たワンピースを着てる
 ワンピースは戦闘用なのか、所々が革で補強されている
 腰には太いベルトが巻かれ、2本のショートソードと投擲用のナイフが込められていた


 男性の方は20代後半くらいだろうか
 黒いズボンと黒いロングコートを纏い、身体には太いベルトが巻き付けられ、背中には太い片刃の大剣を背負っている
 アイヒやミレイを見る目は、何の感情も浮かんでいなかった


 「………」
 「………」
 「ちょ、ミレイ!?」
 「あ、アシュロン!?」


 ミレイは男性に近づき、じっと見つめる
 アシュロンと呼ばれた男性は、ミレイの視線を受け止めた


 「護衛をお願いしたいの、いい?」
 「………わかった」
 「ミレイ、ちょっとぉ!?」
 「アシュロン!? ウチを無視すんなっての!!」




 アイヒと少女が詰め寄るが、すでに依頼は受理された




 ***********




 全員がポカンとするギルドを後にして、一行は近くのカフェに来た


 「えーっと………何から話せばいいのか」
 「取りあえず自己紹介しましょ、なんか疲れた……」


 アイヒと少女がお互いのパートナーを見る
 ミレイはミックスジュースを飲み、男性は腕を組んで目を閉じていた


 「ウチはルシェラ、こっちの剣士はアシュロンね。ウチは18歳のB級傭兵でアシュロンは26歳のA級傭兵よ」
 「あ、アタシはアイヒ、こっちはミレイです。よろしく」
 「ん、それじゃビジネスの話をしましょうか」
 「はい」


 ミレイはジュースに夢中なので、アイヒがルシェラと打ち合わせをする


 「なるほど、人捜しね……それで商人の集まる〔ブル王国〕へ」
 「はい、それで護衛をお願いします」
 「わかった。ブル王国までの護衛と案内、宿や食事の経費はそっち持ち、前金で150万コイン、成功報酬で50万コインの合計200万コインってとこね。それ以降の護衛は要相談で………受ける?」
 「はい、お願いします」
 「はやっ!? いいの、相談とかしないの!?」
 「はい、ミレイが選んだ人ですし、まぁ悪い感じはしないので……」
 「あ-……」


 ルシェラは、別の意味で心配になった


 「あのね、直感だけじゃなくてもうちょっと相手を疑いなさいよ。もしウチが悪人だったらどーすんの? アンタたちみたいなカワイイ2人組なんて、搾り取られて娼館に売られちゃうわよ!?」


 ルシェラは人差し指をアイヒのおでこに突きつける
 しかしアイヒはにっこり笑った


 「ありがとうございます、ルシェラさんが心配してくれて嬉しいです」
 「あのね~……はぁ、まぁいいわ。これで契約成立ね」
 「はい、じゃあ……どうぞ、確認を」


 アイヒは《立入禁止キープアウト》の入口を開き、中から袋を取り出す
 そこから100万コインを2枚取り出し、ルシェラに渡した


 「な、これって200万コインよ、前金は150……」
 「いえ、信頼の証です。なので世間知らずのアタシ達に、いろいろ教えて下さい」
 「………ははっ、わかったわよ、ウチがいろいろ教えてあげる」


 アイヒとルシェラはがっちりと握手する
 ここに、1つのパーティーが生まれた瞬間だった


 「ねぇアイヒ、おやつ頼んでもいい?」


 ジュースを飲み干したミレイが、そんな事を聞いてきた



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