神様のヒトミ

さとう

15・脱走



 ミコトと競うように山を下りると、家の前で薪割りをしてるガロンがいた


 「ご~るッ!! あたしの勝ち~」
 「あぁぁ~……」


 身長の2倍以上ある荷物を抱えたミコトが、そのままガロンに飛びつく
 しかしガロンは微塵も揺らがず、優しくミコトを受け止めた


 「ほぉ、やったのか」
 「はい!! 1撃で仕留めました」
 「うむ、では解体して保存しよう。流石に多いから、近所にお裾分けするか」
 「はい!!」


 アイトは嬉しそうに斧を持ち、ガロンと一緒に解体作業に移る
 山では血抜きをして四肢を切断しただけなので、ガロンと一緒に解体して肉を切り分ける
 そして切り分けた肉を包み、手分けして近所へ配った


 「オピス先生!! いますかー?」
 「はいはい、あら? アイトじゃない、どうしたの?」


 オピスは寝起きなのか、着衣が少し乱れてる
 アイトは赤くなり目を逸らすと、オピスは妖艶に微笑んだ


 「ふふ、そんなウブな反応は何年ぶりかしら、カワイイ♪」
 「う、ぐ……あの!! これ、お裾分けです!!」
 「あら、マッドコングのお肉ね。どうしたのかしら?」
 「えっと、俺が1人で仕留めたんです。以前ガロンさんが仕留めた肉がまだまだあるし、さすがに量が多いから、集落の人達にお裾分けを……」
 「へぇ、なら遠慮なく頂くわね」


 オピスに包みを渡すと、アイトはオババの家に向かう


 「オババ先生、こんにちわー」
 「はいよ、何だアイトじゃないか。どうしたんだね?」
 「はい、俺が仕留めたマッドコングのお裾分けです」
 「へぇぇ、丁度いいね、酒のツマミが欲しかったんだ」
 「え……」


 するとオババは包みを解き、生のまま肉を囓る
 グチャグチャと租借し、口から血が少し垂れた


 「う~ん、やっぱマッドコングは生に限るねぇ、アイトもどうだい?」
 「い、いえ……グリスさんの家に行くんで」


 アイトは逃げるようにグリスの家に


 「グリスさーん、いますかー?」
 「うーい、なんだアイトかよ、どーしたんだい?」
 「あの、お肉の……」
 「ああ、お前が仕留めた肉ね、貰うわ、さんきゅー」
 「どこで聞いてたんですか……」
 「へ、オレを舐めるなよ?」


 グリスに包みを渡すと、チョイチョイと指を動かす
 アイトは不思議に思い近づくと、グリスが小声で言った


 「肉の礼にいい情報を教えてやるよ」
 「え?」
 「お前の同胞、【救世主】についてだ」


 アイトは目を見開きグリスを見る


 「1ヶ月程前に、【救世主】の2人が脱走した。デューク王国の上層部は大慌てでな、名だたる冒険者や傭兵を使って捜索してるらしい。だが、未だに消息は掴めないようだ」
 「………え」
 「その2人は『銀雪姫ブランシュネージュ』と『虹色の魔術師アルコバレーノ』って呼ばれてる、女らしいぜ」


 アイトは思わず大声を上げた


 「な、名前は……名前は何ですか!!」
 「落ち着け、まだ【救世主】に関する情報は伏せられてる。だが、それも時間の問題だろうが……わかってんのはそこまでだ」
 「………」


 2人の女の子
 アイトの脳裏には、ミレイとアイヒがよぎる


 「お前もここへ来て2ヶ月、そろそろ腰を上げるべきだろうぜ」




 グリスの声が、アイトに重くのしかかった




 ***********




 「おかえりー」
 「あ、ああ、ただいま」


 暖炉の前で丸くなってたミコトが飛び上がり、アイトの近くに寄ってきた
 アイトはミコトの頭をなで、ネコ耳をいじる


 「ふにゃぁ……」
 「………」


 蕩けるミコトを見ていると、少しだけ気が晴れる
 台所からは食欲をそそる香りがするので見てみると、大きな鍋にたっぷりのモツが煮込まれていた
 ガロン特製のモツ鍋である


 「さぁ、食事にしよう。アイトが仕留めたマッドコングのモツ鍋だ、お祝いしよう」
 「やったーっ!! モツ鍋モツ鍋♪」
 「はい……」


 あれほど楽しみにしていたのに、アイトは食欲が沸かなかった
 楽しげに無理やり笑い、モツを胃に流し込む
 ミコトは終始ご機嫌だったが、ガロンには気付かれたようだ


 食事が終わり後片付けが終わると、ミコトは部屋へ戻った。どうやらこれからお昼寝らしい
 アイトは何となくガロンの側に居ると、やはり言われた
 グリスはどうやら、ガロンにも伝えていたようだ


 「どうするんだ? お前の同胞を助けるのか?」
 「助けるって……誰かは知らないけど追われてるワケじゃないし、別に犯罪を侵して逃げてるんじゃないと思います。それに何か目的があるのかもしれないし、そもそも………俺みたいな半端物よりよっぽど強いだろうし……」
 「なるほどな、ならこの話は終わりだ。好きにしろ」
 「え……」
 「明後日は【壊神拳】の本格的な指導に入る。これからはオババの指導はなし、魔術と壊神拳の鍛錬のみ行うぞ」
 「え、ど、どうして……」
 「オババはもう教える事がないと言ってたな。この世界で必要な知識は十分に伝えたそうだ」


 ガロンはそれだけを言うと、外へ出て行った
 まるでその姿は、怒っているようだった




 アイトは、再び迷うことになった



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