神様のヒトミ

さとう

14・2ヶ月後



 アイトは、早朝から畑を耕していた


 「よっし終わり!! ガモンさん、メシを食ったら山に行きます!!」
 「わかったから落ち着け、さぁミコトを起こして来てくれ」
 「はい!!」


 同じく畑作業をしていたガモンは、アイトの耕した畑を見た
 そこには、予定の敷地を遙かにオーバーし、完璧に整備された畑があった


 「……ちょっと、広すぎるな」




 ガモンは苦笑し、家に戻った




 ***********




 「起きろミコトっ!! 朝メシだぞっ!!」
 「ふにゃっ!?」


 アイトはミコトのベッドから毛布をめくる
 すると、丸くなって寝ていたミコトのしっぽがピンと立った


 「シャーッ!! いきなりおどろかすな、こんのばかぁーっ」
 「悪い悪い、それより今日は山に行くぞ。お前も行くだろ?」
 「にゃっ!? 行く行く、いっぱいリコの実を取るーっ!!」
 「よーし、じゃあ朝メシだ」
 「にゃーいっ」


 ミコトは長い銀髪を揺らし、落ちていた服を素早く着る
 アイトとミコトは、仲のよい兄妹みたいになっていた


 「おとーさん、ごはんごはん!!」
 「分かってる。少し落ち着け」


 ガロンが朝食の準備をして、3人で食べる


 「アイト、山に行くならリコの実を取ってきてくれ、出来たらアプの実も。絞ればジュースになるし、そのまま食べても美味い、乾燥させれば甘みが増すし、保存食になる」
 「はい、今日こそマッドコングを仕留めて見せます」
 「ああ、期待してる」


 ガロンはアイトを見る
 アイトが来て2ヶ月、体も心もだいぶ成長した
 最初は1日掛かった畑仕事も、たったの2時間で終わるし、1ヶ月前から1人で山にも入るようになった
 【壊神拳かいじんけん】を習得させてからは、レートの低い魔獣を狩るようになり、自分で解体できるようになった
 アイトの拳はボロボロで、無数の傷があった


 「ふむ……」
 「ガロンさん?」
 「いや、何でもない。そろそろかと思ってな」
 「へ?」


 ガロンの言葉の意味が分からないアイトだったが、ミコトにせっつかれて食事を終えると直ぐに山へ
 仲の良さそうな2人を見て、ガロンはにっこり微笑んだ


 「さて、オレも用事が出来たな」




 ガロンは立ち上がり、グリスの元へ向かう




 ***********




 「遅いぞアイトっ!!」
 「ったく、お前が早すぎるんだよ」
 「にゃう」


 アイトは崖を登り、岩場を越えて山の中へ
 アイトの身体はかなり鍛えあげられており、腕力と足腰は同世代でもトップレベルの強靱さを誇っていた
 事実、銀猫人であるミコトには勝てないが、それでもタッチの差で山に到着した


 「アイト」
 「わかってる」


 アイトとミコトは足音を立てずに進む
 ネコの魔帝族であるミコトは、隠密行動が得意である
 なので、意識しなくてもミコトは静かに歩いていた


 「ホントに7歳なのか……?」
 「なに?」
 「いや、別に」


 ミコトはキョトンとし進む
 今更ながらアイトは思った、なぜミコトはあの集落にいたのか


 熊人であるガロンの娘、銀猫人のミコト
 あの集落にはミコト以外に銀猫人はいない。むしろ、アイトが来るまで子供はミコトしか居なかった
 詳しく聞いてはいけないような気がして、アイトは特に聞かなかった


 が、そこまで考えるとアイトは止まる
 ミコトも止まり、しっぽがピンと立つ


 「アイト、よろしくね」
 「ああ、任せろ」


 アイトは指をパキパキ鳴らし拳を握る
 この2ヶ月、ガロンの指導で【壊神拳かいじんけん】を習得した
 しかし、基本の技ばかりで大技は1つしか使えない
 それでも、「力」はアイトの自信になった
 傷だらけの拳、15歳とは思えない体つきはアイトが手にしたこの世界での自信


 その自信を試すのを待っていたかのように、マッドコングが現れた


 「来たか、へへ……もう怖くないぜ」
 『グルルルゥゥゥゥ……!!』


 アイトは右拳を胸の前に、左手の力を抜いて前に差し出す。左足を前に出し、右足をやや後ろへ
 【壊神拳】の基本的な構え。攻守に優れた基本的な構えであり、初めて習った構えでもある


 「名乗るぜ、壊神拳かいじんけん初段二級しょだんにきゅう第一種だいいっしゅ十五号じゅうごごう神世藍斗かみよのあいと


 アイトは名乗る、己の手に入れた「力」を


 ガロンが言っていた
 壊神拳は2000年以上の歴史ある流派で、ガロンの祖父が考案し、ガロンもガロンの父から習ったと
 ガロンの祖父は厳しく優しい人で、全ての弟子の名を覚え、実力に分けて的確な指導をした
 段位は、初段から始まり、中段、上段に区分けされ、そこからさらに1.2.3級に分けられる
 さらに一種から三種まで型があり、種類ごとに技が変わる


 アイトはガロンから、全ての型と種類を1ヶ月で習った
 もちろん基本ばかり、だがアイトはモノにした
 ガロンから認められたのは第一種のみ、つまり、対大型魔獣用の戦闘技術のみ


 アイトは壊神拳の初段二級、そして第一種の15番目の使い手であることになる


 アイトはニヤリと笑い、呼吸を整える
 丹田で「気」を練り、自信の魔力とブレンドする
 魔力の扱いにも慣れ、「魔闘気」を自然と練れるようになっていた


 「さぁ、来いよ……」


 アイトは誘う
 恐怖はなく、あるのは自信だけ


 『グガァァァァッ!!』


 4本腕を振り上げ、マッドコングが迫る
 隻眼というハンデを持つアイトだが、そんなものは関係なかった
 腕を振り上げた瞬間、アイトはマッドコングの懐に潜り込んでいた


 「『掌波しょうは』!!」


 拳を開き、掌底を心臓へ当てる
 衝撃が心臓を中心に波紋のように広がり、マッドコングの全身を駆け巡る
 心臓は動きを止め、マッドコングの魔経絡に深刻なダメージを与える


 「押忍ッ!!」




 アイトが叫ぶと、マッドコングは崩れ落ちた




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 「なぁどうだった、マッドコングを1人でやっつけたぜ!!」
 「まぁまぁ、おとーさんなら一瞬で挽肉にしてる」
 「そ、そりゃそうだけど……」


 アイトはマッドコングを1人で解体し、大きな袋に入れる
 ミコトは近くの川で果物や木の実を収穫していたようで、大きな袋を抱えていた


 「ミコト、持てるか?」
 「うん、あたしはアイトより力持ちだしー」
 「ぐぬぬ……」


 実際その通りであり、ミコトは200キロはありそうな袋を軽々背負う
 アイトは100キロほどであり、自分が持てるか持てないかの量を持って歩き出す。それくらい重くないと、修行にならないからだ


 「さて、帰ろう。お昼前には着くかな」
 「うん、おとーさんがゴハン作ってるし、急いで帰ろっ」
 「ちょ、待てよミコトっ!?」




 駆けだしたミコトを、アイトは急いで追っていく



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