神様のヒトミ

さとう

13・19人のこれから



 アイトが行方不明になり1ヶ月


 ミレイは、ほとんど喋らなくなった
 唯一心を開いているのはアイヒのみで、それ以外は一切相手にしない


 しかし、その間も洋二たちは鍛錬を続けていた
 デューク王国の歴史を学び、地理を学び、文化を学ぶ
 王国の騎士団を相手に鍛錬を重ね、アビリティを成長させていく


 中でも洋二は、勇者と呼ばれる存在になっていた


 ある日、鍛錬を終えた洋二は居残りで訓練をするため、騎士団長にお願いをしていた


 「ジャック団長、稽古をお願いします!!」
 「ヨージ殿、あまり根を詰められては……」
 「いえ、今は少しでも鍛えたいんです。お願いします!!」
 「……分かりました。その代わり、厳しく行きますよ」
 「はい!!」


 洋二は、何かを忘れるように剣術に没頭した
 その成果もあり、19人の中で最強の存在となっていった


 そして、そんな洋二を見守る影が3つ
 騎士団長との鍛錬を終え、今度こそ部屋に戻ろうとする時だった


 「ヨージ様、お疲れ様です」
 「ソリテア姫……わざわざお待ちでしたか」
 「私もいますよ、ヨージ様」
 「あん、ズルいですわお姉様方」
 「ミゼル姫、それにメルド姫。ははは、お姫様が勢揃いですね」


 このデューク王国の3姉妹姫
 長女のソリテア、次女のミゼル、三女のメルドが洋二を迎えた


 「ふふ、婚約者を待つのは、妻として当然です」
 「そうですね、姉上」
 「恥ずかしいですわ、ヨージ様」
 「あ、あはは……」


 そう、三姉妹は洋二の婚約者となった
 15歳にして3人の嫁、しかも全員がお姫様
 この世界に来て3周間ほどで、洋二は王様の目に止まり、次期王の地位を約束され、さらに三姉妹の婚約者まで手に入れていた


 この時点で、洋二は元の世界に帰ることを止めた
 この世界で、三姉妹と国の為に生きるのも悪くないと思っていた




 この時点で、洋二はアイトのことを忘れつつあった




 ***********




 「ミレイ、入るよ」
 「………」


 ミレイの部屋に入ってきたのはアイヒ
 勉強や魔術の訓練には出るが、それ以外は一切姿を現さないミレイを心配してやって来たのだった
 アイヒの手には食事がのせられたトレイがある


 「ほら、食べないと……アタシもここで食べるから」
 「………うん」


 か細い、まるで蚊が鳴く声
 アイヒはため息をつき、自分のトレイに手を伸ばす
 今頃、他のメンバーは食堂で仲良く食事を楽しんでいるだろう
 ミレイはポツポツ食べ、あっという間に完食し、ベッドの上で枕に顔を埋めた


 この一ヶ月で、だいぶ城暮らしにも慣れた
 兵士達と鍛錬し、アビリティを鍛え、鍛錬が終われば仲良く食事、城を抜け出して酒を飲んだりする仲間も出てきた


 しかし、ミレイは全く馴染まなかった
 《銀嶺の聖女》というアビリティのおかげで、兵士からは『銀雪姫ブランシュネージュ』と呼ばれて崇拝されている
 公には現れないことで、神秘さを出してるなんて言われるほどだ


 なぜここまでアイトに拘るのか、アイヒは気になった
 アイヒとアイトは同じ中学で3年間一緒だった
 ミレイはアイトと出会って1ヶ月、ここまで入れ込む理由が分からない


 「ねぇ……どうしてミレイは、アイトに拘るの?」


 だから、気になった


 「……………ぅ」
 「え? なに?」
 「……………」
 「ねぇ教えてよ、アタシが知ってるアイトのこと教えるからさ。こう見えてアイトとは同じ中学だったし、クラスも3年間一緒、それに家にも上がったことあるんだから」
 「………!!」


 ミレイは枕から顔を上げ、羨ましそうにミレイを見る
 そして、ポツリと呟いた


 「………アイト、お兄ちゃんに似てた。死んじゃったお兄ちゃんに」
 「……え」
 「お兄ちゃん、私が高校に入学する1週間前に交通事故で死んじゃった。私のことホメてくれた、頑張ったなって、頭をなでてくれた。でも……死んじゃった」
 「……」
 「悲しかったけど、高校合格を喜んでくれたお兄ちゃんのために学校に行った。そして……アイトに出会った」


 ミレイは、部屋に掛けてある制服の内ポケットから、一枚の写真を取り出しアイヒに見せる


 「ウッソ……」


 そこに居たのは、間違いなくアイトだった
 合格発表の掲示板の前で撮られた写真には、他校のブレザーを着た、1つか2つ年上の少年
 ミレイの頭をなでる姿は、アイヒが知ってるアイトにそっくりだった


 「嬉しかった……また会えたって、でも、アイトはアイト、また……いなくなっちゃった」
 「ミレイ……」
 「もうやだ……アイトに会いたい、会いたいよ……」




 アイヒはたまらずベッドに飛び込み、ミレイを抱きしめた




 ***********




 ミレイの気持ちを理解して2ヶ月、【生物世界ラーミナス】に来て3ヶ月が経過していた


 ミレイは相変わらずふさぎ込んでいたが、アイヒがとある魔法を掛けると、少しだけだが元気になった
 それは、ミレイにしか効果のない、特別な魔術


 「ねぇミレイ、アタシね……アイトが死んだとは思ってない」
 「………え」
 「だってそうじゃん、アタシ達はアイトが死んだのを見ていない、死体を確認したわけでもないし、ここに来たときに居なかっただけ、他の連中や洋二は死んだって思ってるけど、アタシは生きてるって信じてる」
 「………」
 「だから、アタシは1つ決めたの」
 「………何を?」


 アイヒは、ミレイを見つめて華のように笑う
 そして、ずっと前から決めていた決意を話した




 「アタシね、アイトを探す旅に出る」




 ミレイの目が見開かれる
 アイヒの答えは、ミレイにとって衝撃的な答えだった


 「勉強して、力を付けて。この世界をもう少し知ったら、ここから出て旅に出る。アタシのアビリティを使えば、誰にもバレずにお城を出れるしね」


 アイヒの決意は固かった
 落ち込み、泣くだけのミレイとは全く違う
 そして、ミレイは気付く


 「アイヒも、アイトがスキなの?」
 「………ひみつ」




 アイヒは人差し指を口に当て、イタズラっぽく微笑んだ




 ***********




 アイヒの決意を知ったミレイは変わった


 まるで、1つの目標のために必死になった
 魔術を習得し、地理や文化や歴史を覚え、この世界の常識を身につけた
 アビリティを進化させ、たったの1ヶ月で【第四異能フォースアビリティ】まで成長させた


 突然のやる気を見せた『銀雪姫ブランシュネージュ』に触発され、他のメンバーもやる気を見せて成長した
 開花するアビリティ、磨かれる技と身体
 もはや【救世主】たちは、一般兵士では相手にならないくらい強くなっていた
 その中でも洋二は別格で、兵士や騎士団長は勿論、王様や3姉妹姫や他のメンバーからも【勇者】と呼ばれていた
 アイヒも、幾千の魔術を扱い、神話級の魔術を習得した
 その姿は『虹色の魔術師アルコバレーノ』と呼ばれ、魔術師達からの尊敬を受けた


 他のメンバーも成長し、中でも洋二に付き従う4人が現れる


 魔術師の金田恭司かねだきょうじ
 回復術師の飯島錬子いいじまれんこ
 弓戦士馬場祥子ばばしょうこ
 拳闘士の真上連華まかみれんげ


 彼ら彼女らは敬意を持って【勇者部隊ヒーローズ】と呼ばれ、魔帝族との戦いに不可欠な存在となっていた


 【勇者】と【勇者部隊ヒーローズ
 『銀雪姫ブランシュネージュ』と『虹色の魔術師アルコバレーノ
 そして他の【救世主】たち


 デューク王国は魔帝族との戦いを1年8ヶ月後に仕掛けると宣言した
 もちろん、これは極秘にだ


 洋二たちがこの世界に来てちょうど2年後、魔帝族との戦争が幕を開ける
 これを聞いて、【救世主】たっちは更なる鍛錬を行い決意を見せる


 そして、1ヶ月後
 洋二たちがこの世界に来て4ヶ月








 『銀雪姫ブランシュネージュ』と『虹色の魔術師アルコバレーノ』は、デューク王国から姿を消した



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