神様のヒトミ

さとう

12・19人の今



 アイトがこの世界に来る4ヶ月前、洋二たちはデューク王国へ召喚された


 「っつ……何だよ一体」


 黒い空間からの、一瞬の浮遊感
 何かが身体を包み込んだ、そう思ったら次には違う景色になっていた
 今回は気を失うことなく、全員が立ったままだった


 「ここは……」


 洋二は周囲を見回す


 雰囲気は、なんとなく西洋の協会を思わせた
 白く豪華な空間は、高貴な印象を感じ、足下には円形の絨毯が敷かれている
 絨毯には複雑な幾何学模様が描かれ、何故か無数の焦げ目が付いていた


 そして、洋二たち19人を見つめる、無数の目


 「おぉぉ……」
 「成功だ!! ついにやったぞ!!」
 「ああ、伝説の【救世主】がここに……」


 おとぎ話に出てくるような魔法使い
 豪華な服を纏い、絵から飛び出したようなお姫様
 立派なヒゲを蓄えた、高齢だけど威厳を感じる王様


 そんな人達が、歓喜の声を上げていた


 「な、何よコレ……」
 「俺が知るかよ……」


 アイヒだけではなく、全員が驚いている
 すると、カラフルなドレスを纏ったお姫様が前に出てきた
 しかも、3人も


 「【救世主】様……どうか、この世界をお救い下さいませ……」
 「神により使わされた【救世主】様、その【異能アビリティ】を持って、悪しき魔帝族を討ち滅ぼして下さいませ……」
 「ああ、【救世主】様……」


 洋二たち19人は、少しずつ状況を理解していった
 部活途中のバス事故、そして黒い空間でのアビリティ、そして鱗粉のようなヒトが語った、デューク王国


 「俺たち……どうやら【救世主】らしいな」
 「う、うん……」


 洋二とアイヒはポカンとしてる
 しかし、周囲の部活仲間は少しずつ順応していった


 「へへへ、なんか面白くなってきたな、なぁオイ」 
 「だな、へへへ。まさかオレが【救世主】とはな。死んでみるモンだぜ」


 刈り上げの男子生徒は加藤浩太郎かとうこうたろう
 ツリ目の男子生徒は田辺幸司たなべこうじ


 2人は、跪くお姫様を見ている
 どうやらドレスから覗く胸元に、興味津々のようだった
 そんな2人を軽蔑の眼差しで見る女子が2人


 「ねぇ、どーしよう? あのバカ2人じゃないけど、ちょっと面白いかも」
 「あのね……これって夢じゃない? それともドッキリ?」


 面白がってるショートカットの女子は木城きしろエミリ
 現実と夢の区別が付いてないのは田村エリ
 そのほかにも、様々な反応をしてる生徒たち


 ガヤガヤと騒がしくなると、高齢の男性が前に出てきた
 その威圧感に、思わず全員が黙り込む


 「【救世主】たちよ、私はデューク王国の王、テンプルトン・ラインバッハ・デューク38世である。此度、そなた達を呼び出したのは、この世界に迫る危機から我ら人間族を救って頂きたいのだ」


 洋二は、ヒト型の鱗粉の話を思い出す


 「確か、魔帝族とかいうヤツらが居るんだよな」
 「その通り、話が早くて助かる」
 「うーわ、いかにも悪そうな種族ね……」


 アイヒは苦笑して言う


 「まずは、この世界の現状を、そして【救世主】たちの「力」を伸ばしたい。協力してくれるだろうか」


 ここで、洋二たちは顔を見合わせる
 どのみち、どうしようもない


 「わかった、ただし……全部終わったら、元の世界へ帰してくれ」
 「ああ、約束しよう」


 こうして洋二は王様とガッチリ握手をする
 それに合わせて、周囲にいた兵士やら魔術師やらが歓声を上げる
 洋二もアイヒも悪い気はせず、他の仲間も騒いでいた


 「さぁ、今宵は宴である、【救世主】たちに最高のもてなしを!!」


 王の言葉に全員が歓声を上げた
 そんなときだった
 今まで黙っていたミレイが、涙を流してポツリと言った










 「ねぇ………アイトは?」










 その声は、不思議なほど部屋に響いた



「神様のヒトミ」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く