神様のヒトミ

さとう

10・勉強



 翌日。アイトは再びガロンと畑仕事をする


 「ふんぎぎぎ·········づぁッ‼」


 アイトの手に、硬い岩の感触が残る
 持ち上げて振り下ろす、この動作が余りにも辛かった


 「くそ、重い······」
  
 息を付くアイトに、ガロンはアドバイスする


 「アイト、腕の力だけじゃなく、全身を使え。身体を真っ直ぐにして、しっかり立て。お前の身体の全てを使って持ち上げろ」
 「ぜ、全部······よし‼」


 ただ漠然と立つのではなく、足を開いてバランスを取るように立つ
 腰を落としてドッシリ構え、腕の力と腰と背筋を使ってクワを持ち上げる
 そして全身をフルに使い、クワを振り下ろす


 「おぉらっ‼」


 バギン、と岩が砕ける音が聞こえてきた
 しかし、最初の1回で、体力をフルに使ってしまった


 「よし、今の感覚を忘れるな。あとはその繰り返しだ」
 「は、はい······」


 ガロンは、アイトと似たような動きを繰り返してる
 クワを振り下ろすたびに1歩下がり、クワを振り下ろし1歩下がる
 その繰り返しで、20メートルをあっと言う間に耕した


 「す、すげぇ······」
 「どうした。見てるだけか?」
 「······よぉーし‼」




 この日のアイトは、10メートルほど耕した




 ***********




 アイトの修行ローテーションは、1日ごとに変わる
 畑、勉強、畑、魔術、畑、勉強、畑、魔術と体力作りがメイン


 アイトが集落にやって来て2週間、そこそこ体力も付いてきた
 腹筋は見事に割れ始め、全体的に固くなる
 しかしアイトは、就寝前には必ずストレッチをするので、柔らかくしなやかな筋肉が付くようになった


 そして本日は、オババの元で勉強の日である


 「おはようございますオババ先生、今日もよろしく」
 「よく来たねアイト、座んな」


 アイトはすっかり集落に馴染んでいた
 ガロンやミコト、オババやオピスはもちろん、集落に住む魔帝族から受け入れられていた


 「さて、前のおさらいだ」
 「はい。前は魔帝族の住む地域である西側、〔デズモンド地域〕について勉強しました」
 「あぁ正解だ。じゃあ魔帝族の地域である〔デズモンド地域〕と、人間族の地域である〔ヒューム地域〕の共通点はなんだい?」
 「はい。それは通貨が共通してることです。人間と魔帝族は、遥か昔は友好関係だったので、既に幅広く浸透していた貨幣は、そのまま今も残っている、ですよね」
 「正解だ。ちなみに貨幣の種類は?」
 「えっと、全てコインですよね。魔帝族のとある一族と、人間族のとある一族にしか使えない、《ドロップコイン》というアビリティで作られます」
 「うん、正解だ。ちなみに両一族は、昔からの教えで、何があろうとむやみに通貨を作ることはない。それは人間も魔帝族も変わらんさね」
 「はい」


 ちなみにコインはアイトにも分かりやすかった
 コインはそれぞれ、一、十、百、千、万、十万、百万の単位でそれぞれのコインが存在する
 ちなみに単位はコイン、まんまだった


 アイトは、オババとの勉強で、この世界の常識を習得することが出来た


 「さぁて、今日はここまでだ。次は人間族の文化や風習についてテストをするからね。ちゃーんと復習するように」
 「はいオババ先生、ありがとうございました」


 時刻は夕方、そろそろ晩ごはんの時間
 ちなみにアイトは、お昼になるとガロンの家で食べている


 ガロンの家まで数分だが、集落にはいろんな人がいる


 「よぅアイト、オババと勉強は終わったのかい?」
 「こんばんはエゾさん、今日も勉強漬けでしたよ。覚えることがたくさんあるんで」
 「マジメだねぇ、少しはミコトも見習えばいいんだがな」
 「確かに、でもアイツ、勉強が嫌いみたいで」
 「ははは、あれくらいの歳だと、遊びたい盛りだしなぁ」


 鹿人のエゾと話をする
 それだけで15分は経過していた


 「おっと、そろそろ帰らねぇとな。じゃあなアイト」
 「また明日、エゾさん」


 エゾと別れて歩き出す
 すると、ガロンの家の隣に羊人の女性がいた


 「あらアイトちゃん、こんばんは」
 「こんばんは、ウールさん」
 「ふふ、お勉強を頑張ってるみたいねぇ、偉いわぁ〜」
 「いやいや、そんなことないですよ」
 「毎朝早起きして畑仕事をして、それからお勉強して、人間族の若い子は偉いわねぇ」
 「あはは······」


 アイトは、ウールと10分ほど話し、ようやく家の中に入ることが出来た


 「おかえりアイト、ウールと話してたのか」
 「はい、ちょっと世間話を」
 「おーそーいーぞーアーイートー」
 「悪いミコト、っていうかお前も勉強くらいしろよ?」
 「にゃう、あたしはジョーシキくらい知ってるもん」
 「全く、お前ってヤツは……」


 テーブルの上には、すでに料理が並んでいた
 フワリと香るシチュー、焼きたてのパン、ガロンの畑で採れた野菜
 アイトのお腹は大きな音を立てた


 「アーイトー、オギョーギ悪いー」
 「う、うるさいな。いいだろ別に」
 「ははは、さぁアイト、手を洗ってこい」


 手を洗って席に座る
 3人で食べる食事は温かく、アイトは幸せを感じていた


 しばらく食事を楽しんでいると、ミコトが文句を言い始めた


 「おとーさん、お肉が少ないよー」
 「すまん、肉の備蓄が切れそうでな、節約してるんだ」


 確かに、シチューには肉が少なかった
 しかし、アイトは特に文句を付けない。付けるはずがない


 「ふむ………」
 「ガロンさん?」


 ガロンはしばらく考え込むと、アイトを見て言った


 「アイト、明日は山に入るぞ」
 「へ? 山?」
 「ああ、朝一で行く。早めに寝とけ」


 訝しむアイトに、ガロンは淡々と告げた


 「山で魔獣を狩る。そろそろ肉の備蓄が少ないからな、お前も来い」
 「え、えぇぇぇっ!?」




 こうしてアイトは、人生初の狩りに出かけることになった



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