神様のヒトミ

さとう

9・異能



 「いい? アタシたち魔帝族には、誰にでも【異能アビリティ】が備わってるの。人間族との違いはそこね」
 「え、そうなんですか?」
 「ええ、人間族でアビリティを使えるのは、全体の6割程度ね」
 「へぇ、じゃあ俺たちみたいなのは······」
 「詳しいことは分からないけど、どうやら召喚された【救世主】には、とんでもないアビリティを備えてるのよ。それこそ、たった40人で降伏寸前だった人間族が、互角に持ち直すくらいのね。その辺りはオババが詳しいわね」


 それはつまり、過去の戦争の話だろう
 アイトには想像が付かなかったが、戦争というなら、数千数万の人間が戦いに出るはず
 その状態から降伏まで持っていくということはかなりの人間が死んだに違いない
 そして新たに現れた40人が、戦況をひっくり返す


 「とんでもないっすね······」
 「そうね、でも、アナタもその1人だということを忘れちゃダメよ?」
 「いやでも、俺のアビリティは狂ってるし、もう俺は一般人と変わりませんよ」
 「さぁ、どうかしらね」


 オピスは妖艶に微笑む


 「いい? アビリティは、本人次第で進化するの。アナタの最初のアビリティが使えなくなっても、進化させれば次のアビリティを使えるかもよ?」
 「進化······ですか?」
 「ええ、例えばガロンのアビリティは《農耕の達人》ね。それが進化して《怪力王》のアビリティを手に入れたの。ガロンはそれで満足しちゃったから、【第二異能ダブルアビリティ】だけどね」
 「オピスさんは、確か······6、でしたっけ?」
 「そ、アタシは【第六異能セクスタ・アビリティ】まで進化したわ。きっかけは色々あったけど、まぁ長く生きていればこうなるわ」
 「······えっと、失礼ですが······」
 「ふふ、アタシは358歳よ。ガロンより250年ほど上ね」


 アイトは驚いた
 オピスはどう見ても20代後半くらい、ガロンだって30代後半くらいにしか見えないからだ
 オババも500年以上生きてるそうなので、魔帝族は長寿種族のようだ   


 「とにかく、悲観することはないわ。アナタには可能性があるしね。それに【救世主】ならすぐに進化するかもよ?」
 「う〜ん、でも、こんなポンコツじゃなぁ······」


 アイトは、オピスに照準を合わせて『森羅万象』を発動させる




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 アイトは、「物」ではなく「人」に使うと、項目が多いことに気が付いた




 ***********




 「だから何だよ······」
 「どうしたの?」
 「いえ、別に······」


 オピスは、頭を抱えるアイトを見て苦笑する


 「とにかく、まずは簡単な魔術を習得して、次は中級、上級とレベルを上げていくわ。魔力の制御が上手く出来れば、アビリティも進化するかもしれないわね」


 アイトの教育方針が決まり、オピスはポケットから小さな石を取り出す


 「これ、見ててね」
 「はい? お、ぉぉぉ⁉」


 オピスの手のひらに乗っていた石は、まるで意思を持ったかのようにフワフワ浮いた   


 「まずは魔力を使うことから始めましょ。この浮遊石を浮かせて、今みたいに自由に動かしてみて」


 アイトは石を受け取り、念じてみる


 「ぬ、ぬぬぬ······」
 「ほら、そんなに力を込めないで、込めるのは魔力よ」
 「魔力······魔力······まりょく······」


 しかし、石はピクリとも動かなかった


 「いい、魔力は誰にでも流れてるの。身体中を駆け巡る〔魔経絡まけいらく〕から魔力の流れを感じとって、手のひらから放出するイメージよ」


 魔経絡とは、身体の中にある目には見えない魔力の通り道
 魔力の発生源は、どんな生物も持っている「心」
 魔力の流れは、心の流れ


 「······」


 アイトは集中していた
 ワケも分からず異世界に連れて来られ、得体の知れない森に飛ばされ、しかも気付けば4ヶ月も経っていた


 洋二やアイヒ、ミレイの元へ帰れば戦争
 このままここに居れば、ガロンたちに迷惑がかかる


 だから、いろいろ置いておく
 まずは、この世界で生きて行く「力」を身につける


 「······うん」


 温かく、清らかな力が溢れていく
 頭頂部から、足の指先まで満たされていく


 「······行ける。これが魔力か······ハッ‼」
 「ちょ、ちょっと待った⁉」


 アイトが魔力を込めた瞬間、浮遊石は弾丸のように発射された
 天井を突き破り、上空へ消えていった


 「······」
 「······」


 オピスは、頭を抱えて言った


 「魔力の込め過ぎ、まだまだね」
 「す、すみません······」




 こうして、魔術修行の1日目は幕を閉じた



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