神様のヒトミ

さとう

8・オピス



 翌朝、日が昇り朝日が差し込む頃


 「起きろ」
 「ぶえっ⁉」


 ニコニコしたガロンが、アイトの寝るベッドの上に何かを落とした
 苦しさから起きたアイトは、自分の身体に落下した物体を掴む


 「仕事だ、行くぞ」
 「し、しごと······?」
 「ああ、畑だ」


 アイトは、ここで初めて手に持っているのがクワだと気づく
 ずっしりと重く、クワを握ったことがないアイトでも、普通のクワでないことがわかった


 「普通のクワは軽すぎてな、ソイツはオレの特注品だ。さぁ行くぞ」
 「は、はい······お、おもっ」


 アイトはクワを両手で抱え、しゃがみ込んで肩にかける
 単純な重さでも、40キロはありそうだった
 ガロンはそのクワを、片手で、しかも取っ手の1番後ろを掴んでいる。とんでもない手首の力だった


 外へ出て家の裏へ回る
 そこは普通の裏庭で、少し先には木で出来た柵が見えた
 しかし、柵には向かわずに、その手前で止まる


 「さぁ、ここがオレの畑だ。最近少し敷地を広げようと思ってな、そこでアイト、お前にここを耕してもらう」
 「え」
 「いいか、よく見てろ」


 ガロンはクワを降りかぶり、そのまま振り下ろす
 硬そうな地面にクワが刺さり、そのままクワを引き抜く
 再び振り下ろすと、クワの先端から「ビギンッ‼」と音がした


 「いいか、力いっぱい振り下ろせば、地面に埋まってる岩も砕ける。何度も耕せば岩も粉々になって、いい土になる」


 そんなワケあるか
 アイトはそうツッコミたかったが、言えるワケがない
 試しにクワを両手で構え、頭上に振りかぶる。が


 「う、ぐぎぎぎッ‼」


 頑張っても、クワ自体が持ち上がらない
 上がっても胸の辺りまでで、そこから地面に落下した


 「おわぁッ⁉」


 ガキン、と岩に当たる
 当然だが、砕けるはずがなかった


 「うーん、先は長いな」
 「······頑張ります」


 この日は、5メートルも進まなかった
 キチンと振りかぶり、頭上から振り下ろさないと岩は砕けないし、何よりガロンが認めなかった




 終わる頃には、身体がガタガタになっていた


 
 ***********




 翌日、身体中が痛かった
 怪我などではなく、単純な筋肉痛


 「よし、今日はオピスのところへ行くぞ、話は通してあるから、そこで魔術の基礎を習うといい」
 「はい、でも、ガロンさんには習えないんですか?」
 「いや、オレは【第二異能ダブルアビリティ】までしか使えないからな。オピスは【第六異能セクスタ・アビリティ】まで使える、魔帝族の中では強いほうだ」


 アイトが首をかしげると、ガロンはアイトの頭をポンポンなでる


 「まぁその辺りの知識も習ってこい。知っておいて損はない。というか常識だからな」


 家を出て歩くこと数分
 集落は10軒しかないので、すぐに着いた
 どの家も同じようなログハウスだが、目の前の家はとても小さかった


 「オピス、来たぞ」
 「はぁ〜い、あらガロン、その子ね?」
 「ああ。頼んだぞ」


 オピスと呼ばれた女性は、白い肌に濃い緑の鱗があった
 服装は露出が多く、薄いキャミソールにスカートを履いてる
 身長はアイトより高く、アイトを見下ろせるくらいだった


 「うふふ、カワイイわねぇ、食べちゃいたいわぁ♪」


 すると、オピスの目がギョロリと光る
 ペロリと出した舌は長く、先端が分かれていた


 「全く、お前といいグリスといい、あまりアイトを怖がらせるな」
 「いいじゃない、せっかくのお客サマだし〜♪」
 「やれやれ、とにかく頼むぞ」
 「は〜い」


 ガロンは踵を返し、さっさと立ち去った
 1人取り残されたアイトは、恐る恐るオピスを見る


 「ふふ、アタシはオピス、見ての通りの蛇人よ。仲良くしましょうね、ボウヤ」
 「は、はい。俺はアイトです」
 「アイトくん、ね。さぁ入って、授業を始めましょ」


 オピスに背中を押されて家の中へ
 流されるまま椅子へ座ると、オピスは対面に座った


 「聞いたわよ、アナタ······【救世主】ですってね?」
 「は、はい。その······」
 「気にしないで、ガロンの頼みだし、アナタに魔術を教えてあげるわ」
 「はい、宜しくです」


 オピスは何枚かの羊皮紙と、鳥の羽を使って作ったペンを取り出し、アイトの前に置く
 どうやらメモを取れと言うことらしい




 「じゃ、説明してあげるわね」




 ***********


 魔術とは、誰でも扱うことができる、1つの【異能アビリティ】である


 魔術とはそれぞれの属性に分かれ、それぞれ効果や威力も違う
 属性は大きく分けて7つあり、【火】【水】【地】【風】【光】【闇】【雷】が存在する


 魔術の発動に必要なのは、詠唱と魔力
 個人によって得意な属性があり、【火】が得意な魔術師は【水】が苦手であったりする
 魔力貯蔵量は、個人の才能によって異なる
 魔力が枯渇した状態で魔術を使うと命を削る


 「ここまでが基本ね、まぁ子供でも知ってるレベルのね」
 「は、はい」


 魔術は威力によって等級がある


 初級・中級・上級が平均的な魔術師の等級
 特級・星級・滅級が高レベル魔術師と言われる


 そして、神話級が人間最強の等級であり、歴史の中でも数人の【救世主】しかなれなかった等級である


 「アタシたち魔帝族には、【魔神級】っていう究極の等級があるのよ。まぁ魔王様でも使えないらしいけどね」
 「こ、怖いっすね」
 「あはは。さて、一般的な魔術は、それこそ鍛錬次第で誰でも扱えるわ。それでも精々中級程度だけどね。キチンとした指導を受けて、上級以上の魔術を扱えて、初めて魔術師を名乗ることが許されるの」
 「上級······」
 「ええ、人間族の間では、細かく分類されてるようね。星級魔術師、特級魔術師、滅級魔術師とかね」
 「なるほど、でも俺には関係ないですね」
 「あ〜らそうかしら? アタシの見た感じ、アナタはかなりの潜在魔力を秘めてるわね、鍛錬次第じゃ、星級や滅級に届くかもよ?」
 「ま、マジっすか? ところでオピスさんは?」
 「アタシは滅級ってトコね。まぁ長く生きてる魔帝族は、殆どがそんなレベルよ。アタシは他にも【異能アビリティ】があったから、こうして魔帝族の魔術師を名乗ってるけどね」
 「······アビリティ、か」
 「そう、じゃあ次はアビリティについて教えてあげるわ」




 オピスの授業は、まだまだ続く



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