神様のヒトミ

さとう

7・これから



 ガロンの家に帰ると、暖炉の前でミコトが丸くなっていた
 その姿はまんま猫で、ガロンたちが帰宅すると、ネコ耳がピクリと動き、尻尾がブンブン揺れた


 「おかえりー‼ 遅いぞおとーさ〜ん〜······ん?」
 「ただいまミコト、すぐにメシにするからな」
 「うん、どーしたんだアイト?」
 「······」


 アイトは俯いていた
 まるで生気が抜けているようだった


 「そっとしておけ。ミコト、手伝え」
 「う、うん······」


 ガロンは台所へ立つと、壁に掛けてあるフライパンを取り出す
 ミコトは外へ手頃な野菜を収穫し、近くを流れる川で洗う
 ガロン特製の、植物から作った油をフライパンに敷き、ミコトが収穫した野菜を包丁で刻み、保存して置いた魔獣の肉を取り出す


 アイトは、ぼんやりとその光景を見ていた
 よく見るとキッチンにはコンロがある
 ガロンがコンロに手をかざすと、いきなり炎が燃え上がる


 「······」


 仕組みは気になるが、今はどうでもよかった
 するとアイトの座るイス、つまりテーブルの下から、ひょこっとミコトが現れた


 「どうしたの? オナカ痛いの?」
 「······何でもないよ」


 アイトは少し驚いたが、心配そうにアイトを見つめるミコトを見て、少しだけ安らいだ
 アイトはピコピコ動くネコ耳を触ろうと手を伸ばし、頭をなでつつネコ耳を弄る


 「うにゃ······」
 「おぉ、柔らかいな」


 ふにふにとして、少し硬い
 ミコトは気持ち良さそうに蕩ける


 「何だ、仲良くなったな」
 「おとーさんおとーさん、アイトの触り方すっごくキモチいい〜、にゃふぅ」
 「ははは、さぁメシだ。アイト、メシを食ったら包帯を交換しよう」


 出てきたのは野菜炒めとパンとスープ
 栄養満点で、消化しやすいように野菜は細かく刻んであった
 パンは少し固く、スープに漬けて食べるとふっくらと柔らかい
 スープの塩気とパンがマッチし、アイトはキレイに平らげた


 食後、2階の部屋でガロンが包帯を交換する


 「ふむ、あと1週間は掛かると踏んでいたが、ほとんど治ってるな」
 「ホントだ。そう言えば、身体はだいぶ軽いです」


 アイトは立ち上がり、陸上部で習った柔軟体操をする
 多少は違和感があるが、体力はほぼ全快してあた


 「なるほどな、恐らくだが、潜在魔力が高いのだろう。体内にある魔力が、魔術ではなく肉体回復に特化してるのだろう」
 「ま、まりょく?」
 「ああ、お前たちの世界にはないのか?」


 するとガロンは、手のひらに炎を作り出す


 「オレたち魔帝族は、生まれながらに魔術が使える。まぁオレは人間で言う上級レベルだがな」
 「???」
 「うぅむ、説明が難しいな。潜在魔力が高いなら、アイトも魔術を使えると思うが······」


 魔術
 それは、異世界の力の象徴とも言えるのではないか
 アイトは、少なからず興味を覚えた


 「さて、この様子だともう大丈夫だろう」
 「あ、ありがとうございます」


 ガロンはニッコリ笑い、アイトの座るベッドの側へ椅子を持ってきて座る


 「さて、これからお前は何をする?」
 「······え?」




 アイトは、何も答えられなかった




 ***********




 「怪我も治ったし、お前の同胞たちの様子も分かった、なら、お前はこれからどうする?」
 「······そ、れは······」


 確かに、このままずっとここへいる訳にもいかない
 かと言ってデューク王国へ行けば、洋二たちは喜んでくれるだろう


 しかし、その後は戦争の道具にされる


 こんなに良くしてもらったガロンの仲間たち
 明るく、人間であるアイトを救ってくれた恩人


 そんな人たちと、戦争をしなくてはならない
 ならどうするか?


 このままずっとガロンの世話になるか?
 ガロンはどう思うだろうか
 これから先、人間との戦いがあるかもしれない。そんなときに人間であるアイトを連れていたら、ガロンの立場はどうなるのか
 そもそも、怪我が治ったアイトを置いておく理由がガロンにはない
 ここを出たとしても、アイトにあるのは壊れたアビリティが1つ
 地理も文化も知らないアイトにとっては、ミモバの森とそう変わらない


 ならば、どうするか?


 「······俺は」


 答えは出ない
 わからない、1人では答えを出せない


 するとガロンが立ち上がり、アイトの肩を叩く


 「すまんな、お前を追い詰める気はなかった」
 「······いえ、その、すみません」
 「いやいい、立て」
 「え?」
 「立ってみろ」


 ガロンに言われてアイトは立つ
 包帯を外したままだったので、パンツ一枚の状態だった
 ガロンはアイトの身体を眺め、頷きながら言う


 「ふむ、まだ頼りないが、鍛えれば使えるな」
 「あの······」
 「いいか、これからオレがお前を鍛えてやる。1人でも生きていけるように、この世界の知識も教えてやる。身体を鍛え、頭を鍛えながら、今後の事を考えろ、それまではここはお前の家だ。いいな」
 「······え、えぇ⁉」
 「文句は言わせん、それに、お前の食べるメシくらい、お前が自分で稼ぐんだ」


 確かに、その通りである
 働かざる者食うべからず、今のアイトはただのニートだ


 「明日から体力作りだ。勉強に関してはオババに、魔術に関してはオピスに頼もう。さぁ今日はもう寝ろ、明日から忙しくなるぞ」


 熊のように笑いながら、ガロンは階段を降りていった
 アイトが唖然としてると、ベッドの下からミコトが出てきた


 「おとーさん、楽しそう」
 「は、ははは······」




 アイトは、脱力して微笑んだ



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