神様のヒトミ

さとう

6・グリス



 グリスの家は、オババの家の隣だった


 「入るぞグリス」


 ガロンはドアをノックすると、そのままズカズカ踏み込んだ
 中はカラッポで、着替えや食器がそのまま放置してあった


 「……居ないみたいですね、出直しますか?」
 「いや、いる」


 ガロンは机の上にあった薪の切っ先を掴むと、少し強めに壁に投げつける


 「いってっ!?」
 「ったく、出てこいグリス。お前の《透き通る魅技》はオレに通用しないっての。分かってるだろ」


 すると、薪の当たった壁が盛り上がり、色づいた
 何の変哲も無い壁から、薄汚い灰色のコートに広いつば付き帽子を被った何者かが現れたのだ


 「ちぇっ、なーんでお前さんにはバレるのかね。オレの姿や居場所を見破れるヤツなんて、これまでの人生で3人しかいねぇってのに」
 「そのうちの1人はオレだろう、あと2人は?」
 「へっ、オババと父ちゃんだよ」


 帽子を被った人物ことグリスは、アイトに向かって帽子を取る
 その姿に、アイトは思わず息を吞んだ


 「しししっ、やっぱ人間族はオレの姿に驚いてるぜ。なぁガロン」
 「やめろグリス、アイトも悪気があるワケじゃない」
 「わーってるよ。悪いなアイト、オレは蜥蜴人とかげびとのグリス……まぁしがない情報屋だ、よろしくな」
 「は、はい。その……スミマセン」
 「しっしっし、謝らなくていいっての。素直な少年だねぇ」


 アイトが驚くのもムリは無かった
 何故なら、グリスの顔はあまりにも人間からかけ離れていた


 全身はコートに覆われていて分からないが、唯一見える顔が薄い緑色に染まっている
 鱗のような物があり、大きな目は顔の側面に存在し、左右別々に動かしている
 ペロリと出した舌は長く、まるでカメレオンのような顔だった


 「さて、オレたちとオババの会話を聞いてたならわかるだろ。頼むぞ」
 「やーっぱバレてたか。何にも言われないから気になってたんだよなぁ」


 グリスはイスにどかっと座り足を組む


 「さーて、知ってると思うがオレは情報屋だ。アイトが知りたい情報は持ってるが……高いぜ?」


 すると、ガロンは勝ち誇ったように言う


 「バーカ、オレたちとオババの会話を盗み聞きしてたんだ、この件をお咎めナシにする代わりに情報をよこせ」
 「はぁ!? 何だよそれ………あ!? もしかしてソレが狙いでワザとオレを見逃しやがったな!?」
 「さぁて、知らんなぁ」
 「て、てめぇ……」
 「ふん、お前も情報屋なら分かるだろう? アイトの件に関する情報がとんでもないってコトぐらい」
 「ぐぬぬ……はぁ、わかった、負けたよ」


 グリスは両手を挙げて降参ポーズをする
 アイトを見つめ、囁くように言った


 「おいアイト、ガロンは優しそうに見えるけど、実際は腹黒いからな。まぁ腹は毛で覆われてるからホントに真っ黒だけどよ。はっはっは」
 「グリス、表へ出るか?」
 「じょ、冗談だよ、怒るなっての」
 「ならさっさと話せ、そろそろお昼が近いし、ミコトが腹を空かせる頃だ」
 「へいへい」


 グリスはアイトを見て語り出す




 「結論から言うが【救世主】は現れてるぜ。それも4ヶ月前からな・・・・・・・




 ***********




 アイトは一瞬、グリスが何を言ってるのか理解出来なかった


 「よ、4ヶ月前……?」
 「ああ、デューク王国は隠してるが間違いない。信頼できる情報だ」
 「あ、あり得ない!! 俺がここに来たのは2日前だ!!」
 「はぁ? でもよ、デューク王国じゃあ19人の【救世主】が現れて、極秘で鍛錬をしてるって聞いたぜ? しかも何人かは既に【第四異能フォースアビリティ】まで目覚めたって話だぞ?」


 グリスの言ってることは理解出来なかったが、アイトは認めていなかった
 アイトが森を彷徨い、この集落に辿り着いたのは間違いなく2日前
 すでに19人が4ヶ月も前から居るなんて、あり得るはずが無かった


 「とにかく、オレの情報屋としての誇りに賭けて、この情報は真実だ」
 「そんな……そんな、バカな……」


 アイトは頭を抱えて蹲った


 4ヶ月
 そんなに間が空けば、洋二やアイヒやミレイたちは、アイトが死んだと判断するかもしれない
 ほんの少し希望はあった
 もしかしたら、洋二たちが探してるかもしれない、と


 その可能性は、限りなくゼロとなった


 「さて、オレの見立てだと、【救世主】の誕生は間もなく【生物世界ラーミナス】に広がるぜ。早くても数ヶ月ってところか。それが終わればいよいよ戦争かもな」
 「……境界沿いのここも、危険になるな」
 「ああ、〔ミモバの森〕の近くを通るとは思えないけどよ、用心は必要だ。グリス、ミコトを連れてサリヴァンに逃げた方がいいんじゃねぇか?」
 「確かにな。それに、あの子が大きくなったら、銀猫人の故郷へ連れて行こうと思っていたしな」
 「へぇ、じゃあいよいよ帰すのか……淋しいねぇ」


 アイトは全く聞いていない
 すると、ガロンがアイトの肩を掴んで言った


 「帰るぞ。必要な情報はこんなところだろう」
 「………」


 アイトは立ち上がり、グリスの後に付く


 「今回はタダだけどよ、次からキッチリお代を頂くからな!!」
 「ああ、わかってるよ」


 
 こうして、アイトとガロンはグリスの家を後にした



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